見出し画像

デフォルトモードネットワーク(DMN)   集中は最良の休憩?〜デフォルトモードネットワークとマインドフルネス〜 Vol.2

Vol.1からの続きです。が、この記事だけでも独立したデフォルトモードネットワークの記事として読めます。


安静時脳活動

 私達が脳の働きを調べるとき、例えば、そう、読書に集中しているときの脳のどこがどれくらい活発に活動するのか調べるとき、どうすればよいか。常識的に考えれば、何もしていないとき、すなわち外部からなんの刺激もない状態の脳の活動を記録して、その後、読書しているときの脳の活動を記録、両者を比べてみれば良いはずです。
 前者を仮に「安静時」と呼びましょう。外部からの刺激に反応することなく何もせずに「安静」にしているから。後者は「活動時」ですね、活動中ですから。一般化して言えば、安静時と活動時の脳活動を比較するわけです。安静時は活動が少なくて、活動時は脳が活発に動くはずですから、活動時の記録から安静時の記録を引き算すれば、プラスの数字として活動量が測定できるはず。

スタンバイ状態〜安静時ほど脳は活動している?

 事実、そうやって脳の研究は進められました。もちろん私もそのようにやりましたよ。ところが、です。やってみると、活動時よりも安静時のほうが脳活動が活発だという妙な結果が得られるようになったのです。
 はじめはこの結果をどのように解釈するのか、科学者は困惑したのですが、研究が進んだ現在では、私達が外部からの刺激に反応せず何も考えないでぼんやりしていると感じているときこそ、脳は活発に活動していることがわかっています。その活動量は活動時の20倍にもなるとも言われ、「安静」という言葉を使うのがはばかられるほどです。
 だからこの状態を、仮に”スタンバイ”状態と呼びましょうか。

環境に適応して生き残るための臓器

 ところで、脳は何をする臓器でしょうか。まず思いつくのは「考える」働きですね。それから「筋肉を動かす」のも脳の仕事。あるいは暑さ・寒さなど「感じる」のも脳の役目です。さらに心拍や呼吸など「生きるための調節」をするのも脳の働きなのです。そう、感じて考えて動いて生きていくためにある臓器が脳なのです。
 外部の(あるいは体内の)環境について情報を収集し(感じる)、その環境に適した行動について情報を処理して判断し(考える)、それに基づいて行動し(動く)、生きるわけです。刺激に対してすぐに的確に反応することは生物にとって死活問題と言えます。

刺激に対するスタンバイ

 だから私達が何も考えずぼんやりしているときとは、この刺激にすぐに反応できるよう、常にスタンバイしている状態と言えるのです。昔々、私達の祖先がサバンナで暮らしていたとき、突然、ライオンに襲われるかもしれない、そんな状況では、すぐに危険を察知して逃避を起こさねばならなかったはず。だからスタンバイ状態なのです。
 安静状態とは何もしていないのではなく刺激に対するスタンバイ状態であって、例えばバッターがバッターボックスでボールを待つように、剣士が正眼の構えで相対するように、タッチタイピングでホームポジションを維持するように、常に即応できる態勢をとっているのです。

デフォルトモードネットワーク(DMN)

 この脳の中でスタンバイ状態の活動を行っている部分をデフォルト・モード・ネットワークと呼びます。長いのでDMNと略すのが普通です。DMNはスタンバイ状態を作り出す回路ですから、私達がぼんやり何も考えていないときにこそ活発に活動しています。一度刺激が与えられ、私達が例えば読書に集中し始めると、DMNは活動を抑えられ、代わりに読書に集中するために脳は動員されることになり、一時的にスタンバイ状態は解除されます。

とりとめのない想念が次々と浮かんでくる

 でもなんだか不思議な話だとは思いませんか。私達が何か、一所懸命集中しているときよりも、自分では特に何も考えず、むしろぼんやりしているときに脳が激しく活動しているなんて。けれどもぼんやりしているときって、本当に何も考えていなのでしょうか。ぼんやりしながらとりとめもないことを考えている、いや、考えるというより、とりとめもなくいろいろ浮かんでくるのではないですか。
 伊丹十三のエッセイで、おしりの皮膚はなぜこんなに硬いんだろう、とか、はて、紙型とは何だったか、とか、次々と浮かぶ考えについて述べたものがあったかと思いますが、ぼんやりしているときというのは、何も刺激がなくても自然に、自発的に想念が湧いてくる状態なのです。だからこそ、DMNによるスタンバイ状態での脳は、刺激に対する集中が必要な活動中よりも激しく活動して大量のエネルギーを消費しているのでしょう。

ネガティブ思考が沸き起こり止まらなくなるのも

 よく、夜中に目が覚めてしまい、あらぬことをいろいろ考えているうちにどんどんネガティブな思考が広がってしまう、なんてお話を伺います。外部からの刺激がない状態でぼんやりしているスタンバイ状態でDMNが活発に動いて、自発的な想念が次々と沸き起こってしまっているのでしょうか。だとしたら脳が激しくエネルギーを使って、疲れてしまうかもしれません。そう、ぼんやりしているとかえって脳を疲れさせかねません。

DMNを抑える休息方法を考える

 ようやく話がもとにもどりましたね。休息はどうすればいいのか。ここまでの話から、ぼんやり過ごす、そういう休息では、脳の疲れは取れないようです。ならばDMNを活動させないほうが良さそうだということになりませんか。

以下の記事に続く
マインドフルネスを使ってみる
集中は最良の休憩?〜デフォルトモードネットワークとマインドフルネス〜 Vol.3

#高次脳機能障害
#注意障害
#易疲労性
#デフォルト /モード/ネットワーク
#安静時脳活動
#スタンバイ状態
#雑念
#ネガティブ思考
#脳は環境に適応するためにある
#伊丹十三