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オリジナル漫画「scope」原作-19

【寺野篇】VS特殊詐欺組織(蒼)第1話


何をやっても、ウダツが上がらない中年サラリーマン、寺野辰男<テラノタツオ>。 小心者で、常にネガティブ志向、負のオーラを纏っている。さらには運にも見放されている始末。ある日、義父がオレオレ詐欺に、妻がフィッシング詐欺に、娘が闇金からの売春、自らがボッタクリBARの被害に…と立て続けに、家族を巻き込んで
特殊詐欺被害に遭う。 離婚、自殺…家庭崩壊、仕事もクビになり、全てを失った中年男には、ある秘密があった。その秘密とは…

【 --- 回想 --- 】

< 寺野家 > 南無妙法蓮華経~ ポク ポク ポク チーン。誰かの葬儀が行われている。

ブランド物欲しさに闇金に手を出し、減る事の無い多額の借金を背負わされた挙句、売春を強要され… 人生の180%を先行して吸い取られた娘の叫子。“苦しむために生きる”という今後の人生を察した叫子は、ある日、自死という最終手段を取ってしまう。 母、流花が発見したと同時に、ガサツなノック音が聞こえる。

取立屋 「 < ガンガンガンガン!> 奥さぁーん! 今月どんだけブランド物買ってんのよー 早く払え!! おいっ! 」

フィッシング詐欺に遭い、全ての個人情報を抜き取られた母は、身に覚えのない多額の請求が毎日来るようになってしまった。 愛娘の死を驚く事さえ許されない。

母 「 …………… もうぅ いやぁぁぁあああああああああ!!!! 」

極限の状態に、ついに発狂してしまう。

< 寺野家 > 南無妙法蓮華経~ ポク ポク ポク チーン。

娘の葬儀が執り行われる中で、妻から離婚届けを突き出される、寺野。妻側の参列者からは塩を投げつけられる始末。 …まるでマンガのような、これでもかと畳みかけて来る負の連鎖。 虚しく鳴り響く木魚の音も、娘の魂を鎮魂させるためではなく、自室に訪れた死神からのノック音にさえ聞こえてしまう。

寺野 「 ノメ婆… これも私らしい人生なのかな? …それともやはりノメ婆の呪い? 」

生気無くつぶやく。

幼少期、育ての親として慕っていた老婆「 勧善のめか<カンゼンノメカ> 」通称、ノメ婆。
寺野の生い立ちは、このご時世とは思えない程 凄まじいもので、生まれたての赤子の状態で、不法投棄のメッカである「病<ヤミ>の樹海」にて、廃棄物の中に紛れていた。
樹海近郊のとある村にて、迫害され孤独な人生を過ごしていた老婆「のめか」に偶然拾われ、寺野の人生はスタートする。

このノメ婆だが、中々トリッキーな人物である。遠い昔、村の誰からも好かれる人徳者であったが、旦那さんとの死別、テクノロジーの発展により、その言動がどんどん変わって行った。 月日は経過し…狂ったノメ婆は自身を新興宗教の教祖と称し、村民たちへの度重なる迷惑行為を繰り返す、厄介な存在になっていた。さらにその行動はどんどんエスカレートして行き、繰り返される過激な言動により、ついに危険人物として認定され、村八分状態になる。

居場所を無くしたノメ婆は、引き寄せられるように「病の樹海」へと姿を消した。この樹海は巷では有名な、誰も近寄ろうとしない、いわく付きの自殺スポット。そこで寺野と出会う事になる。


寺野(赤ちゃん)「 ………………。」

廃棄物の中にポツンと埋もれて寝ている。一切動かないが、かろうじて息はしているようだ。

ノメ婆 「 !? 何でこんなところに赤子が… 村の忌み子か? いやっ これは…  」

偶然拾った赤子(寺野)を家に連れ帰る、ノメ婆。あまりにも哀れに思ったのか、子供が好きなのか、大事に育てている様子。何とも微笑ましい光景である。

…夜な夜なかけられる、呪いの呪文さえ無ければ。


【 --- 場面転換して、条一狼サイド --- 】

デュラ・チャイナでの死闘を終え、自宅に戻ってしばし静養している、タンクトップ姿の条。趙の薬膳料理のおかげか、体力も超回復している様子。

条 「 う~ん、何か引っ掛かるんだよなぁ、あのゾクっとする気配。まさかなぁ… 」

“もも”がライフルにてゴウラクを狙撃する光景を思い出し、何とも言えない表情をしている。

…いずれまた会うだろうと、一旦その事は忘れ、次の案件に集中する。それと、何やら試したい事があるようで、目を輝かせてウキウキしている様子。

( デュラ・チャイナ参戦前、瞬斗とのやり取り )

