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第22話「アイスが食べられなくなった日」 -- 冷たいものを食べると下痢になる。これって加齢?脾胃の養生 --

第22話「アイスが食べられなくなった日」

── 冷たいものを食べると下痢になる。これって加齢?脾胃の養生 ──

圭さん:1966年生まれ、エンジニア
益子(まこ)先生:70代の女性漢方医


冷たいものを食べると下痢になる。
それは、脾胃があなたに伝えているサインなのよ。

※この記事は医療行為や診断を目的としたものではありません。
不安が強い場合や症状が続く場合は、医療機関への相談をおすすめします。


■ 今日の3行まとめ

  • 冷えの刺激が神経を通じて腸を過剰に動かし、水分吸収が追いつかなくなる──これが1〜2時間後の下痢の正体

  • 東洋医学では「寒邪が脾を傷つける」。冷えから脾陽を守ることが、根本的な養生になる

  • 萎縮性胃炎があると胃の働きが落ち、冷えの刺激に対する神経反射が強く出やすくなることもある


■ 話の始まり

圭さん
「先生、ちょっと恥ずかしいような話なんですが……
最近、冷たいものを食べると下痢になるんです」

益子先生
「冷たいもの、というのは?」

圭さん
「アイスクリームが特にひどくて、もうほとんど食べられない状態で。
ビールやワインも、一口ずつゆっくり飲まないとお腹に来てしまう。
あと、お腹いっぱいまで食べたときも、下痢になることがあって」

益子先生
「なるほど。普段の調子はどう?」

圭さん
「普段は問題ないんです。
冷たいものや食べすぎが引き金になる感じで。
20代の頃は冷えたビールをジョッキで一気に飲んでいたのに……」

そう言って、圭さんは苦笑しました。

圭さん
「これはもう、加齢なんでしょうか。
それとも、以前先生に教えていただいた萎縮性胃炎と、
何か関係があるんだろうかと思って」

益子先生
「いい質問ね。今日はその両方から見てみましょうか」


■ 圭さんの悩み整理

圭さん
「ネットで調べたら、過敏性腸症候群(IBS)というのが出てきて、
自分はそれかな、と思ったりもしたんですが」

益子先生
「調べたのね。でも、少し違うかもしれないの。
IBSは、冷たいものが誘発することもあるけど、その根っこにあるのはたいていストレスや緊張なの。引き金が『気持ち』か『食べ物』か、そこが見分けるポイントよ。
圭さんの場合は、冷たいものや食べすぎという
『物理的な引き金』が明確でしょう?」

圭さん
「確かに……緊張しているからお腹が下る、というよりは、
アイスを食べたら、という感じです」

益子先生
「そう。そこに体からのヒントがあるのよ」


■ 益子先生のやさしい解説

● 冷えが腸を過剰に動かす

益子先生
「冷たいものを食べてから、お腹がおかしくなるのって、
すぐではなく、1〜2時間後でしょう?」

圭さん
「そうなんです。食べてすぐじゃなくて、しばらくしてから」

益子先生
「そこに仕組みがあるのよ。
冷えが胃を刺激してから、腸全体に影響が出るまで、だいたいそのくらいかかるの」

冷たいものが胃に入ると、胃の神経が冷えの刺激を感じ取り、腸全体に「早く動け」という信号を送ります。これを胃大腸反射といいます。

腸が過剰に活発になると、内容物が速く動きすぎて水分を吸収する時間が取れなくなる。それが1〜2時間後に、水っぽい便として出てきます。

冷たい水でも同じ反応が起きるのは、このためです。冷えそのものが、神経を通じて腸を動かす引き金になっています。

圭さん
「冷たい水でも同じことが起きていたのは、そういう理由だったんですね」

益子先生
「そう。冷えそのものが、腸を動かしているのよ」


● 萎縮性胃炎との関係

益子先生
「以前、萎縮性胃炎の話をしたでしょう。
胃の粘膜が薄くなって、胃酸の分泌が減る、という」

圭さん
「はい、覚えています」

益子先生
「胃はね、入ってきたものを体温で温めながら消化する器官なの。
胃酸はその分解を担っているのよ」

益子先生
「萎縮性胃炎があると、胃酸が減るだけでなく、胃全体の働きが落ちてしまう。
胃が冷えの刺激をうまく受け止められないため、神経反射がより強く起きやすくなるの。
つまり、冷えで腸が過剰に動きやすい状態になっているのよ」

