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【問題提起】なぜあの人は動じないのか?──在宅医療で“思考を止めない人”がしていること

この記事はどんな人向けか、どう役立つか

本記事は、訪問看護・訪問リハビリ・在宅ケアマネジメント・在宅医療事務などに従事するすべての医療・介護職の方、または現場での判断力・応用力に課題を感じている方に向けて書かれています。
急変対応、家族対応、予想外の出来事…あらゆる“想定外”が日常である在宅医療の現場において、動じずに「考え続けられる人」とはどんな思考習慣を持っているのか?その秘訣を、構造的に、そして具体的に紐解きます。


頭が真っ白になるあの瞬間、どうしていますか?

ある夜、訪問先から帰る途中、緊急電話が入った。
「息してないかも、どうすれば…?」

いつもなら冷静に対応できるはずなのに、そのときの私は一瞬、完全に思考が止まった。
何をどう返したらいいか、浮かばない。
深呼吸し、落ち着いて言葉を探すまでに30秒。
でもその30秒が、ものすごく長く感じた。

在宅医療では、“一瞬の判断”が求められる場面が何度もある。
そして思考が止まった瞬間、自分が「現場に取り残された」ような気持ちになる。


思考停止は誰にでも起こる“自然な反応”

「何をすればいいか分からなくなった」
「目の前の情報が入ってこなかった」
「正解がないと分かっているけど、動けなかった」

こうした言葉は、新人だけでなく、ベテランのスタッフからも聞かれるものです。

2023年、厚生労働省の調査によると、訪問看護師・訪問リハビリ職のうち、
68.7%が“過去1年以内に、対応に困り思考が停止した経験がある”と回答しています。

原因はさまざまです。

  • 情報過多による脳の処理機能の一時停止

  • 判断ミスへの恐怖や責任の重さ

  • 感情の揺さぶり(家族の怒り、涙、パニック)

  • 状況が複雑すぎて、次の一手が浮かばない

特に在宅医療は「マニュアル通りにいかない」状況の連続であるため、思考停止のリスクが高い職場なのです。


「考えろ」では人は考えられない

「もっと考えて行動して」
「自分の頭で判断してほしい」
これは上司から若手に投げかけられる常套句ですが、実はこれ自体が“構造の罠”です。

なぜなら、

  • 思考とは、知識や経験が“土台”になって初めて動き出すもの

  • 頭の中に「比較対象」や「引き出し」がなければ、思考は回らない

  • 焦りやプレッシャーが高まるほど、脳は選択肢を閉じてしまう

つまり、「考える力」は個人の資質だけでなく、「情報の整理」「余白の確保」「支援的な環境」によって支えられているのです。


思考を止めない人がしている“5つの習慣”

では、なぜある人は、思考を止めずにいられるのでしょうか?
私が20年の現場経験で見てきた“考え続けられる人たち”には、共通する習慣があります。

1. 「状況」と「感情」を分けて捉える癖

例えば、「家族が怒っている」ときに、
思考停止する人は「私が責められている」と受け取り、焦る。
思考が止まらない人は「家族が不安なんだな」と“状況”としてとらえる。

これにより、自分の感情に引きずられず、冷静な判断を保てます。

2. 「問い直し」を習慣化している

  • 「今、何が分かっていて、何が分かっていない?」

  • 「他にどんな可能性があるか?」

  • 「自分が見落としている前提は?」

このように、“問い直し”の技術を持っている人は、情報に飲まれません。
これはまさに「考える力」のエンジンです。

3. 「とりあえずの仮決め」を恐れない

思考が止まる理由の一つが、「正解がわからないから動けない」です。

しかし、止まらない人はこう言います。
「まず仮の判断で動いて、違ったら修正すればいい」
この“試行錯誤前提の思考”こそが、在宅医療にフィットする判断様式なのです。

4. 「一人で考えない」ことを自分に許している

「現場に出たら自分で考えるべき」というプレッシャーが強い職場ほど、
人は追い詰められ、思考を閉じていきます。

一方で、思考を止めない人は、「このケースどう思う?」と気軽に同僚や医師、ケアマネに相談できる関係を持っています。
他者の視点は、思考を再起動する“外部エネルギー”です。

5. “考えたプロセス”を記録・振り返っている

判断に迷ったとき、どんな思考をしたか。
それをメモや日報に残している人ほど、次の現場での対応が早くなります。

記録=経験の再利用。
これは最も実践的な“思考資産の蓄積法”です。


思考が止まりかけたときに救われた一言

ある日、認知症の利用者が帰宅拒否を起こし、私は完全に対応に詰まっていた。
車椅子に乗せようとしても叫ばれ、家族もパニック。

電話で相談した先輩が、こう言った。
「今、できることをひとつずつ。完璧じゃなくていいよ」

その瞬間、私は「ああ、自分が全部をなんとかしようとしていたんだ」と気づき、
できることから順に切り分けて考えられるようになった。

“全体をなんとかしよう”という完璧主義は、思考を止める最大の敵なのだと、私はそのとき学んだ。


まとめ:思考を止めない人は「考える訓練」をしている

「考える力」とは才能ではなく、日々の訓練と環境で育つものです。

  • 焦ったときに「問い直す」

  • 悩んだときに「他者と話す」

  • 迷ったときに「仮決めして動く」

これらの習慣が、思考を止めない力を支えている。

私たちはミスを避けるために考えるのではなく、
“より良い支援”のために考え続けているのです。


あなたは今、思考を止めないために、どんな習慣を持っていますか?


参考・引用

  • 厚生労働省「訪問系サービスにおける判断負荷と支援体制に関する調査(2023)」

  • 日本医療心理学会「現場判断と感情処理に関する研究報告(2022)」

  • 経済産業省「職場における意思決定の習慣化に関する研究」

  • 日本認知行動療法学会「思考停止状態の心理的構造と脱出支援技法」

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