見積と実費の乖離は、月いくら消えているか|反・精神論 #17
見積もった金額で受注した。
でも、実際にかかった費用は、それを超えていた。
その差、月にいくらになっているでしょうか。
数字が見えない経営の、分かりやすい損失のひとつが
「見積と実費の乖離」です。
見積もった金額で受注し、製造して納品した。
けれど、実際にかかった材料費・工数・外注費は、
見積もりを上回っていた。追加工や仕様変更が、
見積に反映されないまま進んでいた。
利益が、気づかないうちにこぼれ落ちていきます。
なぜ起きるのか。
見積の前提と、現場の実績が、別の場所に
あってつながっていないからです。
営業が出した見積、
現場が積み上げた実際の工数や材料、
経理が処理した費用が、
別々に管理されている。
だから、
「この案件は見積どおりに収まったのか、足が出たのか」が、
案件ごとに見えない。
解決の入口は、見積と実績を案件ごとに突き合わせることです。
見積金額と、実際にかかった原価を、同じ案件番号で照合する。
すると、「見積より実費が大きく超えた案件」=こっそり赤字、
が浮かび上がります。
どの種類の案件で、どの工程で乖離が起きやすいかも見えてきます。
◤ 「これだけ足が出ていたのか」と経営者が絶句した日
ある現場では、急ぎの追加工や仕様変更が、
日常的に発生していました。
けれど、現場は対応に追われ、その追加分を
見積や請求に反映する手順が、そもそもなかった。
当初の見積金額のまま、納品していたのです。
一件あたりの取りこぼしは小さい。
だから、誰も問題だと思っていませんでした。
私は、見積と実費を、案件番号で突き合わせる
仕組みを入れさせてもらいました。
突き合わせて、初めて乖離が数字で見えました。
月に積み重なると、無視できない額になっていた。
経営者は、その数字を見て、絶句しました。
「これだけ、足が出ていたのか」。
新規受注を一件取るより、
この乖離を見える化して止めるほうが、
はるかに確実で速い利益改善でした。
利益は、消えていたのではありません。
見えていなかっただけです。
見える構造を作った瞬間に、こぼれていた利益は、
つかめる利益に変わりました。
「小規模だから乖離は少ない」と思いがちですが、
乖離は規模でなく案件の複雑さに比例します。
特急・追加工の多い現場ほど起きやすい。
一度の突合で確かめる価値があります。
そして、見積と実費の乖離を
「担当者の見積もりが甘い」で片づけると、再発します。
個人の精度に頼るのではなく、
見積の前提と現場の実績を同じ番号で結び、
差が自動で見える仕組みにする。
これが構造で解くということです。
属人化の回で触れた「貫通」
――受注から請求まで同じ番号を通すこと――
が、ここで効いてきます。
もう少し具体的に言えば、やるべきことは三つです。
ひとつ、案件ごとに一意の番号を振り、
見積・製造指示・実績・請求のすべてに同じ番号を持たせる。
ふたつ、追加工や仕様変更が発生したら、
その場で同じ番号にぶら下げて記録する手順を決める。
後でまとめて、ではなく、その場で、が肝心です。
みっつ、月末に「見積額」と「実績原価」を
番号でつき合わせ、差額の大きい順に並べる。
この三つを回すだけで、どんぶり勘定だった現場が、
「どの案件で、いくら足が出たか」を
一覧で語れる現場に変わります。
仕組みが、記憶と勘の代わりに、
利益を見張ってくれるようになるのです。
数字が見えると、守りの利益、つまり乖離の回収だけでなく、
攻めの利益も取れるようになります。
どの案件が儲かり、どの工程が利益を削っているかが分かれば、
価格交渉にも、工程改善にも、根拠を持って踏み込める。
数字は、守りと攻めの両方の土台になるのです。
正直に言えば、私自身、見積と実費の差異を、
長いあいだ「担当者の不注意」で片づけていました。
「次から気をつけてくれ」。
そう言えば、その場は収まる。注意した気になれるし、
相手も神妙にうなずく。
けれど、翌月もまた、同じところから足が出る。
注意で防げるものなら、とっくに防げていたはずなのです。
私が変えるべきだったのは、担当者ではなく、
差が見えない構造のほうでした。
✓ 今日できる一歩
・直近の案件を1つ選び、見積金額と実際にかかった原価を突き合わせてみる。
・追加工・仕様変更が見積に反映される手順があるか確認する。
第16話 https://note.com/human_crab7218/n/n0b3f1c135f30
第18話 https://note.com/human_crab7218/n/ne67ac2884c59
