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オリジナル漫画「scope」原作-34

【飛山篇】VS臓器売買組織(黄)第4話


寺野 「 なるほど、なるほど。 先程の案内ロボから専用の光線銃を受け取って、戦うって事ですか。…でも帰っちゃいましたよ、どうしましょう? 」

戸惑いながらも、アトラクション体験ルーム眼前までやって来た寺野。 専用の光線銃が無いため、特殊拳銃=植物型拳銃 「BONSAI」をガッツリ構えている。

< ギシィ、ギギギギギィ >

怪しくも無駄に豪勢な、西洋風の扉の前に立つ寺野。恐る恐る扉を開くと… ボロボロに荒廃した教会の礼拝堂が現れた。まるで迷い込んだ獲物を手招きしながら歓迎するかのように、蝋燭の炎がゆらり&ゆらりと不気味に揺れている。

春の選抜を勝ち抜いた不快のエリート校が好むような、凄惨なうめき声や独特の腐敗臭が漂う中、前方にある横長の巨大モニターにメッセージが流れて来る。

【 まもなくゲームスタートDEATH。 光線銃を構えてください。】

< ビー!ビー!ビー!>

鳴り響くサイレン、ゲームスタートの合図だ。電光掲示板の明りがパッと消え、さらに薄暗さを増幅させる館内。すると、左右の壁をひっかくかのようにうごめく、“腐恐和音”が押し迫って来る。わさわさと揺れる館内、まるで大量のゾンビに周辺を取り囲まれ、今にも壁を突き破って雪崩れ込んで来そうな雰囲気だ。

< メキメキ …グギャー …バキバキ >

怯えているのか?武者震いなのか? 何とも言えない表情で小刻みに震えている寺野。そのボディには、依然セーラー服のコスチュームがビビットに輝いている。

寺野 「 ヒッ ヒィーーーーー!! …ヒッヒヒ へ、ヘタすると、私食われちゃいますねぇ。でも、大丈夫です、きっと。このBONSAIさえあれば。 」

< バリ バリ バリ > 正面の壁を突き破って、数体のゾンビが礼拝堂に侵入して来た。ゴム人形で出来てはいるが、改めて間近で見ると恐怖そのものである。腐敗臭を放ちながらジリジリと詰め寄って来るゾンビ様 御一行。すると、一体の老婆風のゾンビがヨダレを垂らしながら前に出て来て、目が合ったと思った次の瞬間、勢い良く寺野に向かって飛び掛かって来た! < ビョンッ! >

寺野 「 き、来たなぁー!!このクソババアぁ!! …え?! ノメ婆? ギャーーーー!! 」
< ドバチーン! >

寺野の育ての親である老婆にそっくりなゾンビであったため、一瞬躊躇するような素振りを見せた寺野だが、逆に必要以上に力を込め、見事一体を撃退させた。
派手に飛び散るゴム人形のゾンビ。 本来専用の光線銃で胸を打ち抜くと動きが止まる仕様だが、実弾を撃ち込んだため、殊の外(コトノホカ)派手に飛び散った。

謎の男 「 おぇ 人形と分かっててもグロテスクだな。 それにしても最先端の技術ってのはスゲーもんだ。 何か暗殺に役立てられれば良いんだがな。 」

超高速3Dプリンターにて、次々と量産されるゴム製ゾンビを、アトラクション裏の制御室にて眺めている謎の男。殺人代行系闇企業(藍)から派遣された、ヒットマンのようだ。 飛山を狙っているのかは不明だが、ターゲットが寺野では無いのは明白である。闇稼業の彼らにとって、「殺人」は「ビジネス」であるため、「弾丸」は「名刺」代わりだ。当然ブリーフケースに入っているのは暗殺用の武器ばかりで、躊躇や容赦は持ち合わせていない。そう言った意味では、優秀な営業マンと言えるのではないか? 彼もまた商談成立のため、全力で受注に向けてクロージングを図って来る。どの世界においても失注は許されないのだ。

