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23歳、Phase Oneを買う。#2 デジタルバック選び

こんにちは、モチヅキです。
初回の記事をたくさんの方に読んでいただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。


さて、前回の記事で何度も登場した「デジタルバック」というシステムについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。



デジタルバックについて


デジタルバックの仕組み

多くの中判(大判)フィルムカメラには「フィルムバック(フィルムホルダー)」と呼ばれる機構がある。
例えるなら、鉄砲でいう“マガジン(弾倉)”のようなものだ。
この構造のおかげで、**レンズ/ボディ/フィルムバック/(ファインダー)**という3〜4つのユニットに分割することができる。

デジタルバックとは
そのフィルムバック部分をデジタルのイメージセンサーに置き換えたものだ。

基本的に
デジタルバックとボディを接続するための「アダプタープレート」
デジタルバックとレンズシャッターを同期させる「シンクロケーブル」
を用意すれば、中判・大判カメラをデジタル化することが可能になる。

つまりデジタルバックとは、手持ちのフィルムカメラをデジタル時代に対応させるために生まれたシステムなのだ。

やがて時代の流れとともに、デジタルバック専用のボディが登場。
Phase One 645DFを皮切りに、現在ではXF、XT、XCといった多彩なバリエーションが存在している。

左から Phase One XF、Phase One XT、Phase One XC
画像引用元:https://phaseone.seesaa.net

デジタルバックは豊富なボディとの組み合わせにより
DSLR、ミラーレス、レンジファインダー、さらにはビューカメラにだって姿を変えることができる。

特にXFボディは、レフ機でありながらスチル専用機として世界でも最も多機能なカメラだ。

XFボディには様々な機能が内蔵されており、肩液晶からタッチパネルで呼び出せる。
なんとProfotoのコマンダー機能も内蔵している。

余談だが、昨今のミラーレス機では肩液晶を廃止する流れが進んでいる。
しかし、僕は今でも肩液晶があるカメラが好きだ。

その中でもXFボディは、肩液晶という機能を世界一うまく使いこなしたカメラだと思う。
見た目も操作感も洗練されていて、僕にとっては肩液晶の完成形と呼べる存在だ。

肩液晶の付いたカメラが一番かっこいいんだ────。
イケてるぜ、おまえ
────。

また、ボディを付け替えられるということは「仕事ではXFボディを使い、趣味ではRZ67を使う」といった使い分けもできる。複数のデジタルバックを所有していれば、バック側を交換して変化を楽しむことも可能だ。

つまりデジタルバックは、状況に応じてボディやバックを換装して楽しめる自由度の高いシステムなのである。

Mamiya RZ67 ProII D + Phase One IQ180

こんなにも遊びがいのあるデジタルカメラが、ほかにあるだろうか…!?

デジタルバックというシステムは、
まさに僕が求めていた“理想のカメラ”そのものだった。



デジタルバックの種類

デジタルバックはこれまでに Phase OneMamiyaLeafHasselblad など、さまざまなメーカーから発売されてきた。

そのうち MamiyaLeaf は後に Phase One 傘下となったため、
現在デジタルバックを販売しているのは

  • 業務機の Phase One

  • 民生機のHasselblad
    の2社のみとなっている。

左から:Phase One XF IQ4 150MP カメラシステム Hasselblad 907X & CFV 100C
画像引用元:https://www.phaseone.com https://www.hasselblad.com

デジタルバックのマウント規格

交換レンズと同じように、ボディとデジタルバックを接続するための様々なマウント規格が存在する。

  • Mamiya Mマウント(Phase One XFマウント)

  • Hasselblad Vマウント

  • Hasselblad Hマウント

  • CONTAX Cマウント

  • Rolleiflex Hy6マウント

…など

デジタルバックには、同一モデルであっても複数のマウント仕様が用意されている。
たとえば同じIQ180でも、Mマウント、Hマウント…など様々なマウントの個体がそれぞれ存在する

これまた余談だが、コンタックス Cマウント用など希少なマウントの個体は非常に高額な値段で取引されているようだ…。


デジタルバック選びの考え方

僕は Mamiya RZ67Phase One XF の両方を使いたいと考えていたため、
それぞれに対応するデジタルバックを探すことになった。

RZ67は Mamiya Mマウント用アダプター のほか、ハッセルVマウント用アダプター なども存在するため、
対応するデジタルバックの選択肢は比較的多いと言える。

一方、XFボディXFマウント専用 のため、
使用できるデジタルバックは Phase One IQシリーズ または Credoシリーズ に限られるという制約がある。