条 「 ヤツらは中々しっぽ出さねぇからな。うーん、逆転の発想で、被害者側の情報当たってくれねぇか?  」

瞬斗 「 えっ?被害者? んなもん、すぐリスト出せちゃうけど。 えぇ ここ最近の違和感だと、このおっさんかな? なんだ?集中砲火されてるじゃん。 」

条 「 よし、そいつんとこ行ってみっか。闇側が執拗に狙ってるって事は、何か別の理由があるかもしれねぇし。 」

豹尾が残した愛車を眺める、条。先日のロボットに乗ったゴウラクとの戦闘を思い起こし、ボンネット中央にマーキングされている箇所を見て何やら考えている。

条 「 ただのデザインだと思って、あんま気にしてなかったが、これって もしや…? やってみっか。 ニヤっ 」

期待しながら、 “ブラックパンサー961”のグリップ部分を差し込んでみると…  ピッタリとハマるようで、そのまま奥まで押し込んでみる。 < ガチャン >

< ウィン > ヘッドライトが精悍に点滅する。Genimaと車のシンクロが完了したようだ。ワクワクしながら車内を確認してみると、ハンドルにいくつかボタンが追加されている。 試しに「牙」のアイコンのボタンを押してみると… せり出したバンパー付近の銃口から黒豹の牙弾が発射された。

< ガガガガガガッ!! >

このためだけに古太郎に用意させていた数体の鋼鉄のマネキンが、見るも無残に大破されて行く。

条 「 おっほー! 車が拳銃になっちまったぜ!!  …しかし数発撃つだけでもシンドイな。だが、まだまだ色々ギミックありそうだぜ。げっへへへ 」

人気ハイブランドの金棒をGetした鬼のように、いつに無くハイテンション状態の条が、寺野の住む 「病の樹海」付近の村へと爆走する。

寺野に会いに行くべく、樹海へと車を走らせる、条。 次第に周辺の光景は森林が増え、みるみるうちに緑が深くなって行く。 見た事も無いような樹木の群生、何千年も前から根を張っているであろう、バっキバキに筋張った巨木。不気味さと同調するように深くなる緑が、やがて大海のように眼前に広がっていく。「病の樹海」 人生に迷った人間が、自身の最終地点として最期に選択する負の大地だ。 周辺の看板には自殺を抑制させるような文言が目立つ。

条 「 中々な雰囲気になって来たじゃねーの。 …でも、1人で肝試ししたって、何も面白くねぇけどな。 チッ …あーっ!ニジイロカブト! 」

珍しい昆虫を捕まえ、さらに上機嫌な条が、寺野が住んでいる小さな集落を目指す。しばし樹海を眺めながら、ふと懐かしい場所を思い出す。現在は閉鎖されているが、警察学校時代の訓練場が、この樹海近辺に存在していた。父を失い、復讐を誓った条は、18歳の時、警察学校に入校していた。闇サイトを取り締まっている、国家警察 「特殊サイバー取締局」への配属を希望に、奮闘する日々。 条は持ち前の運動神経と、闇への復讐という確固たる信念により、その力を遺憾なく発揮し、非常に優秀な生徒であった。しかし、あるきっかけを境に、父が残した遺言に従い、中退していたのだった。

条 「 餌月<エゲツ>訓練場か…  コンプライアンスなんてあったもんじゃねぇよ、あの時代は。 吐き気がするぜ、うげぇ。 」

「餌月訓練場」… 警察学校に設けられた特別訓練施設。主に戦闘訓練が執り行われる。 樹海という閉鎖された地にて、年に1回、完全に違法な訓練も行われていた。 武器を持たせた死刑囚を樹海に放ち、訓練生と戦闘させるという、生死を掛けたサバイバル形式の実践訓練。 倫理の欠片もない。
訓練場から逃げ出した生徒のマスコミへのリークにより、訓練場は閉鎖された。尚、世間的には、“訓練生が不慮の事故で死亡”のような偏向報道により真実は闇へと葬られている。もみ消し圧力の出どころも不明である。ちなみに、この樹海は自殺者が多く、幽霊の目撃談も多いが、この違法訓練にて生き残った死刑囚が、今も彷徨っているという都市伝説も存在する。首吊り坊主の森と揶揄されることもあるとか無いとか。

