オリジナル漫画「scope」原作-20
【寺野篇】VS特殊詐欺組織(蒼)第2話
< !? >
縁側がある裏庭に移動をすると… 表の手入れがされていない庭とは違い、きっちりと手入れがなされた、無数の盆栽が飾られていた。 和の詫びさびが遺憾なく表現された大量の盆栽。まさに、盆栽の樹海だ。ひとつひとつが芸術品のような輝きを放っている。
寺野 「 …唯一の趣味でして、えへへ。お恥ずかしい。 」
条 「 うへぇ~ かっけぇーじゃん! 金が無いって、おっさん、これメチャクチャ価値あるんじゃねぇか?? 」
寺野 「 そうですね、でも分かる人が見ない限り、これも表の庭に生えている雑草と同じ、ただの植物なんです。 」
条 「 なるほどねぇ。 …ところで、率直に聞くが、何で闇の組織にそんなに執拗に狙われてるんだ? 」
寺野 「 正直分かりません…。でも私、恐らく普通の人生を歩んでいないので、何かそれが影響しているのかも。 …実は、私、捨て子なんです。生まれて間もなく、“病の樹海”に捨てられていたらしいんです。その時たまたま拾ってくれた老婆が、私にとっての育ての母でして… 」
条 「 は? 思う節が無いのか? にしても、生まれて間もなくで壮絶過ぎるじゃねーか… これ以上聞きたくな… 」
寺野 「 何が当たり前で、何が特別なのか。人はそれぞれの価値観によって、大きく左右される社会的な生き物なんです。だから盆栽に対する評価も千差万別なわけで… 私もその一般常識云々が、大分世間一般の人たちと違うのかもしれないですね。 」
【 --- 回想/寺野幼少期、病の樹海にて --- 】
「病の樹海」内、ノメ婆の家らしき掘立小屋の中で、囲炉裏に掛けた鍋を囲んでいる。< グツグツグツ >森で採って来た怪しい野草が目立つ。
ノメ婆 「 いいかい?辰男。機械ってのは、支配するのが人間で、絶対にそれが逆転してはならないものなんだよ。分かるかい? 」
寺野 「 ねぇねぇ? ノメ婆、これキノコ鍋なの? ぼくさぁ、お野菜大好きなんだ! へっへ え? キカイってなに?美味しいの? 」
ノメ婆 「 …いいかい? 機械ってのは… 」
寺野 「 あぁー!! これゼンマイでしょ? くるくるしてるやつー 」
< ボゴンっ! >
ノメ婆 「 黙れ クソガキ! 機械は機械じゃろがい! 」
こん棒のような野太い木の枝でぶん殴られる、寺野。
寺野 「 プギャッ … ねぇねぇ、ゴハン食べたら遊ぼうよ~ 」
ノメ婆 「 タフか! ( やはり、こいつの扱いは、ちゃんとしておかないと ) 」
数年後のある日。 居間で何やら古い文献を読んでいる、ノメ婆。 少し大きくなった寺野が暇そうに寝ころんでいる。
寺野 「 ねぇねぇ? なんでボクは“勧善辰男“じゃなくて、寺野なの? 」
ノメ婆 「 ………………………。」
寺野が 「病の樹海」に捨てられた際に着ていたベビー服を見つめるノメ婆。 胸に刺繍がしてある。 “Tyranno”
寺野 「 ねぇねぇ、なんでなんで? 」
ノメ婆 「 お前は この樹海から生まれ落ちた、特別な存在なんだよ。 大自然の純粋な力を蓄えて大きく育つんだ。 決して、紛れてはならん。 」
寺野 「 え? 答えになってないじゃん。 それっぽい難しい事言ったって、誤魔化せないよ! 」< ボゴンっ! >
ノメ婆 「 …黙れや クソガキ! テラノはテラノじゃろがい! 場外まで放り込んだろか! 」
こん棒のような野太い木の枝でぶん殴られる、寺野。
ぶっ飛んで樹海に放り出される、寺野。 < のそのそのそ > すると、どことなく森の奥からゴメス・オオトカゲの大群が現れた。すっかり周りを取り囲まれている。