Pシリーズ以降のPhase OneとMamiya / Leafのデジタルバックシリーズ
およびテザリングワークフロー


さらに、PCとのテザー撮影を考えると、
P+シリーズ以前の古いデジタルバック では基本的にFireWire対応のMac が必要になるため、仕事での実用面はあまり現実的ではない。

結果的に、僕の選択肢としては IQシリーズCredoシリーズ のみだった。


Mamiya LeafとCredoシリーズ

後に Phase One 傘下となる Leaf は、2009年に Mamiya と資本提携を行い、Mamiya Leaf社 として再編された。
その最終モデルとして登場したのが Credoシリーズ である。

Mamiya Leaf Credo デジタルバック
画像引用元:https://phaseone.seesaa.net

この Mamiya Leaf Credoシリーズ は、Phase One IQ1シリーズ の兄弟機にあたる存在で、
Phase Oneのプラットフォームをベース に開発されている。
そのため、IQ1シリーズとCredoシリーズのセンサーバリエーションは基本的に共通 となっている。

IQシリーズの進化

Phase One IQシリーズ は、
第一世代の IQ1 から現行の IQ4 まで、4世代にわたって多彩なモデルが展開されてきた。

  • IQ1〜IQ3 は基本的に同一センサーを採用しており、画質面での差は少ない。

  • IQ1 → IQ2 では、Wi-Fiテザー撮影やXFボディ側でのISOコントロール対応など、操作性が向上。

  • IQ3 では、XFボディとのバッテリーパワーシェア機能など、実用面がさらに強化されている。

  • IQ4 からは内部構造が一新され、100MP/150MP クラスの超高解像センサーを搭載。
    IQ4専用ボディとして Phase One XCXT なども登場した。


ただし、IQ3・IQ4 は現在でも中古価格が 100〜300万円前後 と高価で、
コスト面から現実的な選択肢とは言い難い。

そのため、僕は実用性と価格のバランスを考え、
IQ1シリーズ・IQ2シリーズ・Credoシリーズ の中から選ぶことにした。

IQ1〜IQ3までの主要デジタルバックの詳細は下記のサイトで確認できる。


中判センサーの種類

まず注目すべきは画素数の違いだ。
IQ1シリーズ、IQ2シリーズ、Credoシリーズはいずれも、40MP・50MP・60MP・80MP の4種類のセンサーをラインナップしている。
(IQ1〜IQ3の一部機種にはAchromatic仕様や100MP仕様など希少なモデルも存在するが、今回は省略させていただく。)

さらに、センサーサイズもモデルによって異なる。

センサーサイズ比較

40MPおよび50MPモデルは、富士フイルム GFXハッセルブラッド X2D II と同じ 44×33mm の中判センサーを搭載している(なお、50MPモデルは SONY製CMOSセンサー)。

一方、60MP と 80MP モデルは、さらに大きい 645フルフレームセンサー を採用しており、
これはGFXやX2D IIのセンサーを上回る、写真用デジタル機器として最大級のセンサーサイズ である。
この645フルフレームセンサーは、Phase One や Leaf など一部の業務用デジタルバックにしか搭載されていない、非常に希少なセンサーだ。

645フルフレーム CCDセンサー

どうせ購入するなら、もう二度と登場することのないであろう、
DALSA製645フルフレームCCDセンサー を体験してみたい─────
僕はこの時、そう思っていた。

(ダルサ 現:”Teledyne DALSA Corporation" は、Philips(フィリップス)の半導体製造部門から独立したカナダの半導体メーカーである。)



ついにデジタルバックを購入

今年4月。
僕は年明けの大型案件を終えた後で、少しばかり懐が潤っていた。

僕の頭の中は中判デジタルのことでいっぱいだった。

業務用中判デジタルはその性質上、個体数が非常に少なく、中古市場にも出回ることがほとんどない。
そのため、常にメルカリやヤフオクなどで新規出品を監視する必要がある。
(後述するが、フリマサイトでの購入はあまりおすすめしない。)

そんなある日、何気なくフリマアプリを覗くと ”1件だけ" 出品があった。

IQ150は44×33mmのCMOSセンサーを搭載したモデル。
645フルフレームより一回り小さいセンサーだが、CMOS機らしい高感度耐性と広いダイナミックレンジなど、利点も多い。

「PhaseOne XF + IQ150」の組み合わせだ。
前述の通り、本当は645フルフレーム機を狙っていたが、価格が相場より比較的手頃だったこともあり、購入を決意。
お金がちょっと入るとすぐに財布の紐がゆるゆるになる。)

