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第10話ここで一度、振り返ってみましょう── 西洋医学と東洋医学、どこが違う?

第10話

ここで一度、振り返ってみましょう

── 西洋医学と東洋医学、どこが違う?

体の声を聞くとき、
どんな耳で聞くかによって、
聞こえてくるものは、変わります。


圭さん:1966年生まれ、エンジニア
益子(まこ)先生:70代の女性漢方医
(養生訓を書いた貝原益軒の流れをくむ家系)


■ 今日の3行まとめ

  • 西洋医学は「数値」で見る。東洋医学は「流れ」で見る

  • どちらが正しいではなく、両方の視点を持つことに意味がある

  • 「未病を治す」── 病気になる前に手を打つという考え方


■ 話の始まり

圭さん
「先生、ちょっと思ったことがあって」

益子先生
「なあに?」

圭さん
「先生のところに来るようになってから、
体の見方が、少し変わった気がするんです」

益子先生
「どんなふうに?」

圭さん
「うまく言えないんですけど……
病院では"数値"を見るじゃないですか。
BUNがどうとか、血糖値がどうとか」

益子先生
「ええ」

圭さん
「でも先生は、
"流れ"を見ている気がして。
冷えとか、巡りとか、消化力とか……」

益子先生
「ふふ、いいところに気づいたわね」


■ 圭さんの疑問

西洋医学と東洋医学、どこが違うんだろう?