…表の世界でも、ブラックに染まる企業が多い事は、社会問題である。


謎の男 「 フンッ 少し様子でも見てみるか。 」
ゾンビと奮闘している寺野を、しばし静観している。

< …ウギャ― ウギャ― …ミシッミシ >

1体やられようが、次から次へとお構いなしに増殖して来るゾンビの群れ。 次第に礼拝堂がゾンビで埋まって行く。

寺野 「 …とてもスリリングなアポラクションですが、ちょっと多すぎませんか…? プレオープンだからサービスなんですかねぇ。 」

低音で粘り付くような呻き声を上げながら、ゆらゆらと身体をスイングさせ、寺野に徐々に迫って来るゾンビたち。 撃たれやすいフォーメーションと“間”を駆使し、的としての役割もきっちり果たす、さすがシューティングゲーム仕様と言ったところか。そろそろ行くか?みたいなアイコンタクトを取り、横一列に広がった最前列のゾンビたちが、足並みを揃え、諸手を上げて襲って来た。

寺野 「 …ヒぃッ  また来ますか! 取りあえず、最高得点狙いますよ? よ~く 引き付けてからっと。 」

< スチャッ > 植物型拳銃 「BONSAI」

ゾンビ < ザッ ザッ ザッ > 「 ブハァー!! グオォー!! 」

寺野 「 この針葉弾は、腐った心に突き刺さりますよぉ、行け! 針( シン )!! 」

< シュトトトトトトトトッ!!! >

鋭く尖った、松の針を彷彿とさせる弾丸が、ゾンビの群れに連射される。次々と刺さっては起爆する、腐敗臭漂うゴム人形ゾンビ。 < グシャ! ビシャ! >まるで腐った肉片のように、飛び散る腐食ゴムの破片が、壁面にビチャビチャと張り付いて行く。 かなりのグロさはあるが、拳銃によるシューティングの爽快感と、追い詰められた状況下にて、ホラー映画の主人公になったかのような高揚感が、同時に得られるアトラクションだ。

寺野 「 …ヒッヒヒ ゾクゾクして来ましたねぇー!! それで、次はどっちのリビングダイニングだ? 」

セーラー服姿にて、ガニ股になって拳銃をぶっ放す寺野。意気揚々と “リビングデッド”“リビングダイニング”に言い間違えている。3LDKいわく付き物件とでも言いたいのだろうか。次々とゴミ人形を撃退して行く寺野の姿を見たヒットマンが何やら作戦を練っている模様。

ヒットマン 「 体さばきこそ素人同然だが、やはりあの拳銃が厄介だな… 気は進まんが、これで行くか… 」

< ウビィー ウビィー ウビィー > 気難しい表情で、次から次へと量産されるゴムゾンビを眺めている、ヒットマン。 次の瞬間、意を決しドロドロに溶けた腐食ゴムを頭から被った。< ドボォボボボォ > 低温のロウのようにガビガビに固まって行く、腐食ゴム。 見る見るうちに簡易ゾンビの出来上がりだ。

ヒットマン 「 うげぇぇぇえええ… ゴホゴホッ …何だよ、この腐敗臭は。 死後3ヶ月程経過した老婆の、弾痕から醸し出る脳みその匂いじゃねぇか。。 」

流石、闇の殺し屋と言ったところだろうか。 腐敗臭の表現だけでも、放送コードに軽く引っかかる言い回しである。一般人では決して体験する事の無い、闇の魔臭。どこから情報を得たのか背筋の凍るような再現性だが、これが飛山がこだわる未来のアトラクションなのだろうか? 込み上げる嗚咽を堪えつつ、首をコキコキ鳴らして準備運動をするヒットマン。< カチャッ > 慣れた手つきで、込められた弾丸の数量を確認する。 殺しのノウハウに長けた疑似ゾンビが、拳銃を携帯し、礼拝堂へと向かった。


(  条一狼 × 飛山サイド  )

条 「 ふぅ~ とことん勘が良いヤツだぜ。 それになんだ?この古武術のような… 格闘技というより合戦中の殺人術って感じか? 」

飛山 「 饒舌でアホな感じだが、やはり、あんた殺し屋か?( でも格闘技術の高さはピカイチなんだけど、殺意があまり感じられないと言うか… )

