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ICU㉒|最期は母親の腕の中で


「最期は、母親の腕の中でお願いします…」


最期の瞬間は、妻の腕の中で “母親のぬくもり” を感じ、“愛” に包まれ、幸せな気持ちで旅立ってほしかった。


「かしこまりました」

医療チームにも了承してもらい、私は妻に息子を託す…


本当に “最期の時” が来てしまった。


俯く医療チーム、咽び泣く家族…


優しく息子を抱きしめる妻… その肩を私はそっと覆う…

そして、親子3人で抱きしめ合いながら、“最期の会話” をする…


「本当に幸せだった…」


「幸せな時間をありがとう…」

「みんなに愛されて幸せだね…」


「よく頑張ったな…」

「最高の人生だよ…」

「本当に誇りに思うよ…」


「会いに来てくれてありがとう…」

「生まれてきてくれてありがとう…」


「お父さんとお母さんを選んできてくれてありがとう…」

「お父さんとお母さんを親にしてくれてありがとう…」


「可愛いね…」

「大好きだよ凰理…」

「ずっと一緒にいるからね…」



「また会おうね…」

「また家族やろうね…」




「愛してるよ…」





「ありがとう…」




私たちの「想い」「心の叫び」、そして「愛」...
全てを息子に伝えた。


もう、私たちの心も完全に壊れ、感情はぐちゃぐちゃだった…


目の前の現実を信じたくなかった。

嘘であってほしかった。

夢なら覚めてほしかった…


だが、息子との “幸せなひととき” は本当にかけがえのない「宝物」だ。

感謝してもしきれない…



そして、小児科医が “最期のつとめ” を果たしに息子の元へ。


「人工呼吸器を外させていただきます…」


そう言って、静かに人工呼吸器を外していき、最後に、


「呼吸の確認をさせていただきます…」


と聴診器を胸に当て、心音を確認する…


そして… 小児科医は声を震わせながら、私たちに告げる…



「9月14日… 19時26分… 死亡」



家族に見守られ、私たちの愛に包まれながら、最期は母親の腕の中で息子は静かに息を引き取った。



私たちも震える声で言葉を紡ぐ…


「ありがとうございました…」


医療チームも、深々と頭を下げる。


そして、嗚咽は次第に “慟哭” へと変わっていく…

静寂なICUに、いつまでもその声が響き渡っていた…



愛する息子の生涯は幕を閉じた。


母の胎内に命を宿したその日から、激動の日々を闘った9ヶ月…

全前置胎盤、完全大血管転位症、早産(低位生体重児)、新生児呼吸窮迫症候群、バルーン手術、先天性内反足、ジャテーン手術、ECMO装着、ECMO離脱、感染症…

幾多の困難が続く中で、ありとあらゆる人を巻き込みながら、小さな身体で命懸けで闘うその雄姿は、関わる人全てに勇気を与えただろう。


本当に、人々を幸せにし、家族をひとつにする神秘的な存在であった。


そして、皆の想いを力に「奇跡」をも起こす…

そんな主人公のような息子。


いや、もはや “小説やドラマでも描けぬほど壮大な人生” と言えよう。



「生後23日」


その生涯は、あまりにも短く儚い…


だが、まさに「鳳凰」の如く、“愛の象徴” として天寿を全うした息子は、間違いなく人々の記憶に深く刻み込まれるだろう。



つづく



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