見出し画像

「魂のスカウト」が響かない…「AI vs AI時代」の採用、まだ「頑張り」だけで消耗していませんか?


↓同じ内容でAIによるポッドキャストもありますので、耳で聴きたい方はよろしければどうぞ!(多少、言い回しがおかしなところがありますが、ご了承を💦)

必死に考えたスカウトなのに、返信率は一向に上がらない…

いつも採用活動、本当にお疲れ様です。日々の業務に追われる中で、ふとこんな「徒労感」に襲われることはありませんか?

「候補者のレジュメを隅々まで読み込み、この人の経験のこの部分が、ウチのこのミッションにどう響くか、必死に考えてスカウトメールを送った。なのに、返信率は一向に上がらない……」

「それどころか、やっとの思いで面談にこぎつけても、レジュメに書かれていた『強み』と、ご本人の言葉から感じる『熱量』が、どうにも一致しない気がする……」

もし、こうした違和感を少しでも感じていらっしゃるなら。それは、採用担当のあなたの「頑張り」が足りないからでは、決してありません。

今、採用市場の「前提」が、確実に変わりつつあります。そのキーワードは、「AIによるレジュメ作成の一般化」です。このところ、採用においてもAI活用が急速に進んできたため、私自身も少し戸惑いを感じるくらいの変化となっています。

私たち人事がこれまで良かれと思って続けてきた「スカウト文面へのこだわり」や「1to1のパーソナライズ」が、もしかしたら、その前提が崩れた土台の上で、空回りしてしまっているのかもしれない。

今日は、そんなAI時代の採用活動において、私たち人事担当者がこれからどこにリソースを集中させ、どう「勝ちパターン」を見つけていくべきか。皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

AIが書いたレジュメに、想いのこもった「魂のスカウト」は刺さらない

少し前まで、レジュメや職務経歴書は、その人自身の「言葉」で書かれるものでした。もちろん、転職エージェントの添削が入ることはありましたが、それでも核となる「経験」や「想い」は、本人のものでした。

だからこそ、私たち人事は、その「言葉」の裏にある背景を想像し、「あなたのこの経験に惹かれました」と熱意を込めてパーソナライズすることに価値がありました。

しかし、今はどうでしょう。

ChatGPTやGeminiをはじめとする生成AIの進化は凄まじく、求職者がAIを使ってレジュメを作成することは、もはや「当たり前」になりました。

AIは、その人のキャリアの棚卸しを手伝い、過去の経験を「それらしい」キーワード(例:リーダーシップ、課題解決能力、プロジェクト推進)に変換し、非常に「キレイ」で「整った」レジュメを一瞬で作り上げます。

これは求職者にとって、自分の経験を客観的にまとめる上で非常に便利なツールです。

ですが、採用する側にとっては、少し厄介な問題を引き起こします。

それは、「求職者本人も『自分が書いたんだ!』という実感がないレジュメ」が大量に流通し始めた、という大きな問題です。

AIが生成した「強み」や「キーワード」は、必ずしも本人が最も自信を持っている部分や、大切にしている価値観と一致しているとは限りません。AIは、あくまで「一般的に評価されやすい」言葉を選んでいるに過ぎないからです。

そんな「本人の実感なきキーワード」に対して、私たち人事が「あなたのこの部分に強く共感しました!」と熱烈なスカウトを送ったとして、果たして本人の心に刺さるでしょうか。

おそらく、多くの場合「うーん、そうかな?」「AIがそう書いただけなんだけどな」と、どこか他人事のように受け止められてしまいます。

これが、私たちが感じている「徒労感」の正体です。スカウトメール1通1通にこだわって多大な労力をかけたとしても、そのインプット(レジュメ)自体がAIによって均質化(コモディティ化)しているため、アウトプット(スカウト)も響きにくくなっている。

私たちが丹精込めて作った「刺さる文面」は、そもそも「刺さるべき場所(=本人のリアルな想い)」が存在しないレジュメの前で、空を切ってしまっている可能性が高いのです。

「AI vs AI」の消耗戦。そして「口説き」が無効化される未来

さて、話はここで終わりません。AIを使うのは、求職者だけでしょうか?

ちょうど、このような記事もありました。

私たち人事担当者も、日々の業務効率化のために、AIを活用し始めています。「この候補者のレジュメを要約して、最適なスカウト文面を3パターン作成して」 こんなプロンプトを、当たり前に使う未来はすぐそこです。

そう、採用市場は「AIが書いたレジュメ」と「AIが書いたスカウト」が飛び交う、「AI vs AI」の消耗戦に突入しようとしています。

こうなると、何が起きるか。

求職者と企業の間に、「どうせAIでしょ?」という、致命的な「相互不信」が生まれます。

  • 求職者側: 「このスカウト、耳障りの良いことばかり書いてあるけど、どうせAIが私のレジュメに合わせて自動生成しただけだろうな」

  • 企業側: 「このレジュメ、すごく立派なことが書いてあるけど、どうせAIが作った『盛り』経歴だろうな」

お互いが「本音」で向き合っている実感が持てない。こうなると、私たちがこれまで採用の「華」であり「力の見せ所」だと信じてきた、1to1スカウトによる「口説き」は、ほぼ無効化してしまうはずです。

