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言葉で交わる
その男は、ひとりの女を虜にしたのよ。
女は、男に恋い焦がれメールを送る。
熱い想いを男は受け取り、さらに熱い返信をする。
……ひとりの女性を虜にする。
会わずに文章を使うなら、僕にもできるかもしれない。
そう思ったかしら。いいわ、試してみましょうか。
彼らは恋人ではないわ。友人? そうかもしれないわね。
その関係に、名前はないわ。
その女を抱くことは、男には許されていない。
男は口説かない。女に心を奪われない。
ただ、女の話を受け取り、女の欲する言葉を紡ぐ。
女の紡ぐ言葉を男は味わい、賛辞をおくる。
味わい、賛辞という罠を仕掛け女を仕留める。
女は罠に気づき、しかし気づかぬふりをした。
男に心を奪われるために、自ら罠に飛び込んだ。
その男は強く知性にあふれ毅然としており美しい。
普段の厳しい言葉と裏腹の優しさが時折現れる。
そのような男に我が分身たる文章を愛撫されたならば、
女が惚れずにいられようか。
瞬く間に女は陥落した。
しかし待つのは天国か地獄か。男は女に体で応えない。
わかっていながら、飛び込んだ。
紡いだ言葉を愛してほしい。
ただそれこそが女の望み。
男は言葉を愛撫し味わい、そのたび女は歓喜にふるえる。
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