なぜ助言は届かないのか|届く人と届かない人の違い
昔から、PM(プロジェクトマネージャー)の補佐をしてほしいと言われることが多い。
対象はだいたい決まっている。
若手のPM、新規案件、そして炎上中のプロジェクトだ。
チームに入ると、
よく「気づいたことがあればどんどん言ってください」と言われる。
ただ、自分はいつも助言するとは限らない。
むしろ、何も言わないことの方が多いかもしれない。
それは怠慢ではなく、相手を見て決めている。
人には「助言が効かないタイミング」がある
これまで多くの現場を見てきて、はっきり分かれているものがある。
それは能力ではなく、「助言が届く状態にあるかどうか」だ。
人は、正しいことを言われても変わらない。
その人が“理解できる状態”になったときにしか、言葉は意味を持たない。
そして、その状態にいない人に対して、いくら正しいことを言っても届かない。
失敗するまで理解できない人
ひとつ目のタイプは、失敗するまで理解できない人だ。
事前に何度説明しても、伝わらない。
論理としては理解しているように見えても、行動が変わらない。
そして、同じパターンで失敗する。
こういう人に対しては、あえて何も言わないことがある。
失敗、あるいは破綻を経験して、初めて言葉の意味が立ち上がるからだ。
彼らにとって、言葉は未来ではなく「過去」にしか意味を持たない。
事前に伝えた助言も、失敗したあとにようやく理解される。
だから、その瞬間までは、何も届かない。
小さな異常に向き合い続ける人
もうひとつは、対照的なタイプだ。
小さな違和感に気づき、自分で考え、必要以上に抱え込む人たち。
彼らは優秀だが、同時に苦しみやすい。
問題は、向き合う対象とその配分を間違えることが多い点にある。
すべてを同じ重さで受け止めてしまい、消耗していく。
このタイプに対しては、細かく指示を出すことはしない。
違う視点の置き方や、優先順位のヒントだけを渡す。
それ以上は、無粋に感じるからだ。
彼らは自分で考えられる。
だからこそ、考える余白を奪わない方がいい。
人は「理解できない情報」を別の形で処理する
助言が届かないとき、人はそれを無視しているわけではない。
処理の仕方が違うだけだ。
ある人は、答えをもらうことで安心してしまう。
ある人は、言葉の意味を自分の経験に結びつけられない。
ある人は、キーワードだけを拾って、分かった気になる。
いずれも共通しているのは、
言葉が行動に変換されていないことだ。
理解とは、言葉を知ることではなく、
次の行動が変わることだ。
そこまで到達していなければ、どれだけ正しい助言でも意味はない。
だから「早すぎる助言」は効かない
助言には、内容だけでなく「タイミング」がある。
早すぎる助言は、ほとんどの場合機能しない。
むしろ、
不安を消すための材料になったり
分かった気になるための道具になったり
言葉だけが増えていくだけになる
そして、行動は変わらない。
だから、自分はあえて黙ることがある。
その人が、言葉を受け取れる状態になるまで待つ。
正しさだけでは、プロジェクトは守れない
ここまでやっても、プロジェクトは普通に炎上する。
正しい判断をしていても、負けるときは負ける。
構造として、避けられない失敗がある。
誰か一人の問題ではない。
全体の流れとして崩れていくことがある。
それでも、そこにいる人たちは現場に残る。
それでも、付き合う理由
自分がやっていることは、助けることではないのかもしれない。
人を変えることはできないし、プロジェクトの結果もコントロールできない。
それでも、その場にいる。
失敗すると分かっていても、
本人に非がないと分かっていても、
敗戦処理の筋道が立つまで、付き合うようにしている。
そのときに初めて、言葉が届くことがあるからだ。
