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自由な人ばっかり好きになってしまう。―― 金星てんびん座と、痛い恋の話【前編】

わたしね、
「ちゃんと捕まらへん人」ばっかり好きになってた時期があって。

約束せえへん、予定立てへん。
なのに会ったときだけ、やたら映画みたいな時間をくれる人。

そのたびに、「もうやめとき」って自分にも友だちにも言われて、
うんざりするくらい分かってたはずやのに、
それでも、同じようなタイプにばっかり、ときめいてしまう。

ある夜、ずっと「仕事用」にしてたホロスコープを、
ちゃんと自分の恋に向けて開いてみたら、
そこに出てたのは、
わたしの金星てんびん座1ハウスと、
水瓶座5ハウスのネプチューン&天王星

「そらそうやん」としか言えん配置やった。

今日は、その中でもいちばん痛かった、
ひとつの恋の話をするね。


第1章 映画みたいな入り方をしてくる人

あの人と初めて会ったのは、
平日の夜、終電ちょい前の小さなバーやった。

仕事の延長で連れていかれた、
ちょっとこじゃれた、でも気取ってない店。
カウンターの木が少しだけ擦り減ってて、
バーテンダーさんがグラスを拭く音だけが静かに響いてるような、
そういう場所。

「こっち、空いてますよ」

そう言われて振り向いたら、
ハイボール片手に座ってたのが、彼やった。

シャツのボタンちょっと開けすぎやろってくらいラフで、
腕まくりした手首に、細いブレスレットが光ってる。
髪は少し伸びかけで、
ちゃんと整えてるのか、無造作なのか分からんくらい絶妙なライン。

