燧ヶ岳につづく ~木道~|尾瀬
深い霧の底で、ただじっと、
その時を待っていました。
今日が生まれる、
僅かな光に導かれて。
しばらくの間、僕が十勝(北海道)と同じように深く愛し、通い続けている「尾瀬」で出会った風景をお届けします。
霧の中
午前4時。
周囲は白い闇に包まれていました。
湿った空気が頬をなで、木道は夜露を吸ってしっとりと黒光りしています。
ファインダーを覗いても、今はまだ何も見えません。
けれど、それでいいのです。
見えないからこそ、耳は風の音を拾い、鼻は湿原の香りを嗅ぎ分けます。
この「待つ時間」が、感覚を研ぎ澄ますのです。
尾瀬ヶ原
標高約1,400メートルに広がるこの巨大な湿原は、何万年という歳月が作り上げた自然の奇跡です。
一歩足を踏み入れれば、どこまでも続く木道が、あなたを日常の向こう側へと連れ出してくれます。
ここは、ただ景色を撮る場所ではありません。
流れる雲を、揺れる草を、そして「光の変化」を全身で受け止めるための場所なのです。
燧ヶ岳が姿を現すとき
空がわずかに白み始めたその時でした。
重く垂れ込めていた霧が、まるで誰かに命じられたかのように、ゆっくりと、しかし確実に動き始めたのです。
霧のカーテンの向こう側から、尾瀬を包む二山の一つ、燧ヶ岳が、その重厚なシルエットをふわりと浮かび上がらせました。
「あぁ、会えた」
思わず独り言が漏れました。
目の前の木道が、まるで燧ヶ岳へと続く一本の梯子のようです。
「光の劇」に心を震わせ、シャッターをそっと押します。
霧が光を拡散させ、すべてを柔らかな絵画のように仕立ててくれる。
カメラは、その奇跡を記録するお手伝いをしてくれました。

さぁ、尾瀬へ
「こんな写真は撮れるだろうか」
もしあなたがそう思っているなら、答えはひとつです。
カメラを持って、その場所へ行ってみてください。
まずは、この朝霧の冷たさを、光が差し込む時の高揚感を、あなたのその指先で、記録してほしいのです。
尾瀬の木道は、いつでもあなたの最初の一歩を待っています。
さあ、次の休みの日、あなたはどこへ向かいますか?
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これまで1枚ずつご紹介してきた尾瀬のショートストーリー。
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尾瀬の美しい新緑と、そこにある変わらない奇跡を、あなたの元へ。
