アンドリュー・ワイエス展|東京都美術館|#1「境界に立つとき」
アンドリュー・ワイエスの《海からの風》を最初に観たのは、友人Mさんの新築祝いで訪れたリビングの東壁の壁にかけられたポスターだった。部屋に入ったとたん目に飛び込んできたその絵は新調された調度品の新しさゆえのよそよそしさをふき去ってくれた。絵にしばし目を奪われる――そんな経験をしてから、アンドリュー・ワイエス展には出来るだけ足を運ぶようにしている。

特に今回の東京都美術館のアンドリュー・ワイエス展では
《オルソンの家》(1966年水彩、71.0×48.8cm)を見られると知りとても楽しみだった。
独特なグレー、影の美しい濃さ、紙の微かな凸凹。
描いているワイエス氏のそばで同じ空間にいるような錯覚を覚えるような包容力。
言葉を失いただ見ることだけで全てのワイエスの絵。
今回は多くの鉛筆やインクによる習作も展示されており、彼の表現への真摯な向き合い方まで伝わってくるようだった。
展覧会のキャッチフレーズは「境界に立つとき、心が動き出す」だが、ワイエスは旅先の珍しい風景や娯楽を追うのではなく、身近な暮らしにあるものをモチーフとしている。
樽・袋・計量器・扉・窓・風・光――猫の餌の器

作品名にある猫たちは、例によってその姿は描かれず、餌の入れ物だけを画くことで表しています。その猫たちは家のなかではなく、納屋に出没するねずみを退治するために外で飼われていました。
その深い眼差しで、失われた時までも生を帯びてくる。《海からの風》のポスターの掛かっていたあの家の主は亡くなり、家も売却されてしまった。けれど、あのポスターは、今も4人のお子さんの内の誰かの家の壁に飾られているのだろう。ふとそんなことが頭をよぎった。
📷 会場で撮影・SNS投稿が許可されていた作品を掲載。
🏛️展示情報
🖼️アンドリュー・ワイエス展
会期:2026年4月28日~ 7月5日
会場:東京都美術館 企画展示室