寺野 「 うわっ なんだキミ達。いっしょに遊ぶかい? 」
怖がりもせず、子犬を可愛がるように、手を差し伸べている。
先が二股に割れている長い舌をペロペロと出し、鼻奥でシューシューと威嚇をしているようだが、トカゲたちの寺野を見る目が、どことなく穏やかなようにも見える。
次の瞬間、目の色を変えたノメ婆が着物の裾を両手で持ち上げながら、ダッシュで飛んで来た。
< ドドドドドド >
ノメ婆 「 スピヤァァアアー!! 」
一匹のゴメス・オオトカゲのドテっ腹を思いっきり蹴飛ばす、ノメ婆。<オゲッ> 一口ゲロのように火を吹いて飛んで行く。
寺野 「 なんだよ!急に。可哀そうじゃないか! 」
ノメ婆 「 やはりな。こういうカラクリ仕掛けのオモチャが紛れれておるわ。 …あれも怪しくて仕方ならん。」
ボロっとマイクロチップのような鉄片を吐き出し、そそくさと逃げて行く ゴメス・オオトカゲ。ノメ婆の目線の先、樹海の奥深くに見え隠れする、複数の電波塔。ここ最近建てられたようだが、人目が付かないこの場所を敢えて選んだかのように静かに身を潜めながら建っている。
( 現代に戻る、盆栽を眺めながら、縁側に座って話している2人 )
条 「 おっさん、病の樹海で育ったのか? オレもあの場所には因縁があってねぇ。にしても、出版出来るレベルの幼少期だな。 」
寺野 「 学校には一応行っていたのですが、夜間制だったし。 何より、あの件があってからノメ婆からあまり人と仲良くするなってきつく言われてて… 」
条 「 あの件? 」
夜間制の学校に通う、寺野少年。 同級生たちは家庭に何かしらの原因があり、心に問題を抱えた子供達が多くいたが、その中でも寺野は異質な存在であった。 いつものように、ゴメス・オオトカゲを引き連れ登校する寺野。 すっかり懐いているようだ。学校に連れて行くのはマズイという事で、途中で森に帰るように促す。その光景を陰から見ている別の少年の影が。
影 「 なーにあれ? ヒッヒヒ 」
学校も終わり、下校途中で、めずらしく同級生に声を掛けられる寺野。
同級生 「 おぉーい、お前ー! これ何だよ? ヒッヒヒ 」< !? >
同級生たちが、瀕死状態のゴメス・オオトカゲをヘッドロックして見せて来た。 ボッコボコに暴行され、身体にカッターで誹謗中傷の文言が切り刻まれている。
寺野 「 …おい! 何するんだよ!!! この子が何をしたって言うんだ? 」
同級生 「 お前さぁ 樹海に住んでるんだって? “あの”気狂いババアと一緒に。 ププッ 」
寺野 「 ………………………。」
同級生 「 しかも何だよ、この臭ぇ生き物は。 お前にお似合いだなぁ ハッハハハ あまりに臭ぇからさぁ、駆除してやったんだよ。 」
寺野 「 ………………………。」< メキっ >
小刻みに身体が震えている。
同級生 「 お前さぁ、キモイから二度と学校来んなよ! …な、なにぃ !? うわぁぁああああああ 」
< ポワー > ホワイトアウトする。
( 現代に戻る、盆栽を眺めながら、縁側に座って話している2人 )
寺野 「 気付いたら、同級生たちが気絶して倒れてました。その日からです、ノメ婆が夜な夜な私に向け、怪しい儀式を始めるようになったのは。」
条 「 すまん、全然、意味が分からん… なので、茶のおかわりくれ。 “ブルーパイン・スムージー” でもいいぞ、知らんだろうが。」
