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雪の降る街で 第六章 「勃発」 ②(Special Thanks 澪さま)

 本編に入る前に、なんとみっちゃんさまから、めちゃくちゃ嬉しい拙作のご紹介をいただきました!。゚(゚´Д`゚)゚。

 みっちゃんさまは皆さまご存知の通り、女と男のどきどきするような恋愛描写が見事なストリーテラーさまですよね😊 ご存じない方はここをクリック! 私は「甘噛み」と「恋となれ花となれ」が大好きです(/ω\)

 Special Thanksはいつもなら本編後なのですが、今回の本編内容はいよいよ、ちょっとアレなので冒頭でご紹介させていただきます🙇‍♀️ 💦

 ↓こちらです! Q4 オススメの作品に取り上げていただきました!( ノД`)

 また、先日はフォロワー紹介記事にも載せていただき、本当にありがたいです😊 こちらです↓

 みっちゃんさま、本当にありがとうございました!😭😭😭 これからもどうか仲良くしてくださいませ🙇‍♀️

それでは本編に移ります。

↓マガジンはこちらです。

この作品はフィクションです。実在の人物団体事件出来事とは一切関係ございません。


第六章 「勃発」 ②


 静岡を出発した派遣部隊は、群馬県の相馬原駐屯地で一旦夜営すると、明け方には再び新潟を目指して出発した。

 周囲を警戒しながら隊列を組み、関越道を北に進む。

 先頭は中山が座乗する七四式ななよんしき戦車。その後を本部管理中隊、第一戦車中隊、第二戦車中隊が続く。

 指揮官先頭を地で行く中山は、制式化から既に五十年以上が経過したこの旧式戦車を殊の外愛しており、周りにいくら言われても一〇式に乗り換えようとはせず、各中隊長たちもそれに倣って七四式を使っていた。

「米海兵隊も実戦経験豊富な旧式兵器を好んで使っているだろうが。七四は実戦経験こそないが、五十年の運用実績は伊達じゃない」

 そう言って豪快に身体を揺らし笑ったものだ。

 藍のことを娘のように気にかけてくれた中山。それがどれだけ救いになったことか。

〝強いな、君は〟

 不意に脳裏を過った声。かつて安らぎを与えてくれたその声が、藍の心を激しく乱す。

 違う、あたしは強くなんか無い!

