若尾文子の魅力が全開の映画「妻は告白する」〜“緊急避難“は成立するのか
小津安二郎監督が大映で撮った「浮草」(1959年)、大映の看板スター、若尾文子と川口浩が出演していた。若尾文子の映画をもう少し見ようかと考えていたところに入ってきたのが、「妻は告白する」。1961年の大映作品である。(U-NEXTで配信あり)
法律用語で“緊急避難“というものがある。刑法37条で規定されており、自己や他人の生命に対する危難など、差し迫った危機を避けるためにやむを得ず行った行為は、罪に問われないというものである。
滝川彩子(若尾文子)は、殺人罪に問われている。
薬学者の夫・滝川亮吉(小澤栄太郎)、彩子、製薬会社の社員・幸田(川口浩)は北穂高登山に行ったのだが、亮吉が滑落。3人をつないでいたザイルで、下から亮吉・彩子の順で宙吊りになり、上部で幸田がなんとか引っ張り上げようとする。一人で二人の人間を持ち上げるのは、ほぼ不可能であり、幸田自身も落下する可能性が。
そんな状況で、彩子は夫と自分をつなぐザイルを切断、夫は落下し帰らぬ人となる。幸田は彩子を無事引き上げ、二人は助かる。そして、その背景などから、彩子は殺人罪に問われているのだ。
三人を取り巻く状況とは? 罪とは? 愛情とは? 深いテーマが横たわるのだが、とにかく若尾文子が魅力的である。良妻の顔、悲劇の主人公、妖婦、いくつもの表情が現れる。モノクロームの画面が、色気を引き立たせている。
法廷ドラマとしても、見応え十分で、弁護士役の根上淳(後にペギー葉山と結婚)のドライな振る舞い、高松英郎の“熱い“検事役、幸田のフィアンセ役の馬渕晴子と、脇も魅力的だる。
彼女に振り回される幸田は、いかにも世間知らずという感じで、こちらは川口浩にピッタリ。彩子の夫役、小沢栄太郎の憎々しい感じも、ドラマを盛り上げる。
原作は弁護士・円山雅也が書いた小説。今では、メディアに登場する弁護士は多数いるが、彼はその先駆けである。
監督は、若尾文子と多くの映画を世に出した増村保造。ちょっとヒッチコックやヨーロッパ映画の香りもすると思ったのだが、Wikipediaを見ると、イタリアに映画留学していたようだ。(ちなみに似たタイトルのヒッチコック作品「私は告白する」は1954年日本公開である)
なお、若尾文子は、本作や「女は二度生まれる」(こちらは川島雄三監督)・「婚期」で、第12回(1961年度)のブルーリボン主演女優賞を獲得している。
もっと若尾文子を追いかけたくなった

