そこにいる
昨夜、私は寝不足のうえに
すごく疲れていた。
夕食の片付けをさっさと
済ませれば、後が楽なのに
どうしても身体が動かなくて
ソファでだらだらと仮眠していた。
11時少し前にようやく起き上がり
洗い物を済ませ、入浴した。
湯船に身体を浸していたら
台所から聞きなれた音がする。
台所のとなりが浴室になっている。
その角にお猫さまの
フードと水の器を置いてある。
お猫がいなくなった後も
食器はそのまま。
水もそのまま。
いまだ、片付けることが
できない。
壁を隔てた向こうで
お猫が水を飲む
聞きなれた音がする。
盛大にがぶ飲みするときの
あの音。
ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ
私はシャワーヘッドからこぼれる
水の音かと思った。
耳を澄ませて聞いても
やっぱり外から聞こえる。
風呂から上がって髪を拭いてから
娘の部屋へ行ってこう言った。
「私、頭がおかしくなった
わけじゃじないけれど、
聞いてくれる?」
そして、今のことを話した。
娘は少し涙目になり
私も話しながら泣いた。
毎日、聞いていた
かわいい水の音は
私と娘の脳に
深く刻まれている。
きっとシャワーの
水の音がきっかけになり、
水を飲む音が
私の脳内で現実のように
再生されたのだ。
幻聴なのよ。
そんなことは、わかっている。
それでも私はうれしかった。
お猫の気配を感じられて
うれしかった。