なお、購入からわずか1ヶ月後、XF + IQ180が出品された。泣

IQ150の実力



那須での初撮影

Phase Oneが届いて2日目。
友人に自慢するべく、ウキウキで那須に遊びに行った。

しかし、カメラ好きの友人に見せても反応は「…え?それは何?」と言った具合。
やはり、Phase Oneなんて一般的にはほとんど知られていないのだ。

結局自慢どころか、まず、“Phase One”とは…何か(ネットリ という解説から始まってしまった。

うーん、道のりは長い。

Phase one XF IQ150, Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8
1/400, F8.0, ISO 100
Phase one XF IQ150, Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8
1/200, F5.6, ISO 100
Phase one XF IQ150, Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8
1/320, F5.0, ISO 100
Phase one XF IQ150, Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8
1/100, F2.8, ISO 100



シャッター音

まず印象的だったのは、XFボディのシャッター音だ。
ミラーがダウンする際の「カチャン」という独特な音。
そして直後に響くシャッターの複雑な金属音が、メカメカしさ満点。

まるで「1枚1枚を大切にしろ」と語りかけてくるような
35mmの一眼レフ機とはまた違う、非常に独特な感覚だ。

現代のカメラでは中々味わうことのできない、重厚で贅沢な撮影体験ができた。


レンズ

中古で付属していたのは、Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8

1世代前のシルバーリング仕様のレンズシャッター内蔵レンズだ。
現行はブルーリング(Blue Ring)シリーズに移行しており、さらに洗練された描写を得られるだろう。

IQ150で使用すると、35mmフルサイズ換算で約43mm相当
風景から全身のポートレートまで、使い勝手の良い画角だ。

1世代前のレンズとはいえ、ピント面は5000万画素でも問題なく解像している。
線が細く、癖のない描写で、まさに“素直なレンズ”という印象だ。

ちなみに55mmのレンズ構成はブルーリング版と同一と思われる。

Schneider Kreuznach 55mm LS F2.8

描写の印象

近年の35mmフルサイズ機は、ピント面が「カリカリ」にシャープな描写になりがちだ。
しかし、Phase Oneの描写は解像していながら滑らか

線が細く、どこか“見ていて心地よい”柔らかさがある。
当然、画素数もあるので、十分に引き伸ばすことも可能。

まさに中判デジタルならではの奥行きと余裕を感じる。
言葉だけでは伝わらない懐の深さ。ぜひ一度手にして試してみてほしい。

道端に落ちていた空のショットシェル。
5000万画素のトリミング耐性もさることながら
被写界深度の浅さも特徴的だ。

ダイナミックレンジ

IQ150は14ストップのダイナミックレンジを誇る(CCD機は13f-stops)。
残念ながら元データを消してしまったが、白飛び耐性は驚くほど高い。

画面が真っ白になるほど露出オーバーしても、
現像で“自然に”階調が戻ってくるのだ。

この「自然に」というのが重要で、
フルサイズ機でも白飛びを戻せるケースはあるものの、
階調のグラデーションがどこか不自然になりがちだ。

しかしIQ150のRAW(.IIQ)は、階調破綻を極限まで抑えて
滑らかに光を取り戻す。
白飛び耐性に関しては、数字以上のポテンシャルを感じた。


AF性能

デジタルバックのAFについては、ボディの性能に左右される。

XFボディにはさらにHAP-1HAP-2 と呼ばれる2種類の世代が存在する。
これは “Honeybee Autofocus Platform” と呼ばれるAFシステムで、
HAP-2では精度・速度ともに向上しているようだ。
(※HAPのバージョンは有償でアップグレード可能。)

あいにく僕の個体はHAP-1だったが、風景やスナップ、スタジオの人物撮影程度であればAF速度や精度においては特にストレスを感じることはなかった。

ただし注意点として、XFボディはHAPの世代を問わずAFポイントが中央1点のみ
この制約はやや不便に感じる。

Phase One XFボディのファインダー内

使ってみての総評

1日撮影してみて、総じて満足度は非常に高かった
中古とはいえ安くはない買い物だったが、
“世界最高峰のカメラが自分の手元にある” という事実が本当に嬉しい。

IQ150は10年以上前の型落ちとは言え、当時300万円以上もする代物だ。
描写はもちろんのこと、外観のデザインだって今でも古臭さを感じない。

超かっこいい。重いけど。

フェラーリやランボルギーニ、GT-Rがそうであるように、
当時最高峰のプロダクトはいつの時代も輝きを失わない。
もしハッセルブラッドが“カメラ界のロールスロイス”だとすれば、
Phase Oneは“カメラ界のレーシングカー”だと思う。

きっと、ライカやハッセルブラッド以上の所有欲を満たしてくれるだろう。買った事ないけど。



ただ、撮影後に一つだけ気になる点があった。
どうも無限遠でピントが合っていない気がする


もしかして――フランジバックが狂ってる…?

つづく。


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