 首を振り、ぎゅっと胸を掴む。

 忘れたことなんか無い、一度たりとて。ギリっと唇を噛み、深呼吸を繰り返して心を鎮める。

「藍ちゃん、そろそろ新潟県に入るぞ」

 相原の声に藍は現実に引き戻された。

 車列は谷川岳パーキングエリアに差し掛かるところで、すぐ先には日本で二番目に長い、全長十一キロの関越トンネルが控えている。 

 ここを抜ければ景色は一気に日本有数の豪雪地帯へと変わる。

「橋本より各車へ。警戒を厳にせよ。繰り返す、警戒を厳にせよ」

 トンネルは非常に危険だ。中で狙われたら逃げ場がない。出口でも体勢が整っていないところを待ち伏せされる可能性がある。

 相馬原で合流した練馬・第一偵察隊の八七式偵察警戒車二両が五キロ程先行しているが、まだ何も起こっていない中では威力偵察を敢行することも出来ず、完全な手探り状態だ。

 全部隊の緊張が高まる。

 新潟市内まではまだ百六十キロの距離だが、もしゲリラ・コマンドーの類であれば何処でどのような仕掛けが待っているか分からない。

 これは実戦だ。撃破されたらバトラーの「判定」だけでは済まない。そこにあるのは現実の死。

 操縦桿を握る光一の手に、じんわり汗が滲む。視線の先には振り袖姿で満面の笑みを浮かべてポーズをとる菜々のスナップ写真。

 矢部からは「死亡フラグだからやめとけ」と揶揄われたが、そんなことがあってたまるかと、年明けから貼りつけたままだ。

 斜め前を行くのは本部管理中隊の九六きゅうろく式装輪装甲車。あれに菜々が乗っているはず。

 何があっても守り抜く。

 胸ポケットに忍ばせた御守に手を当てる。今にも心臓が破裂しそうだ。

 だが、関越トンネルを抜けても何も起こらなかった。

 辺り一面は雪景色に変貌したが、天気は快晴だった。誰もが拍子抜けしつつも、警戒を怠ることなく前進する。

「ついこの間来たばかりなんだよな、ここ」

 相原が照準用ディスプレイを凝視しながらボソッと呟く。

「ここって、スキー場?」

 藍が車長用の潜望鏡で索敵しながら聞き返すと、相原がふっと溜め息をついた。

「ああ。いつも正月休みは家族一緒にスキー場で過ごすんだ。大体、いつも湯沢でさ」

 厳格な鬼軍曹も素は子煩悩な二人の娘の父親。

 家族との思い出の地が、このような任務で上書きされることに、やるせなさを感じていることが容易に想像つく。

「ジンさんのお子さんは高校一年生と中学二年生だったわね? 二人ともスキー?」
「俺だけスキーで、嫁と娘二人はもっぱらボードだよ。上の娘はハーフパイプ行くんだぜ?」
「湯沢ってハーフパイプあるんすか?」
「正確に言うとこのひとつ先の石打いしうちだけどな。なんだコウ、お前もやるのか? ボード」
「かじる程度ですけど。仲間と一緒に」
「そうか。じゃあ今度みんなで来るか」
「いいっすね。あー、片倉も誘っていいですか? あいつ、たぶん滑れると思うんで」
「おっ? やる気満々だな、若人よ」
「ちっ、違いますって!」

 二人のやり取りに藍はたまらず吹き出した。

「あ、あたしはパス。スキーやったことないんだよね、あたし」
「え、まじっすか?」
「何だ、それなら俺が教えてやるよ。これでもインストラクターの資格持ってるんだぜ?」
「ジンさん、冬季遊撃レンジャー徽章持ってるものね。じゃあ、お願いしちゃおっかな?」
「任せとけ。他ならぬ藍ちゃんの頼みだ。一日で上級者コースに行けるようにしちゃる」
「あ、じゃあ俺も……」
「駄目だ。お前はあの娘とゲレンデで乳繰り合ってろ」
「何すか、それー!」

 皆でひとしきり笑い合う。不真面目かもしれないが、誰もが不安に押しつぶされそうな状況下。リラックスは必要だった。

「そろそろ石打トンネルね。今度も千五百メートルだからそこそこ長いわよ」

 藍の言葉で再び緊張状態に戻ったが、またしても何も起こらなかった。

 その後もいくつかのトンネルを潜ったが、何事も無く隊列は進み、気がつけば新潟市内まで百キロを切っていた。

 あと一時間も走れば第二十三普通科連隊が駐屯する長岡に着く。

 目的地の状況が判然としない中、一気に新潟市内に入るのは危険なので長岡辺りに前進拠点を置くことになるのだろうと、藍は漠然と考えながら指示を待った。

 だが、指示は無い。長岡までは二十キロを切っている。まだ先に進めるとの市ヶ谷の判断なのだろうか?

 いや、待って……。

 そもそも何であたしは長岡まで前進できると考えている・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んだろう?

 藍の全身を突き抜ける悪寒。

 もしかして……誘い込まれている? 考え過ぎか? 

 慌ててマップを呼び出し、自分なりに奇襲ポイントを探る。

「橋本より一小隊各車へ。油断するな、全方位隈なく警戒せよ。少しの異変も見逃すな」

 あたしならどうする? あたしが彼なら、あたしが彼なら……!

 それは小千谷の山本山トンネルを抜け、再び雪景色の田園地帯に差し掛かった時だった。

「ん? これ、ヘリのローター音ですか?」

 光一の何気ない呟きに藍は耳を澄ませた。

 聞こえてくるのはディーゼルエンジン音。そして履帯りたいと地面の摩擦が織り成す轟音。その中に微かに混じる、いつもとは異なる音。

 ヘリが合流する予定は聞いていない。隠密行動中のSのヘリボーン部隊だろうか?

