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逆ポモドーロ〜易疲労性への対処     高次脳機能障害のユニバーサル仕事術


集中できる時間の限界

 集中力を持続できるのは25分、このような記載をよくみかける。なにか根拠があるのだろうかと調べるうち、ポモドーロ方式という仕事のやり方が取り沙汰されていることを知った。

ポモドーロ方式

 25分間、集中して作業に取り組んだら、いったん中断して5分間休憩を取る。これを1クールとして繰り返すのだが、2回から3回繰り返した後は、少し長く、例えば15分とか30分、休息を取るのだという。
 1クールの25分はタイマーを使ってきっちり守る。このような仕事のやり方をすると、集中力を維持して効率よく作業をこなせるということらしい。
 フランチェスコ・シリロという方が大学生のときに始めた方法という。25分間集中、5分休憩が効率が良いという知見は、この方の経験によるものだろうか。 
 ちなみに1クールを1ポモドーロと呼ぶ。そのような単位があるのかというと、ない。シリロ氏が25分間を測るために使っていたトマト型キッチンタイマーにちなんで、25分集中と5分休憩の1クールをポモドーロ(イタリア語でトマトの意)と名付けたというから、洒落ているね。

課題の優先順位と作業量を見積もるのがポイント

 ポモドーロ方式のキモは、作業の分量をポモドーロ単位で見積もることにあるのではないかと見ている。仕事を始めるにあたって、まず、その日に処理すべき課題を挙げ、その優先順位を決める。やるべきこととやらないことをはっきり区別をつけ、優先度の高いものから処理していく意識を持つようにする意味があるのだろうね。
 ついでそれぞれの課題の分量を、ポモドーロがいくつ必要かで見積もるのである。処理に50分かかる作業であれば2ポモドーロだから、その作業は2分割して取り組む必要があることになる。
 ポイントはここだろう。一つの課題を、短時間で処理できるパーツに分解して、それぞれのパーツを集中して処理しようというわけだ。もちろん、その間に休息を挟んで、集中力をリフレッシュしつつ、である。

高次脳機能障害の場合

 ポモドーロ方式というやり方は、すでにうちのメンバーの皆さんはお気づきのように、我々が指導している作業への取り組み方とよく似ている。タイマーによる短時間の集中と適切な休憩という点では同じと言って良い。
 ただし本質的に異なる面がいくつかあるので、ポモドーロ方式をそのまま、メンバーの皆さんが実践しようというのは無理がある。ここで再度、高次脳機能障害の方の仕事の進め方、高次脳機能障害の仕事術をまとめておこう。

注意障害としての易疲労性

 高次脳機能障害の方の場合、注意障害のひとつの現れとして易疲労性が顕著なことが多い。疲れやすい、すぐに疲れてしまう、持久力が落ちたという訴えだ。
 疲れとは注意の観点からすれば、時間の経過とともに能率が落ちる現象と言える。能率が落ちるとは集中力が続かなくなってくることだとも言える。
 ポモドーロ方式では25分を1ポモドーロとしてひとまとまりの作業時間とするのだけれど、高次脳機能障害による易疲労性(注意障害)の方では集中の持続時間が短縮していることが多い。人によっては10分しか集中できないということだってあるし、これを疲れとして感じてしまう方もある。この点を考慮してポモドーロ方式を導入しようってことだ。

時間設定

 一つは1ポモドーロの時間設定。我々が口を酸っぱく指導するのは、集中できる時間内で作業を終了せよ、である。10分しか集中できない場合は作業時間を、つまり、タイマーを10分に設定して、タイマー通り、作業を中断するのである。
 自身の集中力の持続時間に合わせて作業時間を設定するのであって、作業時間を先に設定するのではない。形式的にポモドーロ方式を取り入れるのとはであることに注意してほしい。
 また休憩が5分では足りない方も多いと思われる。症状に合わせた作業時間と休憩時間の設定が必要である。一度設定した作業時間についても、例えば、作業中につい他の作業に手を出してしまうとか、スマホに気が行ってしまうとか、目的の作業に集中できていないようであれば、すでに集中が途切れているわけだから、作業時間の設定を見直すようにしよう。

