「この薬で、どれくらい良くなりますか?」と先生に聞いてみる─親の病気が「治る」のか「付き合っていく」のかを、先生と認識をそろえる質問【親の薬×ひと言フレーズ②】
こんな経験、ありませんか?
70代を過ぎて、高血圧やコレステロール、血糖の薬が少しずつ増えてきた親世代では、とくに起こりやすい“ざわつき”です。
親が新しい薬をもらってきたとき、家族の頭のどこかに「これを飲めば良くなるんだろう」という期待がある。
でも、しばらく経っても劇的に変わった感じがしない。
「効いてないんじゃないの?」「病院変えたほうがいいんじゃない?」と、家族の中がざわつき始める。
実はこのざわつきの多くは、「うまくいっている」の意味が、先生と家族でズレていることから起きています。
なぜ、この1問が大事なのか
「うまくいっている」には、大きく分けて3つのパターンがあります。
治る
薬を飲んで、病気そのものがなくなる。風邪や一部の感染症のイメージです。数値が落ち着く
病気はなくならないけれど、血圧や血糖値、コレステロールなどが「安全な範囲」に収まる。悪くなるスピードを遅らせる
今より良くはならないけれど、これ以上急激に悪くならないように守る。腎臓や神経の病気などに多いパターンです。

先生が「うまくいっていますよ」と言うとき、家族は「治ってきている」と受け取りがちです。
でも先生の頭の中は、「数値が安定している」や「進行が止まっている」かもしれません。
この“ゴールのズレ”に気づかないまま過ごすと、「全然良くならない」「薬が合ってないんじゃないか」という不信感がじわじわ溜まっていきます。
実は、この質問がいちばん大事なのは「家族」のほう
本人は、毎日の体調の中でなんとなく折り合いをつけていきます。
でも家族は違います。
「良くなっているのか、なっていないのか」が分からないまま、通院の付き添い、薬の管理、生活のサポートを続けることになる。
ゴールが見えない介護は、家族をじわじわ疲弊させます。
「この先どこまで悪くなるのか」「どこまで頑張ればいいのか」が分からないまま、日々を回していくことになるからです。
「治るのか、付き合っていくのか」──この見通しがあるだけで、家族の心の持ちようはまるで変わります。
「完治は難しいけれど、今の状態を維持することが目標なんだ」と分かっていれば、
「全然良くならない、私の関わり方が悪いのかな」という自責の念から抜け出せます。
でも、この情報は待っていても出てきません。
先生は本人に向かって話しますし、本人も「先生にお任せしてるから」で済ませてしまうことが多い。典型的な70代から80代の親の世代はこの考え方になりがちです。
家族のほうから「どこを目指していますか?」と聞きにいかないと、家族が必要としている“見通し”は手に入らないのです。
だから、この1問は家族こそが聞くべき質問です。
診察室での聞き方
このセリフは、そのまま使える“コピペ用テンプレ”です。
この薬で、どれくらい良くなりますか?
治ることを目指していますか?
それとも、今の状態を安定させるイメージですか?
まずは、一番上の一文だけでも十分です。
診察の待ち時間に、この2〜3行だけをスマホのメモで見返してから入るだけでも、聞きやすさが変わります。
この聞き方だと、先生も答えやすくなります。
「治す」と「安定させる」と「進行を遅らせる」のどれを目指しているのかが、一言で返ってきやすいです。
先生の答えが、思っていたのと違ったら
家族としては「治る」を期待していたのに、先生から
「この病気は完全には治らないけれど、悪化のスピードをゆっくりにしていくお薬です」
と言われることがあります。
そのとき、がっかりするのは自然なことです。
けれども「期待していたゴールと違っていたんだな」と気づくこと自体が、一歩前進です。
ここでもう一歩だけ聞いておくと、気持ちの整理がしやすくなるのです。
「うまくいっている場合、日常生活はどのくらいのことができそうですか?」
「治る・治らない」ではなく、「親がどんな暮らしを送れるか」が見えてくると、家族の受け止め方が変わります。
「完治はしないけど、自分でスーパーに行けるくらいは維持できる」と分かれば、それだけで安心材料になります。
答え別の受け止め方
「治りますよ」と言われたら
どのくらいの期間で治る見込みか、聞いておく。
「治ったらこの薬はやめてもいいですか?」も確認しておくと安心。
「完全には治らないけれど、コントロールしていく病気です」と言われたら
がっかりしても大丈夫。まずは「どういう状態を“うまくいっている”と考えればいいか」を聞く。
家族の中で「うちの親の“良い状態”はこういうことなんだな」という共通イメージを持っておく。
「悪化を遅らせるための薬です」と言われたら
良くならないことにがっかりしやすいけれど、「悪化を遅らせる」は立派な成果。
「悪くなっているサインはどこに出ますか?」を聞いておくと、家族が日常で見守るポイントが明確になる。
今日のひと言メモ
診察室でスマホや手帳にメモするなら、こんな形が使いやすいです。
薬の名前:________
先生のゴール:
□ 治る
□ 安定させる
□ 悪化を遅らせる
うまくいったときの暮らしのイメージ:
(例:自分でスーパーに行ける/家の中なら一人で動ける など)この1問で変わること
「どれくらい良くなるか」を最初に聞いておくだけで、
「全然良くならない」というモヤモヤが、「今は“安定”を目指す段階なんだな」という理解に変わります。
そしてそれは、本人以上に、支えている家族の気持ちを楽にしてくれます。
「見通し」が持てるだけで、毎日の関わりに「これでいいんだ」という手ごたえが生まれます。
最後に、自分の経験から。
私も自分の母親の物忘れが多くなって付き添い受診した時に、とっさに上記の内容について質問すらできませんでした。
もう一度受診に同席し先生から話を聞きだせた時には、この先の事を考えて愕然とした記憶があります。ただ、その後頭が整理されて妹や妻とも話し、この問題に家族として向き合えるようになりました。
本記事はその時の経験を元に書いたものです。心の準備をして質問するだけで『受け止め方』や『見通し』がかなり変わるはずなのです。
また皆様の親御さんも皆様自身も年を重ね、この先どうなるんだろうと、暗くなる必要は全くありません。与えられた時間は、どこかの国の大統領も我々庶民も一緒です。その時間を有効に使い、診察時に質問へと一歩踏み出すことで、明日も笑顔でいられます。
さらには、最初から完璧に質問できる人なんて誰もいません。もしそれができるならあなたはお医者さんのはずです。先生も最初は怪訝(けげん)な顔をするかもしれません。でも、あなたの意図が分かればきちんと説明してくれるはずです。
親の薬や病気に悩むご家族の方のご参考になれば幸いです。
取り止めもない文章を読んでいただきありがとうございました。この後も懲りずに更新して行きます☺️
【親記事はこちら】
親の薬と医療の「質問ノート」総論(リンク)
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免責・お願い
このノートに書かれている内容は、あくまで「先生や薬剤師に質問しやすくするためのヒント」です。ここに書かれていることだけで薬を中止したり、自己判断で増減することはおすすめできません。
「気になることが出てきたときに、こう聞いてみようかな」と考えるきっかけとして使っていただき、最終的な判断は、必ず担当の医師・薬剤師と相談して決めてください。
(「親の薬の質問ノートマガジン」第2問)
📖 このシリーズの全記事一覧はこちら → https://healthcare-arukikata.com/healtharuki-blog/series23/
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