「あなたのここが素晴らしい」も「私たちのミッションはこうだ」も、すべてがAIによって生成可能な「テンプレート」に見えてしまう。

この表層的なコミュニケーションの中で、一体どうやって「この会社だ!」と選んでもらえるというのでしょうか。

「パーソナライズ一辺倒」という“頑張り”の限界

こうなると、「もっと頑張ってパーソナライズすれば、いつか響くはずだ」という“精神論”だけでは、採用リードの攻略は極めて難しくなります。

もちろん、採用において1to1のコミュニケーションが重要であることは、今も昔も変わりません。私も「共走」パートナーとして、そこは最も大切にしている部分です。

しかし、問題は「リソース配分」です。

私たち人事のリソースは有限です。AIによって「本当に自社にマッチするのか」が見えにくくなった候補者プール全体に対して、従来通りの「全力投球のパーソナライズ」を続けることは、果たして賢明な戦略でしょうか。

特に、採用にそこまで大きな工数を割けない中小企業やベンチャー企業にとっては、この「パーソナライズ一辺倒」の戦略は、採用活動全体の停滞を招きかねないリスクとなり得ます。

返信率が低いのは、文面の「魂」が足りないからではなく、アプローチする「場所」と「方法」が、市場の変化に合わなくなってきているだけかもしれない。

今、私たち人事に求められているのは、がむしゃらに「頑張る」ことではなく、「どこで頑張り、どこで力を抜くか」を見極める、冷静な戦略眼です。

これからの人事に必要な「採用マーケティング」の視点

では、具体的にどうすればいいのか。私がこれからの採用活動で重要になると考えているのは、2つのシフトです。

それは、属人的な「職人技」から脱却し、「採用マーケティング」の視点を持つことです。

シフト1:徹底した「効率化」と「仕組み化」

まず取り組むべきは、「効率化」です。誤解しないでいただきたいのですが、これは「手抜き」を推奨しているのではありません。「本当にリソースをかけるべき場所」を見極めるための「仕組み化」です。

AIレジュメによって「個」が見えにくくなった以上、まずは「広く」「浅く」接点を持ち、その中から「見極める」プロセスに移行する必要があります。

1. スカウト文面の「型(パターン)」化
すべてのスカウトをゼロから手書きする必要はありません。候補者の属性や、アプローチの目的に合わせて、いくつかの「型」を用意します。

  • A:カジュアル面談誘致型(ティザー)

    • 目的:まずは会うこと。ハードルを最大限引き下げる。

    • 内容:詳細なパーソナライズはせず、「あなたの経歴を拝見し、まずはお話してみたい」という点を簡潔に伝える。

  • B:経験マッチ型(ミドル)

    • 目的:特定の経験を持つ層に、自社のポジションを的確に提示する。

    • 内容:「〇〇のご経験」が「当社の△△ポジション」でどう活かせるか、というロジックを提示する。(ここはAIレジュメのキーワードを拾う形でも可)

  • C:熱烈オファー型(フルパワー)

    • 目的:絶対に会いたい「この人」を口説き落とす。

    • 内容:従来の1to1の「魂のスカウト」。レジュメだけでなく、SNSや登壇記事なども調べ上げ、AIにも頼りながら効率的に取り組みつつ、徹底的にパーソナライズする(採用シーンで使えるAIプロンプトは下記の記事よりどうぞ)。

重要なのは、「C」のフルパワー型を「全員」に送るのをやめることです。まずは「A」や「B」で反応を見て、本当に見極めたい人にだけ「C」を送る、といった使い分けをルール化します。

2. 採用MA(マーケティング・オートメーション)の取り組み
スカウトをただ「送りっぱなし」にするのは、もうやめにしましょう。

例えば、どの「型」の文面が、どの時間帯に送ると、開封率・返信率が高いのか。ABテストのように試してみる。全体傾向については、データを取って検証できれば良いですが、開封率・返信率などの候補者動向のマスデータは多くは採用ベンダーさんが情報を持っているので、聞いてみるのが早いでしょう。

「なんとなく」ではなく「データ」に基づいて、文面以外の高められる要素を上げ、スカウトの精度を高めていくイメージです。

シフト2:媒体ごとの「勝ちパターン」の追求

もう一つは、「媒体特性」の徹底的な理解です。皆さんが使っているスカウト媒体は、本当に「どれも同じ」でしょうか?

