三月に入り、天ぷら屋の売り上げがドーンと跳ね上がった。そのわけは?!
タイトル: < 天ぷらに願いをかけて >
三月。
全国の天ぷら屋がざわついていた。
「おかしいんだよ。三月に入った途端、売り上げがドーンと
跳ね上がるんだ」
と、ある店主は言う。
農林水産省の統計でも、天ぷらの売れ行きは例年の倍以上。
理由を問い合わせても、返ってくるのは「不明」の二文字。
役所の担当者も「こっちが知りたいくらいですよ」と
肩をすくめる始末だった。
世間では推理合戦が始まった。
「花見の先取りだろう」
「送別会シーズンだからじゃないか」
しかし、どれもピンとこない。
そんな中、ひとつだけ妙な共通点が見つかった。
大学の近くにある天ぷら屋だけ、売り上げが異常に伸びているのだ。
調査員が とある大学近くの店を訪ねると、店内は学生でぎゅうぎゅう。
しかも全員、真剣な眼差しで主人の揚げるエビ天を見つめている。
「……あの、何をしてるんですか?」
調査員が恐る恐る尋ねると、学生の一人が振り返った。
「進級祈願です」
「え、天ぷらで?」
「だって、『揚がる』は『上がる』ですよ。縁起いいじゃないですか」
「教授の機嫌も上がれ」
ついでに
「俺の単位も上がれ」ってね。
「それに天ぷらって、最初は沈んでるのに最後は浮いてくるでしょう?」
店主が苦笑しながら補足する。
「三月はね、学生さんが天ぷらに願掛けしに来るんですよ。うちなんて
今じゃ『特上進級セット』が一番人気です」
調査員はメモを取りながらつぶやいた。
「なるほど……。そりゃ統計にも出るわけだ」
こうして、三月の天ぷら急増現象の謎は解けた。
学生たちの切実な祈りが、今日も油の中から、
ふわりと浮き揚がっていた。 \(^^)/
ー 終り ー ご高覧ありがとうございました。
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