圭さん
「萎縮性胃炎が、冷えへの弱さにもつながっていたんですね」

益子先生
「体はひとつながりだから。
胃の働きが落ちると、冷えの刺激が腸にまで波及しやすくなるのよ」


● 東洋医学の視点──「寒邪が脾を傷つける」

益子先生
「東洋医学では、この冷えと下痢の関係を、ずっと昔から見てきたのよ」

圭さん
「どう説明するんですか」

益子先生
「消化を司る『脾胃』は、温かく動いてこそ力を発揮するの。
その温かく動かす力を『脾陽(ひよう)』というの。
冷えが体に入ると、この脾陽が傷ついてしまう。
東洋医学では『寒邪(かんじゃ)が脾を傷つける』と表現するのよ」

今回の症状を東洋医学から整理するとこうなります。

  • 冷たい水で下痢になる:冷えという刺激そのものが脾陽を乱すから

  • アイスクリームが特にひどい:冷え(寒)に加え、水分(湿)の二重負担になるから。「脾は燥を好み、湿を嫌う」という性質があり、アイスはその両方に当たる

  • 食べすぎで下痢になる:脾胃の許容量を超えた量を処理しきれず、未消化のまま通過させてしまうから

益子先生(少しおかしそうに)
「アイスクリームは、脾にとって最大の試練なのよ」

圭さん
「……言われてみれば」


■ 日常生活に当てはめてみると

圭さん
「そう聞くと、アイスが食べられなくなったのも、
体が正直に反応しているだけで、
病気というわけではないんですね」

益子先生
「そうなの。ただ、体が変わってきたというサインではあるのよ。
20代の消化力がそのまま続くわけではないから、
少し付き合い方を変えていくといいのよ」

圭さん
「完全にやめなくていいんですか」

益子先生
「量と温度と、食べるタイミングを工夫すれば、
少しなら楽しめることもあるのよ。
ごくゆっくり食べて、少しだったら大丈夫、
というのはもう実践しているでしょう?
それでいいのよ」

圭さん
「少しずつなら大丈夫、というのは自然にやっていました」

益子先生
「体が教えてくれた知恵ね。
それをちゃんと聞けているじゃない」


■ 今日のテーマを一言でまとめると

「脾胃は、温めてゆっくり使うのが好きなのよ」


■ 今日からできる"ひとつの養生"

● 脾胃を温める食べ方・飲み方

益子先生
「冷たいものと脾胃の関係がわかったら、
養生もシンプルなのよ」

今日からできること。

  1. 冷たい飲み物は、少量ずつゆっくり飲む(一口ごとに口の中で温める気持ちで)

  2. 食事は腹八分目を意識する(脾胃に処理できる余白を残す)

  3. 食事の前後に、温かいもの(白湯・スープ・お茶)をひと口加える

益子先生
「アイスを完全にやめなくてもいいの。
ただ、『脾胃に相談してから食べる』くらいの気持ちで、
量と温度を少し気にしてみるだけで変わってくるはずよ」


■ 話の終わりに

圭さん
「加齢のせいにしていたけれど……
脾胃の変化として理解するほうが、
どうすればいいかが見えてくるんですね」

益子先生
「そう。『老いて弱くなった』と思うと、
なんとなく諦める気持ちになってしまうでしょう。
でも、『脾胃がこう言っている』と思えば、
それに応える養生ができる」

圭さん
「体の声を、もう少し細かく聞けるようになってきた気がします」

益子先生
「それで十分よ。
体は、聞いてくれる人には、
ちゃんと答えを返してくれるから」

そう言って、先生は温かいお茶を、
そっと圭さんの前に置きました。

益子先生(やさしく)
「ただ、症状がひどく続いたり、血が混じるようなことがあったら、
遠慮なく専門の先生に診てもらってね。
体からの声が大きくなったときは、
きちんと受け止めないといけないから」


「一日ひとつでいいの。小さな養生を続けましょ。」



続く


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最後に
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