条 「 にしても、この辺の森は全然清々しくねぇな… どんより空気も重苦しくて、鼻の長い魔女が住んでそうな陰険な森。まさに、重井沢。どす黒いネズミが乗ったピザでも出て来そうだぜ。 」

樹海を横目にしばらく車を走らせると、徐々に道が開けて来た。小さな集落に到着したようである。これと言った観光地でも無いので、飲食店なども少なく、古民家が立ち並んでいる。車を止め、寺野の家を捜索する、条。子供たちがキャッキャと遊んでいる。 何やら犬の散歩でもしているのかと目をやると、巨大なトカゲにリードを付けて散歩していた。 分かりやすい二度見をする、条。

条 「 そうそうそう、毛の無いセントバーナードなのかなぁー。よーしよしよし 舌も長くてねぇ… ってドラゴンじゃねーか! おいっ!! 」

子供 「 プっふふ ドラゴンじゃないよー ゴメス・オオトカゲだよ。 裏の森にいっぱいいるの。この村では普通にペットなんだ。 」

条 「 なんだ、そのゴリゴリのネーミングは… 見た目そのまんまだけども。 」

子供 「 あとねー ちょっとだけなら火吹けるんだよ! 見てて。  」

悪気無く、オオトカゲのドテっ腹を軽く蹴る。< オゲッ >

条 「 …二日酔いのおっさんじゃねーかー! おえつで火吐くな。 ったく、ファンタジーのファの字もねぇなー 」

子供 「 キャッハハハハ オエぇ~だって。 」

条 「 なぁ、お前らさぁ 寺野っておっさんの家知らない? 」

子供  「  ………………………。 」

寺野の名前を出した途端、そそくさと立ち去る子供たち。

条 「 なんだ なんだ? そんなに嫌われてんのか?? そのおっさん。 」

仕方なく、寺野の家を探して歩く、条。 差ほど大きな村では無いが、1軒1軒当たって行くにはかなりの時間を要する。 しばらく探して嫌気が指した条が、瞬斗に連絡を取る事に。3D電話を掛ける。< ボワン >応答した瞬斗が面倒くさそうに現れた。 ケツアゴデス仮面を被っている。

条 「 おい、寺野っておっさんの家なんだが、ピンポイントでマッピングしてくれねぇか? 」

瞬斗 「 あ? んなくだらねぇ事で呼ぶな!こっちも忙しいんだよ! てめーで探せ!!  」 < ボワン >

条 「 てめっ! 変なマスク被りやがって生意気な。 チッ 」

< ピピッ > 条の携帯に位置情報が入る。

条 「 フッ やりゃーできんじゃねぇか。 にしても、趣味の悪いマスク被りやがって。 」

瞬斗から送られて来た位置情報を元に、ピンポイントで寺野の家を目指す。

条 「 随分と孤立した場所に、ポツンと家があるな… 行ってみっか 」

昭和時代を彷彿とさせる、田舎の街並み。市役所や銀行など、目に入って来る建物はヒビ割れが目立ち、どことなく古びている。郵便ポストは円柱型である。しばらく歩き、大きな橋を渡ると、民家が1軒も無くなっていた。 この先に寺野の家がある模様。< てくてくてく > それらしき建物が見えて来る。雑草がボウボウで、全く手入れがなされていない庭、郵便受けにはチラシがこれでもかと詰め込まれている。ガラガラガラと横開きの戸があり、昔ながらの平屋の日本家屋だ。クリーム色に黄ばんだ表札に、しっかり「寺野」と書かれている。

