【File No. 010】 B2F・静寂の侵食
B1Fから降りてきた旅人を迎えるのは、完全な暗闇……ではない。 だが、それを「照明」と呼ぶには、あまりに冷たく、あまりに頼りない。
通路の各所に、古い真鍮製のランタンが吊るされている。 しかし、その中に灯っているのは「火」ではない。 まるで捕らえられた燐光の蝶か、あるいは誰かの使い古された感情が、青白く、弱々しく明滅しているだけだ。
その光は周囲を照らし出すほど強くはなく、ただ、ランタンの周り数センチだけをぼんやりと浮き上がらせている。その光に照らされた壁の一部には、王の手によって「書き換えられた過去の残骸」が、まるで剥製のように張り付いているのが見える。
足元を照らす光はない。 旅人は、その点々と連なる「青白い点」を道標に、暗闇の感触を肌で確かめながら進むしかないのだ。
「……変な感じだろうぉ? ランタンはあるのに、ちっとも明るくないんだぁ……。 ここはね、くだちいが『見せたいもの』しか見えないようになっているんだよぉ♪」
闇の奥から、何かが笑う声が聞こえてきた。 ここは、視覚ではなく「意識」で歩く階層なのだ。
あなたは…….
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