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本棚の溜息424号(2025年12月号)

【今月の本棚】

《活字づくりへの挑戦》
「本づくり協会」の機関誌「BOOK ARTS AND CRAFTS」第10号の特集が「活字づくりへの挑戦」。1960年頃まで活版印刷は日本の文字印刷の主流で、往時は金属活字の鋳造所も活気に溢れていた。しかし、近年は鋳造所の閉鎖が相次ぎ、活字を鋳込むための母型を彫る職人は、日本に残っていない、とのこと。なんと!ということは、活字を鋳込むことができない、ということではないか!そのような中で、新たな金属活字を作るプロジェクトが動き出した、ということで同誌10号の特集で取り上げている。取り組んだのは、独モノタイプ社でクリエイティブディレクターを務める書体デザイナーの小林章氏と、書体に魅せられた小宮和貴氏。台湾の日星鑄字行は、デジタルデータから母型を彫る技術を持っており、鋳造は築地活字が受け持つ。出来上がったのはAK Renaissance Pbという金属活字書体。16ポイントに続き、8ポイントも制作した。今回の取り組みで、新たな可能性も見えてきたようだ。工場探訪は関山製本社と黒田製本所が統合して設立されたプロケード。連載の上島松男物語やイベントレポートなども掲載。バックナンバー含め、入手は「ビーナイスの本屋さん」が便利だ。

《はじめてのZINE》
別冊宝島26「メディアの作り方ーすぐに役立つへ編集・印刷ハンドブック」が当時JICC出版局から出ていて、我々世代のバイブル的な本だったが、宝島社からTJムック「はじめてのZINE」が出たことについての思いをK垣さんがSNSに投稿していたが、同書はその流れを汲むものでは全くなく、最近の界隈で話題のZINE紹介のカタログ誌であった。商業出版として出されているが、表紙に自分のZINEが勝手に使われていた、ということで、SNSで話題になっているとか。書影の利用はなかなか難しい。厳密に考えすぎると、本の紹介自体がシュリンクしてしまうことにもなりかねない。ただ、表紙に載せるのであれば、引用の範疇は超えるのか、とも思う。「唯一無二の本のつくりかた」を謳っているが、コンテンツ部分を除けば、技術的な部分は判型を決める(見開き)、編集する(見開き)、印刷をする(見開き)、製本する(見開き)に触れている程度で、ワタクシ的には技術以前の「常識」の域を出ていない。例えばIndesignについて10ページぐらい特集してほしかった。クォークとの違いとか・・・「便利なネット印刷」で、ラスクル、グラフィック、しまうま出版、ペンタロー、羽車が一覧表にまとめられているが、それぞれについて、見開きでもう少し特色など深堀してほしかった。だが、そもそも本書はカタログ誌であるのだ。たとえ表紙に「つくりかた」とあっても、そこに期待してはいけない。以降は、安澤千尋、Akane、三省堂書店(纐纈望、関口哲史)、栞日(星野文月)、恵文社一乗寺店(原口輪佳)、有隣堂新横浜店(石田貴子)、百年(樽井将太)、DOOKS(相島大地)、TEGAMISHA BOOKSTORE(城田波穂)、バックパックブックス(宮里祐人)、ホホホ座浄土寺店(山下賢二)、シカク(竹重みゆき)blackbird books(吉川祥一郎)、REBEL BOOKS(萩原貴男)が選書したZINE紹介。知り合いの名前も見えるが、取り上げたZINEの紹介の重複が気になった。初めて知ったZINEも多く、勉強になったが、例えば「本屋が閉店する前に」(アトリエ風戸、平城さやか)は、わたしも注目しているが、シリーズで4度登場している。ZINEを扱う「わざわざ系本屋さん」の傾向として、同様のZINEが置かれる傾向がある。そのような状況が分かっているのであれば、取り上げるZINEの調整はあってもよかったのではないかな、と。十七時退勤社の「ビーナイスの本屋さん全出店記録」は三省堂書店が取り上げてくれていた。例えば仲俣暁生さんの破船房は仲俣さん=破船房だが、くどうれいん「わたしを空腹にしないほうがいい」はBOOK NERDが版元で、その辺りをどうカテゴリー分けするかも、線引きは、なかなか難しいところだ。