寺野 「 結局その儀式は、私を呪い殺すために行われていた闇の儀式だと、ノメ婆と別れてから後々耳にしました。もしかしたら、これが闇をおびき寄せる原因なのかもしれません。 …ちょっと信ぴょう性に欠けますけどね。 」
条 「 だから、意味が分からんって! せんべいねぇんか? ってか 茶ー! 茶ぁ持ってこい! 」
寺野 「 …あっ すいません。持ってきます。“ブラッディ―バナナ・ラテ”ならありますけど。 」
条 「 てか、あんのかよ!そんな特殊な飲みモンがよ! 茶でいいよ!茶で! 」
寺野 「 あっ これもありました。 焼きそば “ボゴーン” …食べないですよね? 」
条 「 …うぅ 食うよ! 何気にそそるラインナップ取り揃えてんじゃねーよ。 …残り湯はスープに使うから捨てんなよ! ったく。 」
< ズゾゾゾゾ >
縁側にてお気に入りのカップ焼きそばをすすりながら、2人の会話は続く。
条 「 は? 結婚式も金だけ払ってキャンセルされた? 娘は連れ子で、新婚早々奥さんとは別居状態で月に2~3回しか会ってない? 」
寺野 「 えぇ、私 一般常識が無いので、これが当たり前なのかなぁって。 そう思ってました。 」
条 「 …完全にハメられてんな、こりゃ。 呪いかどうかは分からんが、思ったよりも闇が深く、そして濃ぃ~ぞ。 」
< ピンポーン! ガンガンガンガン! >
「 おーい! 寺野さんよぉ~ いるんだろー!!! 毎度時間取らせんなよぉ!! 」
取り立て屋が来たようだ。
条 「 おっ ホンモノがおいでなさったようだぜ。 …どうだ?おっさん。ヤツらに復讐してみねぇか? ニヤっ 」
寺野 「 えっ …でも。 私には何も出来ないし… それでまた厄介毎が増えても嫌ですし…。 」
条 「 あの時の、トカゲを虐待した同級生の顔を思い出せ。ヤツらはその何倍もの嫌がらせをアンタにしてるんだ。 今じゃねぇのか?立ち上るのは!」
寺野 「 …………… でも。 」
条 「 やらねぇってんなら、それでいいよ。 オレはオレでヤツらに用事があるからな。行かせてもらうぞ。 」
寺野 「 っと …待ってください。わ、私が行きます。 」
ガバッっと条の肩を掴んで制止する、寺野。
条 「 ニヤっ そうこなくっちゃ! よしっ 茶菓子と焼きそばのお礼だ、これ着ろよ。 」パーカーコートを渡す、条。
寺野 「 えっ はぁ まぁ… 分かりました。お揃いですか? 」
まんざらでも無い表情で、そそくさとパーカーを羽織っている様子の、寺野。
< ガンガンガンガン! > 「 うぉおーい! ささっと出て来いよぉー!!! 居るのは分かってんだー! おい!!! 」執拗にまくしたてる、取り立て屋。
寺野 「 は、はぁーい。ちょっと待ってください。 」 パーカーコートを羽織り “すっかり”イメチェンした寺野が、満を持して玄関先に登場した。
取り立て屋 「 やっぱ、いるんじゃねぇか < !? >プッブハハハハ おー、お前誰だよ!! 腹痛ぇ 」
酔っぱらった勢いで、うっかりキッズサイズを購入してしまった、条。ランニングシャツに縦じまのトランクス姿、小さいパーカーコートを背中にちょこんと乗せて来た、寺野。 無論、ビジネス用ハイソックスも健在だ。 まるでアホ王国の王子が、極小マントを付けているかのようなコーディネート。しかし寺野には常識が無いので、至極真顔だ。 むしろ、ちょっと誇らしげに胸を張っているかのようにも見える。

条 「( あっ スマン… プッ )」
寺野 「 あのー、どちら様でしょうか? 新聞なら要りませんよ。 ニヤっ 」制服によるパワーなのか、ドヤ顔でまるで初対面かのような対応を取る、寺野。
