連載: 不幸ブログと現実のキミ⑨
一話から八話までのあらすじ
主人公・由奈は、大学2年。
彼氏の子を妊娠するも流産してしまい、深い悲しみに沈んでいた。彼女の辛い経験を友人たちに話すが、その内容が人気ブロガーの真百合によってネット上で暴露されてしまう。怒りに駆られた由奈は、真百合のイベントに乗り込むが、彼女は自己正当化を続け、由奈は名誉毀損で訴えられるという理不尽な事態に直面する。
由奈は友人たちと共に真百合の行動について話し合い、彼女を心配する気持ちを告げる。
真百合とのランチで、彼女の行動が他人の痛みを利用していることを指摘するが、真百合は最初は明るく振舞う。しかし、大学の掲示板に新たな告発が掲載され、真百合の過去の行動が再び問題視される。
真百合は被害者に謝罪したいと申し出るが、約束の時間に被害者は現れず、彼女の信頼が揺らぐ。
真百合の二つの人格が衝突した。
第九話
約束の日。
私、菜摘、陽菜は真百合と共に緊張と期待の入り混じった気持ちで待ち合わせの場所に向かった。
公園のベンチに座り私の心臓は高鳴り、手は汗でじっとりと湿っていた。普段と変わらない周囲の音が別世界に感じられた。
「真百合さん、大丈夫?」菜摘が声をかける。
菜摘は真百合の隣に座り、心配そうに彼女を摩る。
「うん、やっぱり怖い」真百合は呟く。
「私がしたことがどれだけ相手を傷つけたのか、考えると胸が苦しくなる」
私も近くに寄り添い、真百合の手を優しく握る。「私たちがいるから、心配しないで。
真百合は一人じゃないって」
遠くから見覚えのある姿が近づいてくる。
私の心臓が一瞬止まった。被害者の姿だ。
彼女は小走りで真百合の前で立ち止まった。
「ほんと、ごめん!先生に呼び止められちゃって。
もう被害者への謝罪は済んだの?」
栗子は息を切らしながら胸の前で手を合わせる。
「りっちゃんが被害者なの⁈」
すっとんきょんの声で私が尋ねて
「由奈、私じゃないよ。違うよ」軽くかわされた。
「走ると暑いわ」栗子は
「違う、違う。真百合にここへ呼ばれてさ。
由奈たちも来るけど、りっちゃんも一緒にいてって。まだ被害者さんは来てないの?」
本当に何も知らない様子だ。
「真百合ちゃん……」陽菜の声は冷静だった。
表情には軽蔑が見え隠れしている。
真百合も私たちも一斉に陽菜を見つめた。
「会ってくれてありがとう。
被害者は私なの。忘れちゃった?」
えっ、真百合は声を震わせる。
「陽菜?」
「そうよ、私よ。
大学の掲示板に貼り紙したのも、この私。
アンタの謝罪ブログを読んで驚いたわ、
普通は真百合自身の背景を釈明するもんでしょ。
なんで私のことを書いたのよ!」
りっちゃん、ごめんねと前置きした陽菜は
「私とりっちゃんが部室で暴行されたあと、私は妊娠してたのが判ったの。
洗面台で吐いている私を真百合が偶然見ていて、声をかけてくれて。
『私たち、友達でしょ』真百合が優しかったから、部室でのことや警察に行くのは躊躇うこと。
子どもができても産めないからって真百合に相談したの。
真百合は知り合いの医者を紹介してくれて、真百合は浅岡くんの彼女だからって、勝手に浅岡くんの個人情報で中絶の同意書に記入してくれて。
何から何まで親切にしてもらったんだけど、真百合が私のことをブログに書いて、絶対に許せない。
それはそれ、ブログはブログだって。
私のことを忘れたの?」
陽菜は黙り込み、真百合の目をじっと睨む。
「本当に覚えてないの?
私がどれだけ苦しんだかを理解してほしい。
由奈やりっちゃんの痛みを考えて」
「ごめんなさい。
陽菜の経験を軽んじてしまって。
私、自分のことばかり考えて、あなたの気持ちを無視していた」真百合は言葉を選びながら続けた。「本当にごめんなさい」
陽菜は静かに頷き
「心の傷は簡単には癒えないよ」
私は真百合の行動がもたらした痛みを深く理解できるし、これからどうすればいいのかを考え始めた。
「陽菜のために何かできることがあれば、何でもします。少しでもあなたの助けになりたい」
真百合は真剣な目で陽菜へ乞う。
「ありがとう。でも、
まずは真百合ちゃんは自分自身を理解するのが大切だと思うよ。真百合ちゃんが自身を受け入れない限り、他人を助けることはできないから」
「私、頑張る。
陽菜の言葉を忘れずに、自分を見つめ直します」
真百合の語気は強い。
「それが大事だと思うよ。
お互い、少しずつ前に進んでいこう」
言葉とは裏腹に表情が硬い陽菜から大きな息が漏れた。