【第3回奥多摩ブックアドベンチャー】

2025年11月1日に、奥多摩ブックフィールドで「第3回奥多摩ブックアドベンチャー」を開催。本文は、noteをご覧ください。

会場となった「奥多摩ブックフィールド」

【藤本壮介の建築展】

7月から11月9日まで、森美術館で「藤本壮介の建築~原初、未来、森」展。万博の大屋根リングで話題沸騰、「Brutus」や「Pen」でも特集が組まれた。藤本さんとは以前に仕事をご一緒させていただいたので、当初万博に関して、厳しい意見も寄せられていたが、どうも他人とは思えないところがあり、SNSなどを追っていた。展覧会には少し遅れて行ったので、会場写真入りの図録を買うことができた。図録の半分弱の100ページほどが会場の写真。その後、作品と論考へと続くが、ページの縦の長さと一部は紙の種類が変えてあるのは、本としても珍しい造り。会場入って直ぐの「思考の森」での模型、図面、オブジェの物量に度肝を抜かれる。総数は1000を超えるとのこと。2章は「軌跡の森」で年表を辿る。建築物が中心なので、ご一緒した案件は年表には載っていなかった。藤本さんの仕事、受賞歴、言葉に加えて主要な建築界の出来事、政治経済が並べて記されているので、記憶と共に辿ることができきる(それらは全て図録にも再録されている)。3章が「あわいの図書室」で、幅允孝氏とのコラボレーション。選書テーマは「森・自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未来の風景」で、幅氏が40冊の書籍を選んだ。椅子には藤本さんの言葉が配され、本は背もたれ部分に後ろに表紙が見えるように設置されている。入って直ぐのところに安野光雅さんの「もりのえほん」があり、まず目に飛び込んできた。休憩所でもあるが、「読むこと」と「読まないこと」の「間(あわい)」で、気が付いたら置かれた本を読んでいた、という状況をつくり出すことを意図した、とのこと。白い空間に白い椅子が置かれた風景は、氏の児童心理治療施設、HouseNといった建築物をも想起させる。4章の「ゆらめきの森」では模型に動く人などが投影され動きが生まれる。5章の「開かれた円環」では、万博の大屋根リングの五分の一の縮尺モデル。木の組み合わせの実物大モックアップも間近に見ることができる。建築に至る構想から建設中の写真も立体交差的に展示されている。ぬいぐるみが議論を交わしていたり、宮田裕章氏とのコラボがあったり、と盛りだくさん。藤本さんのSNSをフォローしていたが、万博に関しては、一貫して前向きな投稿を続けていた。その一部はPen10月号「いまこそ知りたい、建築家・藤本壮介」で、プロデューサー就任から開幕までの1756日を振り返る中で、一部が取り上げられていた。ご一緒したときに現場を仕切ってもらった桐圭祐さんが、同事務所から独立した方を紹介している「新世代の建築家たち」に取り上げられているのも嬉しかった。
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/
https://shop.mori.art.museum/view/item/000000000678?category_page_id=catalogue

「あわいの図書室」

【本のマルシェ~さんぽみち】

突発的な要件が生じ関西へ。とんぼ返りとなったが、SNSからいくつかブックイベントの話題が。ということで、とんぼ返りがてら、ブックイベント立ち寄り。まずは、乗換の大阪での「本のマルシェ in HERBIS」(会期:10月18・19日)。何度か見ているが、今回は偶然の立ち寄り。古本、新刊からZINE、雑貨など21店が出店、Lマガサイトによると、古本6割、新刊4割とのこと。地下1階、3階などが会場。3階にはテナントでAngersが入っている。東京からの参加は和氣さんの「BOOKSHOP TRAVELLER」で和氣さんがブースに(昨年は病欠でしたネ)。神戸案件ながら伺える時間が取れなかった1003の奥村さんとは、ここでお目に掛かれた!「本おや」坂上さんとは、前回お久しぶりで、一瞬顔を見合わせたが、今回は最初から名前を叫び合った。抽選会や本のブツブツ交換イベントも行われていた。