圭さん
「正直、最初はよく分からなかったんです。
病院で言われることと、
先生がおっしゃることが、
なんだか違う角度で」

益子先生
「うん。
でも、どちらも
"体を良くしたい"という気持ちは同じなのよ」

圭さん
「そうですよね。
でも、見ているものが違うというか……」

益子先生
「じゃあ今日は、
少しその違いを整理してみましょうか」


■ これまでの話を振り返ってみると

益子先生
「これまで、いろんな話をしてきたわね」

圭さん
「はい。
BUNの話から始まって、
胃のこと、肌のこと、歯周病のこと……」

益子先生
「あのときね、
BUNの数値が高かったでしょう?」

圭さん
「はい。
腎臓が悪いんじゃないかって、
ちょっと不安になりました」

益子先生
「あれは"西洋医学の目"で見た話ね。
数値から、体の状態を推測する」

圭さん
「そうですね」

益子先生
「一方で、消化力の話や、
冷えと巡りの話は……」

圭さん
「ああ、あれは数値じゃなかったですね。
"どう感じるか"とか、
"流れがどうなっているか"という話でした」

益子先生
「そう。
それが"東洋医学の目"で見た話なの」


■ 西洋医学の視点

「数値」で見る、「部分」を見る

益子先生
「西洋医学の特徴を、
簡単にまとめてみましょう」


● 一つの症状に、一つの薬

西洋医学では、代表的には
症状に対して、
それを抑える薬を使います。

  • 熱が出たら → 解熱剤

  • 痛みがあれば → 鎮痛剤

  • 血圧が高ければ → 降圧剤

益子先生
「これを"対症療法"と言うの。
今ある症状を、直接おさえる方法ね」


● 科学的なエビデンスに基づく

西洋医学は、
データや実験結果を重視します。

  • 血液検査の数値

  • 画像診断の結果

  • 臨床試験で効果が確認された治療法

圭さん
「だから、納得感があるというか、
"なぜ"が説明できるんですね」

益子先生
「そう。
急性期の治療や、
救急の場面では、
この"確かさ"がとても大事なの」

圭さん
「ああ……
そう言われると、
病院で検査を受けたとき、
安心できた気持ちも分かります」


■ 東洋医学の視点

「流れ」で見る、「全体」を見る

益子先生
「一方、東洋医学は、
少し違う見方をするの」


● 体全体を見て、体質に合わせて考える

東洋医学では、
症状だけでなく、
その人の体質を見ます。

  • 冷えやすいか、熱がこもりやすいか

  • 疲れやすいか、元気が有り余っているか

  • 消化力が強いか、弱いか

益子先生
「同じ"風邪"でも、
寒気が強い人と、
喉の痛みが強い人では、
使う漢方薬が違うのよ」

圭さん
「え、そうなんですか?
風邪って、全部同じ薬じゃないんですね」

益子先生
「そう。
"その人に合ったもの"を選ぶの。
だから、体質を見ることが大事なのよ」


● 「証(しょう)」という体質の見方

益子先生
「東洋医学では、
体質を"証"という言葉で表すの」

いくつかの軸で、体の傾向を見ます。

  • 実証・虚証
    → エネルギーが充実しているか、不足しているか

  • 寒証・熱証
    → 体が冷えやすいか、熱がこもりやすいか

圭さん
「第7話で話した霜焼けは、
"冷え"の話でしたよね」

益子先生
「そう。
圭さんは、冷えやすい体質なのよ。
それを踏まえて、
食べ物や過ごし方を考えるの」

圭さん
「……なんだか、
体の見え方が、前と違ってきた気がします。
数字だけじゃなくて、
"自分はどういうタイプか"って考えるようになりました」

益子先生
「それが、養生の入り口よ」


■ どちらが正しい、ではなく

圭さん
「西洋医学と東洋医学、
どちらが正しいんですか?」

益子先生
「どちらも正しいの。
ただ、見ているものが違うだけ」

益子先生
「西洋医学は、
"今、何が起きているか"を
精密に捉えるのが得意」

益子先生
「東洋医学は、
"なぜそうなったか"を
体質から考えるのが得意」

圭さん
「なるほど……
両方の視点があると、
見えるものが増えるんですね」

益子先生
「そういうこと。
使い分けができると、なお良いわね」

圭さん
「使い分け……ですか」

益子先生
「ええ。
急に具合が悪くなったときは、
病院の検査や治療が頼りになる。
でも、日常の"なんとなく"のときは、
東洋医学の視点が役立つことが多いの」


■ そして、これから

圭さん
「でも先生、
最近は精密栄養学とか、
分子レベルで体を見る研究が進んでいますよね」

益子先生
「圭さん、よく知っているわね」

圭さん
「そうなると、
東洋医学が言う"流れ"みたいなものも、
いずれは数値で見えるようになるんじゃないかって」

益子先生
「そうかもしれないわね。
実際、腸内細菌のバランスや、
体内の炎症の状態なんかは、
今でも少しずつ測れるようになってきているの」

圭さん
「じゃあ、いつか
東洋医学と西洋医学の境目がなくなる……?」

益子先生
「境目というより、
つながりが見えてくるのかもしれないわね。
違う地図だと思っていたものが、
実は同じ体を描いていたんだって」

益子先生
「でもね、
どれだけ測れるようになっても、
"この体で、今、どう感じているか"
それだけは、自分にしか分からないのよ」

圭さん
「……そうですね。
数値は増えても、
体の声を聞くのは、自分しかいない」

益子先生
「だから、養生なの」


■ 「未病を治す」という考え方

益子先生
「東洋医学には、
とても大事な考え方があるの」

圭さん
「何ですか?」

益子先生
"未病を治す"

圭さん
「未病……
まだ病気じゃない、ということですか?」

益子先生
「そう。
"病気"と診断されるほどではないけれど、
なんとなく調子が悪い。
そういう状態を"未病"と呼ぶの」

益子先生
「西洋医学では、
検査で異常がなければ
"問題なし"となることが多いでしょう?」

圭さん
「ああ、確かに。
"様子を見ましょう"って言われること、
ありますね」

益子先生
「でもね、
東洋医学では、
その"なんとなく"の段階で
手を打つことを大事にするの」

圭さん
「病気になる前に、整える……」

益子先生
「そう。
それが"養生"の基本なのよ」

益子先生
「……ねえ、圭さん。
これまで話してきたこと、
思い出してみて」

圭さん
「BUNが高かったこと、
胃が弱いこと、
肌が乾燥すること、
霜焼けができやすいこと……」

益子先生
「どれも、
"病気"と診断されたわけじゃないでしょう?
でも、気になっていた」

圭さん
「……はい」

益子先生
あれ全部が、"未病"なのよ

圭さん
「……ああ。
そうか。
これまでの話、
全部つながっていたんですね」

益子先生
「ええ。
だから、こうして話を続けてきたの」


■ 今日のテーマを一言でまとめると

同じ体を、違う地図で見る。
だから、気づけることが増える。


■ 今日からできる"ひとつの養生"

● 今日のひとつ

「体からのサインに、"なぜ?"と問いかけてみる」

  • 数値が高い → なぜ高いんだろう?

  • 冷える → なぜ冷えるんだろう?

  • 疲れやすい → なぜ疲れるんだろう?

答えがすぐに分からなくても大丈夫。

問いかけることで、
体の声に耳を傾ける姿勢が生まれます。

そして、問いかけたら、
体に触れてみてください。

  • 手足が冷たいかな?

  • お腹は張っていないかな?

  • 肩はこわばっていないかな?

思考だけでなく、感覚でも確かめる。
それが、養生の始まりです。


■ 話の終わりに

圭さん
「なんだか、
これまでの話が少しつながった気がします」

益子先生
「良かった。
今日は"地図の見方"を整理したような感じね」

圭さん
「地図……ですか」

益子先生
「そう。
次回は、その地図をもう少し詳しく見てみましょう。
"陰陽五行"という、
東洋医学の不思議な世界観の話をするわ」

圭さん
「陰陽五行……
聞いたことはあるんですけど、
正直よく分からなくて」

益子先生
「大丈夫。

難しく考えなくていいの。

体を理解するための"地図"みたいなものよ」

益子先生

「一日ひとつでいいの。小さな養生を続けましょ。」


■ 次回予告

第11話:「陰陽五行という地図 ── 体と心のつながりを、ちょっとだけ」

  • 陰陽とは何か?(バランスの話)

  • 五行とは何か?(つながりの話)

  • これまでの話(消化力、BUN、冷え)が、どうつながるのか

全部覚えなくて大丈夫。
「こんな地図があるんだ」と知っておくだけで十分です。

次回も、益子先生と一緒に、
体のことを考えていきましょう。



続く


書いている人について

私は、こんな人です。

私のページです。


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