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永 遠 に A カ ッ プ

同級生に『マツダセイコ』さんがいた。
かのアイドルと同姓同名。
市役所や病院で
名前を呼ばれるのが嫌だと言っていた。

彼女は、胸が大きかった。
胸が乏しい私は
羨望の眼差しで見ていたが
大きい人は、小さい人とは
違う悩みがある。

胸が重すぎる故の
肩凝りと頭痛。
姿勢の悪さ。
服のボタンが閉まらない。
太って見える。
意図せずとも集まる
無遠慮な視線。
コンプレックスと
理解の間にずれがあり、
深刻に受け止めてもらえない。
それゆえの孤独感。

保健の先生に
胸を小さくしたいと
真剣に相談したと言う。
こっぴどく叱られたらしい。

中学一年生の年度初め。
全学年一斉に行われる
体力測定と
身体測定の日のことだ。
保健室で身長体重、
そして胸囲が測られていた。

年頃の娘が
ショーツ一枚で並ぶ。

係は年配の女性教師だった。
教師の横には記入係として
3年生の生徒2人が
立っていた。

私の番が回ってきた。

おずおずと両手を上げた。
貧相な胸を他人の目前に
さらさなければならない。

平たい顔の3年女子が
聞えよがしに言う。
『ぺったんこ・・・!』
私の胸まわりに
メジャーを回した
女性教師が声を張り上げて
数字を読み上げる。
『65.5!!!』

先生は現代国語を教えていた。
だけど、少女の気持ちを
慮ることは
困難だったらしい。

コンプライアンスなんて
芽生えてもいない。
現代なら児童生徒の
人権問題になるだろう。

今なら機能的な
ブラが揃っている。
寄せて上げて盛ろうが、
コンパクトに畳もうが
自由自在。

若い頃は胸の大きさが
人生の一大事だった。

だが還暦を過ぎた今は、
締め付けのない下着のほうが
よほど重要なのだ。
痛い靴も重い鞄も願い下げだ。

人生の後半戦。
病を得てわかった。
身体の価値は、
人に見せるためではなく、
自分が快適に
使うためにあるのだ。






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