インターホンを鳴らす、条。 < ピンポーン >

条 「 おーい! いねぇのかー! おっさーん 」

< ドンドンドン > 反応が全く無いので、戸を叩いて呼びかける。

しばらくやかましくしていると、玄関口のガラス戸の奥に薄っすら人影が現れた。

寺野  「 …どちらさんですか?? 取り立てるって言っても、ウチにはもう無いも無いですよ…。 」

元気の無い初老のおじさんの声が聞こえて来た。

条 「 なんだよ、いるんじゃねーか! 歩き過ぎて疲れたから取りあえず入れてくれよ。茶とかまんじゅうとかあるだろ? 」

ズカズカと家に上がり込む。

寺野 「 ちょっ、誰なんですか、あなたは? いつもの取り立て屋とは見た目も違うようだけど…  」


振り切るほどの制止も無く、まるで自分の実家のように図々しく上がり込む条。もしも寺野の職業が門番なら、初日でリストラされるぐらいのスルー感。意気揚々と上がり込んだ条は、茶の間のど真ん中に座り込んだ。絵に描いたような丸いちゃぶ台があり、ノスタルジーな雰囲気は、どことなく心が落ち着く感じだ。部屋の端っこの方に、ダンボール箱を積み上げたような疑似仏壇の上に、娘さんの遺影が掲げてある。

条 「 …… おっさん、まずは茶菓子持って来いよ。“ヤギの突き”ねぇの?あれ好きなんだよなぁ。 」

寺野 「 はい、たしかこの前の出張の土産が冷蔵庫にあったかも… ちょっと待ってください。」

初対面の男同士が、ちゃぶ台を挟んで座り込んでいる。

寺野 「 そ、それで何の営業ですか? 見ての通り、買うお金も無いですよ。。 」

茶菓子とお茶を出す、寺野。

条 「 おっ! あるじゃーん、これこれ。満月みたいに丸くて美味ぇんだよなぁ。ほらっ食えよ、遠慮せずに。 ささっ 」

寺野 「 え、え? まぁ…。( わたしのお菓子なのに ) 」

条 「  ………………………。 」

寺野 「 ………………………。 」

まんじゅうをもぐもぐと頬張りながら、これと言った会話も無く、しばらく沈黙が続く。

条 「 …悔しくねぇのか? 」

寺野  「 え? せっかくの出張土産を見ず知らずの人に食べられたって事ですか?? まぁ悔しいと言えば… いやっ、それほどでも… 」

条 「 違ぇよ! なぁ、おっさん男だろ? 闇のヤツらにやりたい放題やられて、悔しくねぇのかって事だよ! 」

寺野 「 …闇? …なんでそんな事を知ってるのですか? また何か騙すつもりですか。。 もう私には何も… 」

条 「 はぁ… モンゴリアーーン・チョーーーーーップ!!! 」 < バチーン! > 両手を振り上げ寺野の両耳の下あたりを思いっきり叩いた。

寺野  「 ブフッ …で、なんなんですか?一体。 」

条 「 へ??」

寺野 「 だから、いくら脅しても、私には何もないですから…。 」

条 「 ( ナンデ、ソンナニ、タフなの? ) 」

不意打ち気味にチョップがまともに入ったのに、まるで何も無かったかのように振る舞う、寺野。

アポなしで勝手にズカズカ家に上がり込んで、大事に取っておいた土産物を食い散らかし、さらには不意打ちのモンゴリアン・チョップ… 「やりたい放題やられて悔しくないのか!」って、お前が言うな!って件をケロっとやってのける、条。 常人であれば速攻通報しているはずだ。 そう言った意味でもタフな寺野。

条 「 大事な娘さん、亡くされたんだろ? あいつらのせいで。 」

寺野 「 …私がいけないんです。 私がしっかりしていないから、家族みんなに迷惑を掛けてしまい…。 」

条 「 確かに、おっさんがしっかりしてれば、こうならなかったかもしれない。…でも悪いのは100%あいつらだ! それを間違っちゃいかん!! 」

寺野 「 …あなたは一体何者なんですか? なぜそこまでの事を言ってくれるのですか? 」

条 「 オレも“全て”を壊されたんだ、あいつらに。 だから、その復讐のために、闇を追っている。 」 < !? >

新手の追い剥ぎ感は拭えないが、恐らくいつも来る取り立て屋では無いという事で信頼を得た、条。寺野に促され、縁側へと移動する。


( つづく )


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