BOOKSHOP TRAVELLERブース

そこから、次は名古屋で途中下車。これも、移動中に「円頓寺本のさんぽみち」(会期:10月18・19、25・26日)が開催されていることに気づき、予定外の行動に。午後4時までなので、ギリギリだが、行ったことがなかったので、勇気をもって途中下車&ダッシュ。円頓寺本町商店街をうろうろしていて、イベントが行われていない!と焦ったことは内緒にしておこう(隣の商店街を彷徨っていた)。時間をロスしながらも会場に到着、その入り口でいきなりHABのM井さんブース。まさにイベントのエントランスに一番近い場所に「どむかZINE」を置いていただいていた!数冊売れた、とのこと。各日で20数店の出店で、この2日間でも若干出店者が入れ替わる。ということで、参加店の知り合いも半分くらいお目に掛かれた感じ。アーケードの出口にはビーナイスの本屋さん、ということで、会場の入口と出口、あるいは出口と入口に「どむかZINE」が置かれていたことになる。ビーナイスの正面にはホホホ座のY下さん。昨年は、HARBISに出ていたが、今回は円頓寺で、2年連続お目に掛かれたことになる。S田さんからは、帰路の新幹線の中で、ZINEが売れた!とのSNSメッセージが届いた。折角の名古屋なので、そこからさらにダッシュして国際芸術祭あいち(愛知芸術センター)へ。まさかそこでも東京での知り合いに合うとは。計画になかった立ち寄りだったが、知り合い8人に会えた、というのも驚きであった。

会場風景

【「おひがしさん」からKITAKAGAYA】

出版社・本屋、個人出店の古本フリマ「おひがしさんブックパーク」が京都・東本願寺前市民広場で行われることをS江さんの投稿で知り、関西での要件の前のKITAKAGATAに11月3日に行く前に立ち寄ることにした。会場のお東さん広場(東本願寺前市民緑地)は、京都タワーを過ぎてすぐの交通至便なとことにある。主催はこもれび書店(Knit-K)で、以前伺ったことがある本と貸棚が同居する本屋さんで、編集プロダクションも併設している(民博さん系のお仕事多数)。個人の出店が20数社、出版社・法人系は、ときじく、松陽堂、Blanket Bookd、英明企画編集、本の雑誌社、140B、西日本出版社、法蔵館、こもれび書店。こもれび書店で、以前関わった「聖地巡礼・自分探しの旅へ」(国立民族学博物館編)を古本で、英明企画編集で「京都注意/禁止看板百景」という地元モノを購入。駅を降りたときには晴れていたが、地面は濡れていて雨が降っていたとのこと。京都滞在30分、駅に戻る頃には雲が動いてきて、パラパラ雨が降り始めた。

東本願寺前・会場風景

そこから北加賀谷のKITAKAGAYA FLEA・ASIA BOOK MARKETへ。1階はフード&マーケットで、「森・道・市場」が大々的にコーナー展開していた。2階はフード&マーケット、3階はブック&モア、4階は大阪てしごと市、ZINE FAIRと、「Over 100 Tote Bags from Bookstores in Our Everyday Lives」展。造船所跡の4階に入ったのは初めてだが、天井が高く、明るいフラットなスペース。本屋のトートバッグ展も中空のトラスからバッグ吊るしていて、その下(足元)にキャプションが置かれている。同名の上製本(カタログ)が発行されているので、買わざるをえない。

「Over 100 Tote Bags from Bookstores in Our Everyday Lives」展

メインは3階のASIA BOOK MARKETだが、ビーナイスのブースに荷物を置かせていただいて、知り合い系を中心にご挨拶を兼ねて覗く。「本と商い、ある日」では同社が企画した「極私的OKINAWAのカタチ」と、できたばかりという「沖縄まちかど本屋さんかくかたり記」(たまきまさみ編著・ボーダーインク)を購入、ナタ書では「軍艦島と呼ばれた島、端島」を購入。

会場風景

他は、主に韓国、中国からの出店者から、本が描かれているアートシートなどを購入。会場内セミナーで「『独立出版者エキスポ』はじめます(百万年書房・北尾さん、三輪舎・中岡さん・鈴木さん、タバブックス・宮川さん」や「独立書店ネットワークという名の新たな書店のチャレンジ(誠光社・堀部さん、百万年書房・北尾さん)」、「台湾ローカルを編むという視点」(生活藝人・田中さんなど)など、知り合いが登壇するセッションも覗く。

