ECMO⑪|五分五分
予想外に早い終了に驚きを隠せなかったが、ひとまず母に荷物を預け、2人でICUへ向かう…
「順調だから早く終わったってことを信じたいけど…」
と互いにポジティブに捉えようとするも、やはり説明室が近づくにつれて不安は大きくなる。
そして、ICUへ着いてすぐに、先ほどの説明室へと案内された。
(順調であってくれ…)
(離脱出来ましたと言ってくれ…)
心の中で、そう叫びながら医療チームを待つ私…
そんな中、2~3分で先ほどの外科医が入ってきた。
沈黙の中、静かに椅子に座る外科医…
数秒間、無意識のうちに私の呼吸は止まっていた。
そして、ゆっくりと口を開き…
「ECMOにまた乗せました…」
と、医師は私たちに告げた。
離脱は “失敗” 。
再びECMOに乗せることとなったのだ。
「・・・」
私も妻も、黙って俯くことしか出来なかった。
そして、外科医はさらに詳細を話し始める。
どうやら、離脱後数分は自発的な生命活動が問題なく出来ていたようだが、5分を過ぎた辺りで「肺高血圧」を引き起こし、またもや “大量出血” を繰り返すようになってしまったという。
簡単に言えば、“肺が耐えられなかった” ということだ。
落胆の色を隠せない外科医…
しかし、そんな中でも私たちへの配慮なのか、非常に言葉を選びながら説明しようとしてくれていた。
だが、それは私たちにとってももどかしいのだ…
「先生、私たちに気を遣わず、全然言ってくれて構いませんので」
と私から伝え、見解をそのまま伝えてもらうことにした。
そして、
「率直に言ってしまうと、なぜ肺が耐えられないのかわかりません」
と正直な見解を話してくれた。
離脱トライの直前の数値は基準値を超え、順調そのもの。
“肺が未熟” なのか
“手術の疲弊” なのか…
医療チームとしてもこの離脱失敗は本当に “想定外” であったそうで、かなり頭を悩ませている様子であった。
再びECMOに乗せれば、心肺は休ませることが出来るものの、“ECMOの長期装着によるリスク” はこれまで以上に上昇してしまう。
しかし、それしか息子が今生き延びる術はなく、やむなく再びECMOに乗せたということであった。
そして、その間に再び離脱が出来るよう解決策を見い出さなければならないが、前例もなく原因もわからない。
本当に、霧の中を手探りするような状況である。
だが、私は率直に聞きたかった。
息子の置かれているリアルな状況を、そして “生存の見込み” があるのかということを。
「生存率というか、回復の確率というか、先生の見立てはいかがですか?」
外科医は、少し俯きながらも口を開き、
「凰理くんは、凄く頑張っていますが、正直『厳しい状況』です…」
と絞り出すように私たちにそう告げた。
「厳しい状況」…
生存出来る見込みとして、希望的観測や原因不明であることを考慮すれば “未知数” …
そういう意味では「五分五分」であるという。
前回の手術後の説明で「死の世界線」を認識したが、それはまだ “もしかしたら繋がるかもしれない” というぼんやりとした世界線であり、どこか遠くにあるものだとも思っていた。
しかし、今回の離脱失敗で、
“「死の世界線」はハッキリと存在し、そしてその「死」が息子の目の前にある”
ということを強く痛感させられた。
ここまでくると、言葉は出ないし、涙も出ない。
“放心状態” と表現するのが一番近いのかもしれないが、それをも超えている、私自身も理解が及ばない感覚というべきか… そんな状態であった。
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