ペールギュント殺人事件②
←① →③
同期の椎名拓也はニヤつきながら顔を覗き込み
「土居ちゃん、興味が湧いただろう?
得意分野だろう?
警察学校じゃ成績トップだっただろう?
小説家になりたかったんだろう?」
土居の意思など聞く耳も持たず、捜査内容を告げてくる。
「いや、全然。俺は反社にしか興味がありません」
「本当につれないヤツだな、お前って。
コンサートチケットをプレゼントしただろう?」
土居は捜査四課、椎名は一課。それぞれが警視庁の中で違う部署に所属するが、情報共有があっても必ずしも事件そのものへ興味関心は伴わない。
喫煙所は二人だけ。人が来る気配もなく、特に話題がない土居は
「その薬物って、何か分かってんのか?」
フフッ、椎名の鼻から笑いが漏れる。
「スズランだってよ。スズラン」
「コンバラトキシンとかコンバロシドか?
ふ〜ん、婆さんじゃん。庭にあったものをレバニラにして食ったんじゃないの」
「レバニラにするならスイセンじゃないか。
大阪から来たマルガイだぜ?資産家よ?
東京に来てレバニラ食うのは、俺か土居くらいじゃないの」
「レバニラ差別をするなよ。
遠くから来たんだな。子どもか孫へ会いに?」
「それがよ〜、マルガイには子どもが三人、孫が五人いるんだが、誰もマルガイがコンサートどころか上京したことすら知らなくてよ」
二本目のタバコに火をつけながら、土居は
「それで?」口調が平坦だ。
「一応、当日のアリバイや通信履歴も見せてもらったんだが、全員見事にアリバイ有り。通話履歴ナシ。マルガイはSNSで大阪に居る設定の会話をしてるんだ」
「じゃ、婆さんが男と密会したんだろう。
家族に知られたら遺産で揉めそうじゃないか。
犯人は密会男だな」
早口で捲し立てた土居は面倒くさいを強調しているようだ。
つづく
