ペールギュント殺人事件④
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覆面パトカーは追跡にも使うのでスピードが出易い高級車が適しているのは理解している土居だが
「椎名、この車しかなかったのか?」
ゴツい車が狭い道をノロノロ走る。
「ごめん、俺の車を使ってもいいんだけど
今は車検で代車を借りていてね。
あまり代車を使いたくない」
「代車か……」「そう」
「今から会いに行く男の情報も代車みたいに別人なら、何を手掛かりにすればいいのやら」
助手席に座る土居はマルガイが殺害されたコンサートに居たが、曲目が分からない上にドレスコードを無視したユニクロで行ってしまい、舞台上から人が出入りしていたのも見ていなかった。
ドアに肘を掛けた土居から唸り声が響いてくるのを椎名は聞こえないフリをして同情した。
もし葬式がなければ椎名は行ったコンサートで、椎名が会場に居合わせても舞台上から人が消えたなど見ていなかったかもしれない。
『フィルハーモニー交響楽団・東京』の楽団員へ一人ずつ、話を聞いて回る土居と椎名だが、楽団員もカメラへ映った男に見覚えはないと証言する。
中には
「清掃員のおじさんに似てる」と証言してくれたが、別の楽団員は「警備員に似ていた」とも言う。
いずれにせよ、楽団員ではないのは分かった。
「清掃会社と警備会社も行ってみますか」
椎名の楽観的な抑揚に
「行かなきゃいけないだろう?」土居が笑う。
新聞には載らない裏側はいつも虱潰し。
「楽団員が誰も違和感がなかったって不思議だな」
土居のひと言に椎名が頷く。
「普通は指揮者が分かりそうなもんだけど、
まだ指揮者と会えてないからなぁ」
もうじき清掃会社へ到着だという交差点。
「あっ」土居が何かを思い出したのか
「土居ちゃん、どうした?」
「そういえばコンサートの時よ。指揮者がやや遅れて舞台へ立ったんだ。
俺は少し遅れて指揮者が入るものだと先入観があったが、あれは本当に“少し”だったのか?」
ハンドルを握ったままの椎名が清掃会社に行く前に映像をチェックしようと提案した。