正直、第一印象はひとことで言うと、

「あ、この人、絶対ちゃんとしてへんタイプやわ」

やった。

でも、目だけは、ちゃんとまっすぐで。
話しかけられた瞬間に、
そこだけ、照明がひとつ足されたみたいに明るく見える人やった。

「さっきの会話、ちょっと聞こえてきたんですけど。
 その本、好きなんですか?」

わたしがテーブルに置いてた本のタイトルを、
さりげなく拾ってくる。

いかにも、水瓶座っぽい。
興味の矢印が、ふとしたところにすっと伸びる。

そのときのわたしは、
自分のホロに金星てんびん座1ハウスが鎮座してるなんて、
ちゃんと意識してなかったから、

「わ、話の入り方、きれいやな…」

って、それだけでちょっと心のガードを下ろしてしまった。

てんびん座の金星って、
ほんま「絵になる会話」に弱い。

「どこから来はったんですか?」じゃなくて、
本のタイトルから入ってくる感じとか、
ちょっとした言葉の選び方とか、
その場の空気の整え方とか。

わたしにとっての「好き」は、
だいたい最初の一往復で決まってまうところがあって、
あの夜も、やっぱりそうやった。

「それ、わたしも好きなんです」

って、少しだけ声が上ずった自分の反応に、
自分で気づいてしまった時点で、もう遅かったんやと思う。

第2章 関係の名前を決めないまま、深くなる

それから何回か、同じバーで顔を合わせた。

彼は常連というほどでもないけど、
「たまにふらっと来る人」で、
わたしもまた、「たまにふらっと寄ってしまう人」になっていった。

「また会いましたね」
「ここ、意外と狭い世界なんですね」

そんな、ドラマの台詞みたいなことを平気で言う。

普段ならちょっと冷めた目で突っ込むところやのに、
そのときのわたしは、
水瓶座5ハウスのネプチューンが大はしゃぎしてたんやと思う。

「あ、これ、物語始まるやつや。」

って。

彼は、予定をほとんど決めへん人やった。

「来週、またここで飲みませんか?」
みたいな約束は、してくれない。

代わりに、
ふとした夜に、メッセージが飛んでくる。

『もし起きてたら、今から一杯どうですか』

時計を見たら、22時半。
明日も仕事。
行かんほうがいいって分かってる。

でも、てんびん座の金星1ハウスは、

「今行ったら、今日も“特別な夜”になるかもしれへん」

って、すぐに天秤を傾けてしまう。

ちゃんとした恋人みたいに、
記念日や予定を積み上げていく関係じゃなかった。

でも、会うたびに、
その夜だけはしっかり照明が当たる。

  • 仕事の愚痴を、茶化しながらちゃんと聞いてくれる

  • グラスの空き具合をさりげなく見てて、「次どうする?」って聞いてくれる

  • 帰り道、タクシーが捕まるまで一緒に並んでくれるくせに、連絡先は聞いてこない

そんな絶妙な距離感。

こっちから「LINE交換しよ」って言ったら、
あっさりとIDを教えてくれるくせに、

『また会えたら、ラッキーですね』

みたいなことを、笑って言う。

そのたびに、
わたしの中のてんびん金星は、
「このバランス、崩したくない」と思ってしまう。

だって、
関係の名前を決めてしまった瞬間に、
この映画みたいな夜の魔法が解けてしまいそうやったから。

ほんとは、ちゃんと聞きたかった。

「わたしたちって、何なん?」

って。

でも、いて座の月3ハウスは、
それを冗談にまぜてしまうのが得意で。

「なんかさ、これって、
“バーでたまに会う知り合い以上、
友だち未満、恋人未満、何やろね?”」

って笑いながら言って、
本音を煙に巻いてしまう。

彼は、少しだけ考えるふりをして、
ハイボールをひと口飲んでから、こう言った。

「りりすさんが、名前つけたいタイミングでいいですよ」

それを聞いたとき、
胸の奥のどこかが、きゅっとした。

嬉しいような、
ちょっとズルいような、
でもやっぱり嬉しいような。

ネプチューン水瓶5ハウスが描く恋って、
だいたいこういうふうに始まるんやと思う。

ちゃんとした約束はくれへん。
でも、物語みたいな台詞だけは、やたらくれる。

そしてわたしは、
その台詞たちを、全部、自分の中で勝手に伏線にしていってしまう。

「名前は、いつか決めたらいい」って言われた瞬間から、
そのいつかに向かって、
どんどん自分の気持ちの方だけが進んでいく。

相手が、どこまで一緒に歩いてくれてるかも分からんままに。

――
この時点で、
もうすでに、だいぶ痛い恋の入口に立ってたんやけど、
当時のわたしは、まだそれに気づいてへんかった。

ただひたすら、
「絵になる二人」でいられる夜に、
自分ごと酔ってただけやった。

第3章 待つ恋で、少しずつ削れていくわたし

彼と会うペースは、最初からバラバラやった。

3日続けてメッセージが来るときもあれば、
2週間まるっと何もないときもある。

こっちが送ったLINEは、
既読がつくまでの時間も、返事が来るまでの時間も、ほんまバラバラで。

『おつかれさまです』
『この前の本、読み終わりました?』

そうやって送ったメッセージが、
1時間で返ってくる日もあれば、
2日後に、なに食わぬ顔で返ってくる日もある。

『あ、ごめん、バタバタしてて見逃してました』

その一言で、
待ってた時間ごと、なかったことにされる感じがして、
ちょっとだけ胸がチクッとする。

でも、てんびん座の金星は、
すぐにこう言い訳する。

「忙しいんやから、しゃあないよな」
「わたしも、たまたま今ヒマやっただけやし」

それでも、
スマホの画面を何回もスワイプしてしまう指だけは、
正直やった。

待ち合わせの日も、だいたいこんな感じ。

『ごめん、ちょっとだけ遅れそうです』

仕事が押している。
電車を乗り過ごした。
トラブルがあった。

言い訳はいつも「ちゃんとしてる風」やのに、
トータルで見たら、
「だいたい遅れてくる人」やった。

バーの角の席で、
ひとりでグラスを回しながら待ってる時間が、
少しずつ長くなっていく。

最初のうちは、
「この時間も含めて物語やから」って自分に言い聞かせてた。

映画のヒロインやったら、
こういうシーン絶対あるよな、みたいな。

でも、
10回目の遅刻あたりから、
だんだん笑われへんくなってくる。

「またか…」って思っても、
「もうええわ」って言えへん。

それが、ネプチューン5ハウスに酔ってる状態なんやろなって、
今なら分かる。

会ってしまえば、
またぜんぶ「特別な夜」に戻ってしまうから。

目の前で笑う彼は、
ほんまに魅力的で、
会話もおもしろくて、
さりげなくグラスを空けてくれる手元も、
ずるいくらい「絵になる」。

てんびん座の金星1ハウスは、
その絵の美しさごと、自分の価値みたいに感じてまう。

「こんな人と、こんな夜を過ごしてるわたし」っていう事実が、
少しだけ、自分を救ってくれる気がしてた。

その裏で、
太陽さそり座2ハウスは、
ずっと小さく唸ってたんやと思う。

「わたしほんまに、この扱いでええん?」って。

でもその声は、
ハイボールと彼の笑顔で、
いつも上書きされてしまってた。


その小さな唸り声を聞こえんふりしたまま、
わたしはもう少しだけ、この恋を続けることになる。

――この続きを、わたしはある夜、
ずっと「仕事用」にしてきたホロスコープの上に
そっと乗せて観ることになる。

【後編】につづく

——ほしのりりす

【後編】は、3/9 20:30公開予定です


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ほしのりりす🌙🌑感じるよるの占星術 読み終えて、なにかが残ってしまったなら── その余韻を、そっと返してもらえると、うれしいです。 わたしはまた、ひらいて書ける気がします。