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2025年の中日ドラフト戦略は正しかったのか?④ ~結論~

チーム成績、投手/野手解析と過去3回に渡って実施。その解析結果を基に、今回最終結論を導き出したい。

↓チーム成績解析
2025年の中日ドラフト戦略は正しかったのか?①~チーム成績解析~|十兵衛

↓投手陣解析
2025年の中日ドラフト戦略は正しかったのか?②~投手陣解析~|十兵衛

↓野手陣解析
2025年の中日ドラフト戦略は正しかったのか?③~野手陣解析~|十兵衛

1. ドラフトの成否とは

ドラフトの成否を語るうえで、よく聞かれる声が「ドラフトが成功かどうかは、数年後にならないと分からない」というもの。前評判が高かった選手が想像されたような活躍を出来ないケースは枚挙に暇がなく、その意見は正しい。ただ、個人的にこの意見に対しては、「あくまで評価手法の一つを示したもの」と考えている。

ドラフトは、結果論のイベントだ。成功する確証がない選手を指名し、数年後の活躍を見たうえで、後出しの評価を受ける。その評価手法自体を否定するつもりはないが、もう一つの見方として、「チーム強化の可能性を最大化する指名が出来たかどうか」というアプローチもあるのでは無いだろうか。最終結果は数年後まで分からないとしても、キッチリと最善手を打てたか、という点だ。

そして、ここにも「結果論」は存在する。1位入札後に、「この選手は単独で行けた」「1位で獲らなくても、2位で行けた」という類の評価が下されるケースだ。当然、入札前には各球団が誰を指名するかの情報を知り得る事は出来ないため、あくまで結果論。ただ、これも成否を語るうえでは正しい指標の一つ。それがたとえ、後出しであったとしても。

纏めると、
1) 「分かる範囲内で」他球団の動向を予測し、リスクと見返りを加味して、チーム強化の可能性を最大化する指名が出来たか。
2) 他球団の指名結果を見て、上記の判断は正しかったか (「結果論」評価①)
3) 数年後の選手を見て、その指名が正しかったのかどうか (「結果論」評価②)
回りくどく言っているが、結果論の評価を否定するつもりはなく、それは正しい手法だ。ただ結果が分からない段階で、最大限に見返りのあるチャレンジが出来たかどうか。その点も評価すべき、と思っている。今回の「ドラフト戦略が正しかったか?」は、当然上記の1)および2)に関してという前提で話を進めたい。

尚、断っておくが今回のドラフト成否は、あくまで「戦略」に関してのものだ。選手の能力を評価してるのではなく、どういうジャンルの選手を指名したか、という点をメインに話をしている。誤解のないようにお願いしたい。

2. ドラフト前の状況

まずは、ドラフト前の状況をおさらい。先回までの解析で絞り込んだ補強優先度に対し、今年の候補者で該当する主な選手は下記。

今年の目玉は、補強優先度Sにも該当する立石正広。その他にもホットコーナーのスラッガー枠としては松下歩叶小田康一郎が候補。一方、同じく補強優先度Sの捕手は、今年の上位候補は小島大河のみ。小島自体も捕手としての能力は不安視されていたが、打撃は折り紙付きで、他のポジションでの可能性も。投手は、素材で言うと高校生の石垣元気が群を抜く。大学生は、昨年の金丸夢斗ほど飛び抜けた素材は居ないものの、中西聖輝を筆頭に、齊藤汰直櫻井頼之介毛利海大と言った「好素材」が多数。社会人は、竹丸和幸が即戦力候補として評価が高かった。

以上のような状況下、各球団の指名予想は以下。

様々な情報が飛び交っていたため異論はあろうが、概ね上記のような予想であったと思う。これに対し中日は、ドラフト1週間前の時点で明言はしないものの、「立石・中西・石垣」の3名まで候補を絞り込み。その後、前日になって「投手指名」を公表し、大本営の中日スポーツは一面で中西を特集。翌日のドラフト当日は、竹丸を一面で大きく扱う。という流れだった。今まで書いてきたように、「投手入札反対派」だった自分は、ドラフト前日の時点で夢を砕かれ、ガックリと肩を落としたことは記憶に新しい。

3. 1位入札:中西聖輝(青山学院大)

今までの章も含めて長々と前提を語ったが、ようやくドラフト戦略の検証に入る。まず、中日の1位指名は中西聖輝。事前情報では重複も充分に予想された大学№1投手ではあるが、幸運にも単独で指名することが出来た。

