パッケージデザインするときのデザイナーの頭の中-静岡 白瀧製茶 錦聖編-
こんにちは。アートディレクター・デザイナーの市角です。
普段はデザインや映像制作したり、
大学で准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインの考え方をビジネスに活かすワークショップを全国でやったりしています。
noteではデザイナーの頭の中シリーズを毎週火曜日、noteに書いています。
本日はパッケージデザインをする時のデザイナーの頭の中。
静岡の川根にある老舗、白瀧製茶さんの高級ライン、
「錦聖」をデザインしたときのお話です。


パッケージデザインは時間軸のデザイン
白瀧製茶さんとは何年も一緒に商品をつくってきました。信頼をいただいて、比較的自由にデザインさせてもらえるのは本当にありがたいことです。
さて、パッケージデザインって、他のグラフィックデザインとは大きく違う点があります。
それは──
「正解が時間とともに変わる」こと。
お店で最初に出会う瞬間と、家で毎日目にする日々では、
求められるデザインがまったく変わるのです。

お店で正解とされるデザインと、家の中で正解となるデザインの違い
パッケージにおいて最初に出会う瞬間は、まさに勝負の3秒。
目に留まらなければ、手にも取ってもらえません。
でも、家に持ち帰ったあと──
あの「目立つデザイン」が、どうしてかうるさく感じる。
部屋が“散らかって見える”のは、あのインパクト重視のデザインのせいだったりします。
家の中で「見て見て!」と主張するデザインたちが氾濫し安らぎの空間ではなくなってしまう。
これは、いわば「最初だけアピールしてくるけど、付き合ってみたら自己中心的な彼氏彼女」みたいなもの(笑)
買ったあとの愛着はそこにありません。
家の中でも長く使って愛されるデザインになってほしいから
川根のお茶は、静岡の中でもとりわけ格が高いとされるブランド。
この「錦聖」は、その中でも特に上質な贈答用ライン。
そんな商品のパッケージに求めたのは、
「買ったときの高揚感」だけじゃなく、
家で使うときにも“じわじわ良さが伝わる”こと。
大きなテーマを決めてからデザインする
パッケージがブランドのプロトタイプに
白瀧さんとのやり取りの中で決まった大きなテーマは「伝統と革新」。
これをブランディングの基本方針としました。
「錦聖」は白瀧製茶という老舗が、次の100年に向けて進化していく象徴になるパッケージです。
・モチーフには、明治期の海外輸出パッケージに見られるアール・ヌーヴォーの様式

・そこに花札のような和の感覚を融合させた“和風モダン”
・禅のミニマリズムも、現代的な静けさとして取り入れました
シリーズ化を見越した「共通パーツ設計」
このシリーズには「錦聖」のほかに、「聖峰」「銘匠」が続きます。

ただし以前は、色と名前だけ変えたような印象で、ちょっと選ぶ楽しさに欠けていました。
そこで今回は──
・名前
・色
・動物モチーフ
以外は共通デザインで統一し、シリーズ感を出しつつ、それぞれの個性もきちんと表現しました。

錦聖は最高ランクに位置するために絹や神職の方の衣装をおもわせる無垢な白と、鈍い輝きを放つ銀の特殊加工をすることで圧倒的な存在感を演出しています。
「命が宿る」パッケージを目指して

「今日はどの子にしようかな?」
お菓子を前に、そんなふうに言ったこと、ありますよね?
実はこれ、日本人に特有の“ものに魂を宿す”神道的な感覚。
外国人からは不思議に思われる感覚のようです。
※ポケモンも神道的な感覚から生まれたと感じています。この話はいずれまた。
だから僕は、今回のシリーズに目と鼻と口がある動物モチーフを入れることにしました。
命を感じるから、愛着がわく。そこに日本人らしさがあるんです。
「錦聖」には、神秘的な存在としての鹿を選びました。
“もののけ姫”のシシガミも鹿の姿でしたよね。
神話を紐解いても武甕槌命(たけみかづちのみこと)が、白い鹿に乗って奈良に降臨したとされていますね。
日本人にとって鹿はある種特別な存在です。


目の前の榊(サカキ)もその演出に一役買ってます
ジブリでは、シシガミの神性を表現するために「正面からの左右対称カット」を使っていました。
これ、実は宗教画などで使われる伝統的な手法。
自然界にほとんどない「完璧な左右対称」は、人に畏怖と神聖さを感じさせます。


僕のデザインでも、共通パーツに左右対称性を持たせつつ、全体はあえて崩しています。
商業デザインとしての柔らかさと、神性のバランスをとるためです。
仮にすべてが左右対称で鹿がまっすぐこちらを向いていたら、目を逸らしたくなるかもしれない笑
そこで安心して見られる客観的なポーズにしています。

メイン以外の要素は完全に左右対称。どちらか一方に文字情報も飾りもいれない。
そうすることで贈答品としての品格と、白瀧さんの格式を演出しています。
以上!パッケージを作る時のデザイナーの視点を紹介してみました。
「マーケティング」視点と「ブランディング」視点、そして日本人の文化特性に潜む「禅」と「神道」の感覚。これらを総合して一つのモノに結晶化させる。
一つのパッケージが生まれるまでの変遷を知っていただければ嬉しいです。
このあとのパッケージ、「聖峰」と「銘匠」がどうなるか?出来上がったらお見せしますね!
最後に:パッケージは「未来」から逆算するもの
パッケージデザインとは、単に「売れるものを作る」ことではありません。
ブランドの未来をどう見せるか。
日々の暮らしの中でどう感じてもらうか。
その先にクライアントとその顧客がどんな良い未来を作っていけるのかを逆算していくことが難しい所でもあり楽しい所です。
また、この記事を読んで「一緒に商品を形にしてみたい」と思ってくださった方がいれば、ぜひご連絡ください。
全国どこへでも飛んでいきます。一緒に、新しい挑戦を始めましょう。
こんな感じで毎週火曜日にデザイナーの頭の中シリーズ、書いています。
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