 車長用の潜望鏡で全周を見回す。そしてそれは比較的簡単に見つかったのだが。

 え?

 行く手に現れたのは二機の対戦車ヘリコプターAH1S「コブラ」。

「何だ、味方か」

 相原がホッとしたように呟く。

 だが、藍は違和感を拭えなかった。モニターを確認すると敵味方識別装置IFFは反応していない。

 あれは……まさか……!!

 周囲に遮るものは何もない、大雪原の中の一本道。

 そう、それは先刻、藍が思い描いた絶好の狩場――――――


「まずい! ジンさん、コブラに照準!! コウ君、大隊長車の前に着けて!!」

 藍の命令に、二人が呆気に取られる。

「マジかよ?」
「え? だってあれ味方……」
「いいから早く!!!」

 語気を強める藍に光一は慌ててアクセルグリップを回すと、本部管理中隊の九六式装輪装甲車を追い越しにかかり、相原は釈然としない様子でコブラに照準を合わせた。

 頼む! 間に合って!

 だが――――――

 コブラの両翼がキラッと光った。

 しまった……!!

 放たれた二発のTWO対戦車ミサイル。その先にあるのは中山の座乗する七四式戦車。

 時間にして一瞬の出来事だったはずだが、誰もがまるでスローモーションを見ているかのような錯覚に陥った。

 この距離で狙いを定めた二発のミサイルから逃れる術などない。

 後続もつかえている。回避しようにも時間も逃げ場も元よりなかった。

 皆が呆気に取られる中、中山の七四式が爆発炎上した。

「ジンさん!! 撃って!!」
「ヤロオオオオオオオオオオオオ!!」

 パアアアアァァァァァァァン!!!!

 雪原を切り裂いた一〇式戦車の砲撃音。相原の放った徹甲弾APFSDSはその場を離脱しようとしていたコブラの側面をぶち抜いた。

「ジンさん!! もう一機!!」

 火だるまになって墜ちて行くコブラには目もくれず、藍が叫び、相原が照準を合わせる。

 しかし、一歩遅かった。再び放たれた二発のTWOミサイルは彼らの頭上を過ぎ去ると、本部管理中隊長が乗る七四式に命中した。

――――――ッ!!」

 藍の掛け声で相原がトリガーを引く。だが、今度は寸でのところで躱された。

 まずいっ……!

 コブラはあざ笑うように大きく旋回すると、藍たちの一〇式に向かってきた。

 隊列は大混乱に陥っていて、背後に逃げる場所は無い。頼みの第一高射特科大隊は位置的に恐らくトンネルの中だ。

 こうなれば一か八か、コブラの死角である懐に飛び込むしかない。

「コウ君全速よ!! もっと速く!!」
「ダメです!! これ以上は履帯が外れます!!」
「くっ……!!」

 られる――――――

 コブラの両翼に吊り下げられたロケットランチャーが冷酷に藍を見据えていた。


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雪の降る街で 第一章 「鼓動」 ①|京

あとがき

 まずはじめに、中山たち大隊幹部が乗る74式戦車ですが、こちらは実は16式機動戦闘車(戦車ではありません)への置き換えが進み、2024年3月をもって全車退役となっています。

 今回の改訂・再発表にあたり、どうするか非常に悩みましたが、私自身が諸般の事情により、この“ナナヨン”が大好きなので、ここはまだ現役扱いで修正無しに登場させました。

 1年ちょっとの誤差なのでどうか目を瞑っていただきたく_:(´ཀ`」 ∠):💦

 そして……ついに始まってしまいました。仲木戸が呟いていた嵐。

 光一、藍、相原はどうなってしまうのか? そして菜々ちゃんは?

 次回は10月1日(水)。引き続きお付き合いいただけますと嬉しいです🙇‍♀️