「野手ではなく投手」という方針については、井上監督が秋季キャンプ前に今年のドラフト結果を踏まえ、「選手の奮起をもう1回信じようというのが、俺からのメッセージ」と発言。現有戦力で言えば、投手よりも野手の方に期待を持っていた事の裏付けとなっている。少し横道に逸れてしまうが、個人的にはこのコメントは、「いかにも2年目の監督らしい思考」と穿った見方をしてしまう。「野球は投手から」という格言めいた言葉もあるように、結果が欲しい監督は、まず投手を固めたいと考えるのが必然。自身の契約範囲外となる長期的な視点など、持つ必要もない。だからこそ、球団が編成をリードすべきという話になるのだが、ともかく今年の中日は、最終決定権は監督。この結論になるのは致し方ない部分もある。

井上監督のメッセージは当然野手陣、もっと言うと石川昂弥に向けられたものだろう。逆に言うと、投手陣、具体的には松木平優太仲地礼亜草加翔三浦瑞樹などの今季伸び悩んだ若手メンバーに対し、「君達よりも、石川昂の方が成功する可能性が高い」と述べた事と同義だ。本当にそうか?少なくとも候補の絶対数で言えば投手陣の方が多く、年齢と二軍での成績を見ると、不安なのはむしろ野手の方ではないのか?このあたりが、個人的には納得がいかない。

例えば阪神は、今や常勝軍団の原動力となっている近本光司・森下翔太・佐藤輝明・大山悠輔は、いずれも1位指名で確保した。近本と森下は初回入札ではないので幸運もあるが、近本は藤原→辰己の外れ外れ1位、森下は浅野の外れ1位と、「狙ったポジションを逃さない」というスタンスは戦略が明確だ。一方で投手陣は、ローテの中心となっている村上頌樹が5位、才木浩人が3位。ドラ1ローテの中日とは異なり、中下位指名からしっかりとモノにしている。
投手陣解析の項でも述べたように、投手陣の整備には終わりがない。いつまでも投手に拘るのではなく、まずは野手のレギュラーを固めるという思考の転換も、必要なのではないだろうか。

横道が長くなってしまった。ドラフト戦略の検証に戻る。
まず仮に中西ではなく野手入札を選択した場合、おそらく中日の指名は立石であっただろう。そこに立石と同様に補強優先度Sの候補である小島も加えた3名で、それぞれ「指名した場合」「指名しなかった場合」のケーススタディを行ってみる。

ポイントは2つある。1つは、補強優先度と獲得確率。「他球団の指名が分からない前提」でワーストケースとして考えると、補強優先度Aの中西と優先度Sの小島の獲得確率は33.3%(最大3球団競合)、立石は14.3%(最大7球団競合)。立石は他の2名に対し、半分以下の獲得確率しかないという事になる。
次に2つ目、外れ1位や2位候補の可能性。立石や小島に行ったとしても、投手は外れ1位で齊藤や櫻井頼といった、中西と遜色ない評価の選手を指名できる可能性を残す。野手は「ホットコーナーのスラッガー枠」として、事前の評価では立石と少し差はあったが、外れ1位で小田・2位で谷端将伍という選択肢があった。
以上のポイントを勘案すると、やはり初回入札は、「補強優先度が高い・獲得確率も高い・他に候補が居ない」と理屈が揃っている小島大河がベストチョイスであったと判断したい。中西入札は、同等評価の選手を獲得出来る可能性がありながら、補強優先度Sの解決を後回しにしており、「チーム強化の可能性を最大化する指名」が出来ていたとは言えない

次に、「では結果論として、上記の判断は正しかったのか?」という点。実際の第1巡入札が終わった段階の、各チームの状況は以下。

事前の想定に対し、ソフトバンクとDeNAはまさかの佐々木麟太郎で重複。楽天は藤原1本釣り。他は概ね想定通りではあるが、

結果論で言えば、各パターンの結果は上記のようになっていた。入札前の想定との大きな違いは、「中西は外れ1位でも行けた」「2位には櫻井頼が残っていた」というところ。この2つは、小島入札の妥当性を更に後押しするものだ。抽選で外れても中西や齊藤にチャレンジ出来るし、可能性として1位:小島、2位:櫻井頼も出来たという事なのだから。

非常に長くなったが、1位入札に関する考察は以上。「入札前の判断としても結果論としても、今年のドラフト戦略は正しくなかった」というのが、初回入札指名の結論だ。

4. 2位:櫻井頼之介(東北福祉大)

2位指名の前、中日は長考に入っていた。1位指名に佐々木麟太郎や大川慈英など予想外の選手が入り、投手の有力どころが多く2位に残ったのは、今年の特徴の一つ。更に、13番目のヤクルトは投手ではなく、野手を指名。これにより、櫻井頼が中日まで残る形となった。