それぞれの媒体には、独自の「文化」と「ユーザー層」が存在します。AIレジュメの利用率も、媒体によって濃淡があるはずです(例えば、ハイキャリア層ほどAI活用に積極的かもしれない、など)。

  • A媒体では、AIで整えられたレジュメが多いかもしれない。であれば、レジュメの「キーワード」にこだわるより、「現職の企業規模」や「経験年数」で絞り込み、「まずは会う」ためのティザー型(Aパターン)が有効かもしれない。

  • B媒体では、「なぜやるのか」という「想い」が重視されそう。であれば、AIでは生成しにくい「共感」をフックに、こちら側の熱量を先に提示する方が響くかもしれない。

このように、媒体ごとに「どの層に」「どの型の文面を」「どの熱量で」送るのが最も効率的か。この「勝ちパターン」を捉え、そこにリソースを集中投下していく

このように、媒体ごとに「勝ちパターン」を捉え、そこにリソースを集中投下する。これは、採用マーケティングにおける「リソースの掛け方を見極める」という重要な「戦術」です。これが、AI時代の「リソースの掛け方を見極める」ということです。

しかし、、、これを言ってしまうと採用の領域を超えてしまい、これまでの話は何だったの?と思われるかもしれませんが、これだけでは不十分です。

なぜなら、これらはすべて「AI合戦」の土俵の上での戦い方に過ぎないからです。どれだけ効率化し、パターンを最適化しても、それは「AIが生成したスカウト」の精度を上げているに過ぎず、根本的な「どうせAIでしょ?」という不信感を拭い去ることはできません。

行き着く先は、「魅力ある会社なのかどうか?」という根本解

「AI vs AI」の消耗戦が行き着く先。求職者が、AIが生成したスカウトメールの群れの中から、何をもって「この会社の話を聞いてみよう」とクリックするのか。

それは、もはやスカウト文面の「巧拙」や「パーソナライズの精度」ではありません。

行き着くところは、もう採用活動の「戦術」や「テクニック」だけではどうにもならず、もはや「求職者にとって、魅力ある会社かどうか?」という、シンプルで、最も困難な「根本」にしか解はないのだと、私は考えています。

「どうせAIでしょ?」という疑いのフィルターを突き破るものは何か。それは、AIでは生成できない、その会社固有の「熱量」や「事実」です。

  • その会社の「ミッション」は、本当に世の中に価値を提供しているか?

  • そこで働く「人」は、本当にイキイキと楽しそうに仕事をしているか?

  • 提示される「成長機会」は、本当にその人のキャリアにとって魅力的か?

  • その会社が発信する「情報(オウンドメディア、SNS、登壇資料)」は、本当にリアルで、一貫性があるか?

これらは、スカウトメール1通で「口説ける」ものではありません。日々の企業活動そのものの「積み重ね」であり、それが「魅力」として外部に滲み出ているかどうかの問題です。

AIが採用活動の表層を覆えば覆うほど、求職者はその裏にある「本物」を見極めようとします。スカウトメールを受け取った時、求職者はAIが書いた文面を読むのではなく、即座に「会社名」で検索し、SNSを調べ、口コミサイトを読み、そこに「本物の魅力」があるかを判断するようになるでしょう。

検索した際に、スカウトで書いてある魅力的な内容と実際の事業活動のリアルな日常との温度差やギャップを感じた時、求職者はどう思うでしょうか?きっと、高まる期待値との落差でガッカリし、二度とその企業の採用の門を叩くことはないのでしょう。

採用人事の仕事は「口説き」から「魅力の創造」へ

AIが採用実務を担う時代。それは、私たち人事の仕事がAIに奪われるということではありません。むしろ、「人間にしかできない仕事」が、より明確になったということです。

そして、その「人間にしかできない仕事」とは、

  • AIに任せられる作業(スカウト生成、日程調整)は徹底的に任せ、効率化すること。

  • そうして生み出したリソースを、「AIでは見抜けない候補者の本質的な価値観」と「自社のカルチャー」が本当にマッチするか、面談で見極めること。

  • そして何より、採用領域のミッションでありながらも、採用マーケットとの対話やテストマーケティングをすることによって、スカウトという「点」で口説くだけのアクションではなく、経営や現場と一体となり、「求職者にとって魅力ある会社」そのものを「創り上げていく」こと。

これこそが、AI時代の採用人事に求められる、最も重要でクリエイティブな役割です。

AIによる採用市場の変化をキャッチアップし、変化に適応する。AIの存在を前提とした、新しい採用戦略を設計する。従来の成功パターンが通用しない、なかなか難しい時代になりました。

もし今、皆さんの会社が「AI合戦」の消耗戦に陥りかけているなら。一度立ち止まって、考えてみませんか。私たちが本当に磨くべきは、スカウト文面でしょうか? それとも、会社そのものの「魅力」でしょうか?

私自身も、このAI時代の採用については、実戦で仮説を立てながら手探りを続けている本音ですが、小手先のテクニックだけでなく、その「根本」の部分から、今後も皆さんと一緒にその答えを見つけていきたいと思っています。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

この記事が少しでも役に立ったら、ポチッと『スキ』を押していただけると嬉しいです。会員登録なしでも『スキ』は押せますので、応援のクリックをいただけると嬉しいです!

いいなと思ったら応援しよう!

Keisuke Dojo|HR"共走"パートナー いただいたクリエイターサポートは、お役に立てる情報の継続発信のエネルギーとすべく、コーヒー代として使わせていただきます☕️

この記事が参加している募集