必ず”時間で”切り上げる

 我々はタイマーなりアラームなりを使って、一定時間の経過後に必ず作業を必ず中断するように指導している(これはポモドーロ方式も同様のようだ)。

「キリのいいところまで」は不可

 人間、作業に取り組むときには、どうしても区切りのいいところまで片付けたいものである。つまり作業の内容による区切りだ。このやり方だと、ついつい、長時間の連続作業になりがちだ。”もう少し、もう少し”と(山田昌さんに名古屋弁で言ってもらいたいね)、なかなか終われなくなってしまう。結果的に連続作業時間が長くなってしまうことを避けるために、文字通り機械的に時間で区切って作業を中断するのである。連続作業時間が長くなるとなぜよくないのかについては「神経疲労」の項目に書いたのでご参照ください。

作業再開のメモ

 時間による作業の中断は、作業内容と関係がない。内容から見れば中途半端なところで作業を終えなければならなくなる。すると、次に作業を再開する際に、どこまで作業が進んだのか、何から始めればよいのかわからなくなってしまう。これを防ぐために、作業の終わりには必ず、作業の進捗状況、再開のための自分自身への指示をメモしておくようにしよう。

メモは”他人”に向けて書く

 このとき、メモは「自分への」メモではなく、「他人への」、つまり、作業を引き継ぐ誰かに送るメモとして書くことがキモだ。だって、メモって、今、自分がわかっていることは省略して書かないでしょ?でも、このメモを見るのは、未来の自分という他人だよ。今の自分にとって当然のわかっていることを、忘れてしまっている、つまり、他人になっているわけ。これ、メモを書くときはいつでも意識してほしいポイントだ。

ブレークとレスト

 閑話休題。さて、作業終了時間になったら作業を中断(終了)する。作業を中断してやめることをブレークという。ほら、コーヒーブレークというでしょう、あれだ。
 高次脳機能障害の仕事術では単にブレークするだけではない。ブレークしたらレスト=休息する。脳の神経疲労をリフレッシュして、集中力を回復しよう。レストの方法については別項に記載したので参照してほしいが、ブレークとレストを意識することが大切だ。

課題の分析(見積もり)は第三者にお願いしよう

 ポモドーロ方式ではやるべきこと(とやらないこと)のリストアップと優先順位、作業量の見積もりがキモだろうと書いた。これは取り組むべき課題について、どのように処理を進めるのが効率的なのかについて、常に意識的になれと教えているのだと思うが、高次脳機能障害の仕事術ではこれは必ずしも必須ではない。人によってはむしろ避けるべきとも言える。

遂行機能障害を考慮して 

  高次脳機能障害の方には遂行機能障害のある方も少なくない。遂行機能というのは、記憶や注意など直接的に作業を進めるための能力とは別に、作業を効率よく進めるための段取りを考える能力だ。記憶や注意を仕切る立場にいる能力とも言える。
 遂行機能が低下した人は、やるべきこととやらないことを区別してリストアップしたり、更にその優先順位を判断するのが苦手になる。苦手なこと、できないことを無理にやらないのが原則。

できないことは人を頼る

 ではどうするか、簡単なことである。上司や同僚など指示者に段取りをしてもらえば良い。そのためには自身の作業処理のキャパシティなど指示者とよく相談の上、作業の段取りを決めていく必要があるし、また随時見直して常に適切な作業環境を作る必要がある。
 職場の上司・同僚が指示者の場合、障害支援の専門家ではない以上、必ずしも適切に対処できないこともあるから、ジョブコーチが介入して職場と調整できるということなしだ。

ジョブコーチ/支援者は入職時/復職時から介入してもらうのがコツ

 入職・復職時に支援者が介入している場合はよいが、それまで支援者の介入がなかった職場への突然の第三者の介入は、職場から拒否される場合が少なくない。その意味でも、就労にあたっては入職復職時から支援者を介在させておくのが安全だ。

まとめ

集中できる時間内にタイマー設定
キリのいいところ、ではなく、時間で切る
再開メモは他人への引き継ぎのつもりで書く
休憩が大事
作業の見積もりは第三者
ジョブコーチ・支援者は入職時から介入

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