仮に残ったのが櫻井頼でなければ、中日は誰を指名したのか。投手ではなく、野手を指名したのだろうか。「野手優先」を声高に主張してきた自分の立場からすると、「1位2位をともに投手」は怒り心頭となるべき指名ではある。補強優先度Sに該当する谷端将伍が残っており、ここは谷端に行くべきであった。…が、正直 櫻井頼が残っていたのであれば、致し方ない。櫻井頼之介は、1位で消えると思われていた逸材だ。指名前の長考も、中日サイドが同様の思考で逡巡していたものと信じたい。

とは言っても、今回と同様に2位で思いがけず残っていた選手に飛び付いて失敗したケースも多々あるのは事実。前述した阪神の戦略のように、補強ポイントに一途な指名をするべきという考えもある。したがって、1位入札に引き続き、ここもドラフト戦略は正しくなかったという評価。ただ、個人的な心情としては、完全に同意。この辺りは、非常に難しいところだ。

5. 3位:篠崎国忠(徳島インディゴソックス)

篠崎がどうこうではなく、あくまでも戦略として、ここが最も納得できない。「1~2位を投手」はまだしも、「1~3位を投手」はさすがにどうなのか。櫻井ユウヤ・高橋隆慶・山形球道といったスラッガー候補は残っていた。素材型の投手が欲しかったのであれば、結果論で言えば4位で早瀬朔も残っていた。仮に入札を小島で行っていたら、小島→櫻井頼→篠崎という形でリーズナブルな指名ではあったが、戦略としても、後出しの結果論で見ても、疑問符が付く指名と言いたい。

6. 4位:能戸輝夢(明秀日立)

ようやく野手を確保。ケガが気になる点はあるが、能戸は打撃も魅力な好素材だ。ホットコーナーのスラッガーを優先して欲しかった思いもあるが、両翼の素材型は補強ポイントにも合致。

7. 5位:新保茉良(東北福祉大)

ここも、個人的には理解できないポイントの一つ。村松開人土田龍空と居る中で、更に守備型ショートをプッシュする理由は?打撃型ならまだしも、守備型の選手を獲得するのは大いに疑問。「同型選手の、現役ドラフトでの放出を睨んでいるのでは?」と、余計な勘繰りをしてしまう。仮に上位で野手をもう1枚指名出来ていたら、赤木晴哉という選択肢もあった。もしくは、同じ遊撃手でも高校生の横田蒼和の方が、補強ポイントとしては合致。結論、5位指名も自分の中では正しい戦略と言い難い

8. 6位:花田旭(東洋大)

ここに来てロマン型の大砲候補を獲得したことは、逆に予想外。投手4人+野手2人の指名かと考えていたので、野手3人指名は驚いた。ロマン型に傾倒した指名を、数でバランス調整してきた形だ。ケチを付ける点は無いように思う。

9. 育成:牧野憲伸(オイシックス新潟)・石川大峨(掛川西)・三上愛介(愛媛MP)

牧野憲伸は、左腕も1人は確保したいという心境は分かる。オールドルーキーとなるため、早い段階での支配下に期待。石川大峨は、更に大砲候補をワンプッシュという作戦は好感。三上愛介は、補強ポイントでもある代走候補。欲を言えば、大矢琉晟を狙って欲しかったという思いはあるが、杉山諒を先に取られていた都合上、三上優先は致し方なしか。

10. 総括

以上が、今年の指名選手。補強ポイントとして挙げていたジャンルと照らし合わせると、

そもそもチームの優先順位と自分の解析結果が合致していないので、ある程度結果は予測できていたが、総論としても「今年のドラフト戦略は正しくなかった」と断じたい。即戦力捕手の候補が少なかった事は事実だが、スラッガー(ホットコーナー)を獲得するチャンスはあったはず。中西と櫻井頼を確保している以上、これ以上の望みは贅沢ということは理解しているが、やはり中長期的な視点に立ってドラフト戦略を練って頂きたいと強く思う。

最後に。
繰り返しとなるが、選手個々の能力がどうこうと言うよりは、あくまで「戦略として、そのジャンルの選手を獲る必要があったのか?」という観点で書いているという事は念押ししておきたい。色々と書いてしまったが、中日ドラゴンズに入団する選手である以上、全力を持って応援していくことは間違いない。今年の新入団選手が、低迷ドラゴンズを救う救世主となる事を、願ってやまない。皆さま、これからよろしくお願い致します。

そして、俗に言う「ドラフトの最終判断は数年後」は彼らの成長次第。また、来季に石川昂をはじめとした現有の野手陣が奮起して、「投手偏重のドラフト戦略は正しかった」と言える可能性もある。ファンとしてはそちらの方が希望する形ではあるので、自分の解析した結果を払拭するような活躍を、期待していきたい。

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