見出し画像

追悼・映画監督 原田眞人〜映画愛が込められたデビュー作「さらば映画の友よ インディアンサマー」

高校時代の私は、雑誌「ポパイ」を隅から隅まで読んでいた。そこで映画評論「LAエクスプレス」を連載していたのが、原田眞人。その人が映画監督デビューするという。その作品が、「さらば映画の友よ インディアンサマー」(1979年 キティ・フィルム)である。

1979年の公開時は、受験の年ということもあって観ることはできなかった。その後、観たのかどうか、記憶がはっきりしていない中、原田眞人の訃報が入ってきた。私の一回り年上、享年76歳はちょっと若すぎる。確認すると、このデビュー作、U-NEXTの“マイリスト“の中に、すでに入っていた。以前から気になっていたのだ。

映画愛にあふれた作品である。時代は70年安保の風が吹く、1960年代の終わり。新宿の映画館、主人公のダンさん(川谷拓三)は毎日のようにお気に入りの席に座る。そこで遭遇するのが、沼津から東京まで映画を観に出てきている浪人生シューマ(重田尚彦)。二人は、大の映画好きである。ちなみに、原田眞人も沼津出身、映画の中のシューマとは同い年だろう。

こうして映画という絆でつながれた、二人の奇妙な交流が始まる。ダンさんはなにかと言うと、映画のセリフを口にする。彼は1年365本の映画を観ることを自分に課している。ダンさんは、日常と映画の世界の区別がついているのだろうか。

そんなダンさん、ミュージカル映画「雨に唄えば」の鑑賞後、外に出ると都合よく雨が降っている。ダンさんは、ジーン・ケリー演じるドンになりきる。川谷拓三は、大部屋俳優からスタート、頭角を表し1973年の「仁義なき戦い」シリーズ、テレビでは「前略おふくろ様」などで名バイプレーヤーとして、誰もが知る存在となる。この「雨に唄えば」オマージュの場面は、主役・川谷拓三としての名場面の一つだろう。

全編通じて、脚本も担当した原田眞人の映画への思い入れ、それに彩られた自身の青春が輝く、瑞々しいデビュー作。同時に、公開当時にあった映画界の空気ー日本映画の新しいムーブメントを感じる一作でもある。

「前略おふくろ様」で川谷と共に存在感のある脇役を演じた室田日出男が、シューマの父親として出演。喫茶店のマスターを魅力的に演じている。

シューマが惹かれる女性、ミナミを演じるのが浅野温子。1976年デビュー、映画の出演は3本目。4本目が片岡義男原作、藤田敏八監督の「スローなブギにしてくれ」(1981年東映・角川)で、これは大学入学後の公開なので封切り時に見た。ちょっとミステリアスだけれど、透明感のある女性を演じている。

フィルム・フェスティバルの主催者として原田芳雄が登場。私の持つ彼のイメージとは違う役を演じる。なにやっても上手い。

音楽は宇崎竜童。オリジナル曲と共に、グループ・サウンズ、歌謡曲、時代を感じさせてくれる選曲も素晴らしい。

原田眞人監督、そして映画評論家。ご冥福をお祈りします


*これを書いていたら、「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」などの監督、ロブ・ライナー死去、しかも殺人事件とのニュース。こちらは、次男が容疑者とのこと。悲劇である


いいなと思ったら応援しよう!