星を磨く仕事/ショートショート
日が昇る少し前、バケツを持って担当区域へと向かいます。バケツの中には澄んだ水。天の川で汲んできました。東の空がゆっくりと明るくなり、太陽がすっかり顔を出したら僕のお仕事が始まる時間です。
僕は星を磨く仕事をしています。全天のうち、東の8-Dブロックが僕の担当区域です。
一晩中空で瞬き続けた星は、空気中のほこりなどでくすんでしまいます。それを磨いて綺麗にすることが僕の仕事です。
仕事内容は単純ですが、星をひとつひとつ綺麗にするのは簡単ではありません。ほこりはシルクの布でサッと拭けば落とせるのですが、空気中に漂う化学物質や、車などの排気ガスの汚れを落とすのは大変です。
その汚れは、天の川の水で濡らしたガーゼで拭いても落とせません。力を込めて磨いたり、ケイローン博士が開発した星磨きの薬水を使ったりする必要があります。
「昔はそんな汚れはなかったんだけどねぇ」と言ったのは、星磨きの仕事を引退したおじい様でした。
太陽が出ている時間が短い冬は大忙しです。星磨きは星が隠れている昼間にすべて終わらせなければいけませんから。
僕もこの仕事を始めて3年目。去年までは同期と二人一組で一つのブロックを担当していましたが、今年から担当区域を一人で任せてもらえるようになりました。
もちろん、一人前になったというわけではありません。僕の担当区域は先輩方と比べるととても狭く、仕事の後に検査員さんのチェックも必須です。
ですが、やっと「星磨きの仕事をしています」と胸を張って言えるようになりました。去年までは、まだ見習いの域を出ないような感じでしたから。
さて、今日も仕事が始まります。バケツいっぱいに入った天の川の水に綿のガーゼを浸します。ぎゅっと絞って、任されたブロックの端から順番に磨いていきます。
星はひとつひとつ形が違います。つるんと丸いもの、とげとげと尖がっているもの、歪にでこぼこしているもの。どれもを隅々まで、綺麗に磨き上げます。丁寧に、根気よく。でも、スピーディに。
一生懸命に磨いた星は、曇りのない輝きを取り戻しました。くるくると星の全体を見まわして、うん、よし。これは完璧。
きらきらと眩しく瞬く星を見ると、思わず頬が緩みます。ああ、この瞬間のために星磨きの仕事をしているんだ、と。
一日も早く誇り高き一人前の星磨きになれるよう、ひとつひとつ丹精込めて磨いていきます。
今日も、明日も、ずっと。
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