セッションの様子

【マガジンハウス博】

10月10日から25日まで、銀座のSony Parkで、同社の80周年を記念して「マガジンハウス博」。1階では古本市をやっており、雑誌のバックナンバーが並べられていた。隣にはpopeyeカーでポパイグッズなどの販売。ブルータスはコーヒー販売。地下2階から5階までの壁面には過去の表紙が貼り巡らされていた。地下2階から上がっていくことにする。地下2階は「マガジンハウスのAtoZ」で、年表などを交え、AからZのキーワードごとに紹介。媒体ごとの切り口もあり、当時の写真や誌面の展示などもあった。地下1階は「マガジンハウスストア」で雑誌や単行本、限定スイーツや、「クロワッサンの店」が選んだ品々も展示販売。そういえば、昔はEDIショップ(だったか?)という路面店もあったなぁ。1階には前述の古本市や、巨大なパンダや仕掛け展示など。3階のみ有料で、「村上隆と村上ハウス」。歌川広重を写した版画作品と、3か所ほど中に入れる「ハウス」。村上隆の像、アート作品と村上作品によるグッズ。こちらでは購入できず、申込書を持って屋上で購入する。入場料は1100円で、展示スペース比からすると、ちょっと高めかな?屋上(4階)に商品は並んでいない。ここは特設配信ステージが設けられていた。
マガジンハウス博オフィシャルサイト|マガジンハウス80周年記念 – 株式会社マガジンハウス マガジンハウスストア

会場風景

【神田古本まつり、とか】

第65回東京名物神田古本まつり(10月24日〜11月3日)の会期中の25・26日に予定された「第33回本の街・神保町ブックフェスティバル」は2日とも雨で中止となった。2日間とも雨で中止は、記憶にない(1日雨、というのは割とあった記憶がある)。その日は「本の学校・出版シンポジウム」があるので、出陣を予定していたが、雨での中止はショックが大きい。そういった中でのブックイベントは、冨山房ビル「読書室隣」での「産直ブックフェア」(ODO ZINE/ISBooks、窮理舎、書肆海と夕焼、書肆ぱらむ、田畑書店、チーム文章講座、図書出版みぎわ、平熱書店、読書人〜チラシより。よはく社、)と皓星社にサンライズ、140b、法蔵館、英明企画編集といった関西の出版社が集い、ミニフェスを敢行。(物流は「本の雑誌社」がハブになっていた、と伺った)

「産直ブックフェア」
「皓星社の古本市」

ここでは、毎年「皓星社の古本市」で近代出版研究の小林昌樹さんほかの面々が出品する本が並ぶが、今回は、それに加えブックフェスティバル用の本も並んで魅力が増した。結果的には神保町ブックフェスティバルが中止であったにも関わらず、そこそこの出費。「本の雑誌のZINE」は東京堂書店で購入。本の学校は第1分科会「読者と書店の振興に取り組む意義と可能性」(伊藤直人、北田博充、草彅主税=コーディネーター、の各氏)、第2分科会(あまのさくや、西川正、高木善祥、今井=コーディネーターの各氏)、第3分科会(池田るり子、今泉憲志の各氏)。第3分科会の時間に、神保町の街を歩いていたことは内緒。Wols Booksで超重量級の豪華本を格安で購入したことも内緒。交流会は専修大学内でのケータリング。永井和伸さんは交流会までの全てのプログラムに参加、締めのご挨拶までお元気な姿を見せていた。

「本の学校」交流会で挨拶される永井さん

【「わざわざ系本屋」の系譜・「街の書店が消えてゆく」販売中!】

▶国立国会図書館・カレントウエアネスNo.356CA2044:累計アクセス数11960突破!「『わざわざ系本屋』の系譜ー多様化する本屋と、そこに注がれる眼差し」。お時間あるときにお読みいただければ幸いです。

創出版から、同内容を〈大幅加筆〉して再収録した「街の書店が消えてゆくー街の書店の消失は私たちに何をもたらすのか」絶賛販売中!(ISBN978-4-904795-80-4)

《奥多摩ブックフィールド、12月の定例開室は、6日(第1土曜日)》

奥多摩ブックフィールド
12月の定例開室は、6日(第1土曜日)予定、13時頃〜16時頃(冬季・12月~3月)、天候・路面状況により開室時間の変更・閉室する場合があります▶〒198-0221東京都西多摩郡奥多摩町留浦1237番地
▶奥多摩駅発(12時10分発)西東京バス「学校前」下車が便利です。奥多摩駅発 西東京バス(奥多摩湖方面行き)「峰谷橋」下車徒歩10数分。
《東京最西端書店》も同時開店。古本、「どむかZINE」、オリジナルトートバッグなども多種取り揃えています。
奥多摩の「よりみち茶屋とおまわり」でも引き続き出張販売しています。
2026年1月の開室日は10日(2026年1月のみ第2土曜日)

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