ペールギュント殺人事件③
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ペールギュント殺人事件③
椎名は大きく頷き、土居の肩を叩いた。
「そうか。でもな、土居ちゃん。この事件、単純な毒殺じゃないんだ」
「どういうこと?」
椎名はポケットから一枚の写真を取り出した。それは、コンサート会場の座席表だった。
「この席、誰かに意図的に選ばれたんだと思ってる。特に、被害者の席がな」
「何を言っているんだ?」
「最前列の被害者の席は、舞台のスピーカーから最も音が大きくなる位置にある。他の物音はかき消されやすいしな。つまり、明確な殺意を持ってこの席を選んだ人間がいる可能性がある」
土居は眉をひそめた。
「どうかな?死因は薬物だろ?スピーカーの音量はそんなに大きなファクターだろうか?」
「もちろん、直接的な死因は薬物だが、この大音量は人の精神に大きな影響を与えるだろう。特に、薬物を摂取した状態では、幻聴や幻覚を引き起こしやすい。パニック状態に陥りやすくなる。つまり、この音量は、被害者を追い詰めるための、一種の拷問だったと言える」
「何のために?」
「それはまだ分からない。ただ、この事件には、単なる金銭トラブル以上の何かが隠されている。綿密な計画と周到な準備。もしかしたら、このコンサート自体が、何かの計画の一部なのかもしれない」
土居は考え込んだ。椎名の言葉は、この事件の背後に、さらに複雑な陰謀が潜んでいることを暗示しているようにも思えた。
「椎名、この事件は俺も手伝おう」
椎名は驚いた表情を見せた。
「本当に?」
「ああ。この事件は、ただの殺人事件じゃない。何か面白いことがありそうだ」
「土居ちゃん、面白いというのは、不謹慎だぞ」
「ああ。でもやりがいがあるのは間違いない。手始めに、例の婆さんと密会していた男を洗ってみよう」
二人は、再び捜査を開始した。コンサート会場周辺の防犯カメラ映像とにらめっこした。コンサート当日の来場客の行動パターンを分析した結果、ある不信な人物が浮かび上がった。それは、コンサートのプログラムに名前が載っていなかった、謎の演奏者だった。
その演奏者は、コンサート中に何度も被害者の席の方をじっと見つめていた。そして、事件が起こった直後には、会場から姿を消していた。
「この男が犯人か?」
椎名は首を横に振った。
「まだ断定はできない。しかし、この男は何かを知っている。婆さんと密会した男かもしれない」
二人は、謎の演奏者と密会男が同一人物なのかどうか、追跡し始めた。
…つづく
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