【4/30(木)まで】春の星々(140字小説コンテスト2025)春の文字で作った選考委員の作品を紹介します!
「季節の星々」は季節ごとの課題の文字を使ったコンテストです(春・夏・秋・冬の年4回開催)。
春の文字 「布」
選考 ほしおさなえ 季節の星々選考委員会
応募期間 2026年4月1日(水) 0:00 〜 2026年4月30日(木) 23:59
作品数 ひとり3編まで
年間グランプリ(2022年度までは「星々大賞」)の受賞者(へいた/のび。/石森みさお/kikko/酒部朔日/祥寺真帆)と星々の140字小説担当の四葩ナヲコで結成する7名の「季節の星々選考委員会」のうち、各回4名が持ち回りで選考を受け持ちます。
選考委員も作品を執筆しました。
春の課題文字「布」を使った作品をお楽しみください!
ツアー客が工房をのぞきこむ。「一枚の布からドレスが出来上がり、それが誰かの特別な一日を作るのです」オーナーの言葉を通訳すると、見事ねえと年配の女性がつぶやく。「ビジューを縫いつけるこの職人は、戦火を逃れてこの街に来ました」みな神妙にうなずく。時間だ。現地語で礼を言い、次へ向かう。
ある日。ワニ革の財布を、アマゾンの濁流へ放しに出かけた。里帰りだ。流れの速い、茶色い水面に触れた瞬間、型押しされた鱗は本物の硬度を取り戻し、猛烈な命の躍動が私の指先を弾いた。疾走する背中を見送る。財布は振り返らなかったが、私の掌には、野生のしびれだけがいつまでも熱く、残っていた。
犬のことを考える。小麦色の背中。白い腹と足。抱くとお日様のにおい。山遊びの帰りに大声で呼ぶ。砲弾みたいに一直線にかけてくる。埋めるとき毛布にくるんだ。小学生の頃。土に直じゃなくて良かったと思った。「おおい」泣きたい夜に呼ぶ。足音を思う。私の犬がかけてくる。愚かしいほど真っ直ぐに。
ずっと欲しかった人形を手に入れ、母にねだって作ってもらったのは小さな布団だった。彼女の西洋風の目鼻立ちにおよそ似合わない古風な牡丹柄の布団。彼女がいつ眠るのか、わたしは心配でたまらなかった。隣に寝そべって耳をすます。星を宿した両の目は開いたままだが、微かな寝息が聞こえた気がした。
壁のひび割れを覗く。庭には犬がいる。泥のような毛布で満足している。僕と行こう。散歩に行こう。林檎を分けよう。いい枝を探そう。ある日、飼い主が施設に入ると聞いた。月が明るい夜に、堂々と壁を越えた。犬は僕を見ても尻尾を振って笑っている。鎖は緩かった。君は大好きなんだね、夜風すらも。
「春の星々」は4月30日(木)までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、過去の受賞作などは以下のリンクをご覧ください。)
受賞作の速報はnoteやX(旧Twitter)でお伝えします。
優秀作(入選〜2次選考通過の作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。
また、年間グランプリ受賞者は「星々の新人」としてデビューし、以降、雑誌「星々」に作品が掲載されます。
ご応募お待ちしております!