取り立て屋 「 あん? ふざけてるのは恰好だけにしとけよ! テメェー!! 」
条 「( なんでそんな強気でいけんの? プッしがない係長だらけのハロウィン大会みてぇじゃん… しかもドタキャンされたパターンの。 )」
< ドゴッ > いきなり 寺野のみぞおちに膝蹴りをかます、取り立て屋。 アホ王国の国王の御前でお辞儀をしているかのように華麗に膝まづく、寺野。
寺野 「 それでー、何新聞の方なんですか?」< むくっ > まるで何も無かったかのように立ち上がり振る舞う、高齢者寺野。
( 条無駄にタフか! )
取り立て屋 「 !? なんだ? いつになく減らず口たたくじゃねぇか! 明日からの利子、上乗せだ。 ケっ やっちまえ、おらっ!! 」
< ドゴッ、バキッ、ボゴッ >
寺野を囲み、浦島太郎に出て来る亀のように袋叩きにする、3人の取り立て屋たち。
条 「チッ 無抵抗のしがない係長に3対1とは。このクサレ外道どもがー!! 」
飛び出そうとした瞬間、何かの群れが飛び掛かった。
< シュー! > 押し入れから複数のゴメス・オオトカゲが現れ、取り立て屋たちに飛び掛かった。< ガーッ!> 鋭い爪を剥き出しにし、屈強なアゴで噛み付く。大型トカゲの突然の襲撃に、パニック状態になる、取り立て屋たち。仕上げに、倒れ込んだ取り立て屋の顔にひとくちファイヤーを吐きかける。< オゲッ >
取り立て屋 「 …うぎゃぁぁぁあああ!! なんだこいつらは!! 汚っ 熱っ! 」 黒焦げになる顔。
条 「 ………………………。 」
瞬く間に取り立て屋たちを追い払う事に成功した、オオトカゲたち。うずくまって防御姿勢を取っていた寺野が立ち上がる。
寺野 「 お前たち… 他人がいる前では出て来てはいけないと言っておいたのに。でも、ありがとう。 」
ほほえましい光景だが、その着こなしは変態だ。
取り立て屋に見せた獰猛な姿とは一変し、先が二股に割れた長い舌で、寺野の頬をペロペロ舐めている。 かなり懐いているようだ。
条 「 まだトカゲを従えてたのか。 押し入れからあんなモン出て来たら、誰でもパニックになるわ… 」
寺野 「 従えてるというよりは、勝手に住み付いちゃったんです、あの子たち。全然森に帰ってくれなくて。 」
条 「 んまぁ、トカゲは一旦置いといて。 …こいつらから闇の組織の情報を聞き出そう。ニヤっ 」
焦げた顔でグロッキー状態の取り立て屋たちをロープで縛り上げる、条。上半身を裸にして尋問が始まる。 周りには威嚇するゴメス・オオトカゲたちと寺野の姿が。
条 「 おいっ 起きろ! 」
目を覚ます取り立て屋たち。ぼやけている視力が戻ったと同時に広がる、異様な光景。ゴメス・オオトカゲに取り囲まれ、変な格好のままの寺野が鎮座する。
取り立て屋 「 …ひっ な、なんだ これは!? 」
条 「 これから尋問を始める。 抵抗すると、分かってるな?」冷蔵庫に入っていたエシュルバターの破片を、取り立て屋の胸に投げつける。<ペチ>
< ドドドっ > バターに群がる、ゴメス・オオトカゲたち。 我先にと、甘噛みしながら、長い舌でベロベロと舐め回す。
取り立て屋 「 やめっ …ひぃぃぃいいいいいいい 」
怒涛の如く群がる猛獣に舐められ、恐怖する、取り立て屋たち。
条 「 てか、なんでこんなシャレたバター常備してんだよ。 顔に似合わず、相変わらずの品揃えじゃねーか、おっさん。 」
寺野 「 そうですか? 私食べ物には割とこだわるんですよ。 」
条 「 ふーん、まぁいいや。で、どうする? このままバターと一緒に食われるか、質問に答えるか? 2択だ。 」
( つづく )