条 「 しつけぇな! アホでも殺し屋でもねぇわ!! んで、お前の方はどうなんだ?  …もしかして趣味はハッキングとか? 」

飛山 「  ………………………。 」

条 「 知り合いにクソガキがいてねぇ。んで、今そいつのお守りで人探ししてんだけどさ。なにやらPCがお得意なヤツらしいんだよね。 」

飛山 「 …ふーん。生半可知り過ぎてるってのも、問題じゃね? まぁ見た感じハッタリもお得意なご様子だから、何とも言えないけどさ。 」

条 「 けっ 生意気な。正直、お前が何者で、敵か味方かなんて全然興味ねぇんだわ。オレが知りてぇのは深い闇についてだけだ。 」

飛山 「 何となく心当たりが無いわけでも無いけど。 そのクソガキ?の事も、あんたが知りたい深い闇についてもね。 」

条 「 …………………。 お前、縁日に行ったら必ずお面買うだろ? とびきりセンスが無くて気持ち悪ぃヤツ。 ニヤっ 」

飛山 「 さてね。 ところであの変態は大丈夫なの?ひとりでさ。 あのゾンビアトラクションはお気に入りだから、汚して欲しくないんだよな。 」

条 「 変態オヤジの事か?…ダメじゃねぇ? ダメならそこまでの変態だったって事で、ゲームオーバーだな。…だがそんなヤワな変態じゃねぇよ。 」

飛山 「 褒めてるんだか、敬遠してるんだか、どっちだよ。。 テストで腐食ゴムに土佐犬の遺伝子軽く注入してみたけど、無機物には無意味かな。 」


< 初めに寺野に飛び掛かって来た、ノメ婆そっくりなゾンビの回想。奇跡的に土佐犬の獰猛さが付加している。 >

条 「 ゾンビに土佐犬の遺伝子注入だと? …ヤベっ ちょっと行ってみてぇじゃねぇか! < ワクワク >

< ドガガガガッ! ガツッ! バシッ! >

多種多様の格闘技を駆使した、激しい組手を繰り広げながら、探り探りの会話が続く。


( リアルゾンビ・シューティング= “THIS IS ZOMBIES”(仮)内、寺野サイド )

寺野  「 …同じようなレベルで 随分長く続きますね。 一体、何回1stステージをクリアすればいいんでしょうか? うっ 案内ロボがいない… 」

余裕の表情を見せてはいるが、身体の至る所が打撲にて汚れている寺野。ゴム製のゾンビなので、歯や爪などの鋭利な箇所は皆無で、大きめのハンマーで叩かれたような、鈍い打撃のみが有効となっている。本来のアトラクションでは、腐敗臭を放ったゾンビが襲って来る事に変わり無いが、直接人に対して打撃を施すような、凶悪な仕様では無い。今回は試運転として万が一システムが暴走した際の、被害シミュレーションなどの統計を取っているようだ。侵入者の撃退と被害シミュレーションの、一度で二度おいしい試運転が、飛山の思惑である。

< ビー!ビー!ビー! >

鳴り響くエマージェンシーサイレン音と共に、前方にある横長の巨大モニターにメッセージが流れて来た。部屋全体が赤く点滅する。

【 大型ゾンビ襲来!大型ゾンビ襲来! 光線銃を構えてください。】 電光掲示板の明りがパッと消え、さらに薄暗さを増幅させる館内。すると、部屋全体が揺れる地響きと共に、先程までとは全く別物の“絶望唾音”が押し迫って来る。

< グシュルルルル ドズーン! ドズーン! グヌォォォオオオオオオオオオン!!! >

正面の壁をダイナミックに突き破り、5mはあろう巨大なゾンビが現れた。
筋骨隆々で体の端々には血管が浮き出ており、そして鼻から上半分の顔が無い。ゴム製ではあるが、断面が もれなくグロく、そして臭い。

寺野 「 あはは。 大きいですねぇ。…でもこの方、ゾンビになる前は巨人だったんですかね? それと、この大きい洋服はどこで買ったんでしょうか?」

…結構痛いところを突く、寺野。 純粋且つ世間知らずが故のファンタジー演出潰し。時に、BOSS=デカいと言う、わんぱくな思考も必要なのだ。

再度前方にある横長の巨大モニターに、メッセージが点滅した。< ピピッ!> 【 みんなで力を合わせて心臓を狙え! みんなで力を合わせて心臓を狙え!】どうやら複数プレイにて、3回同時に心臓に光線を当てる事で、BOSSが撃破出来る設定のようだ。

寺野 「 みんなで協力って、誰もいませんよ… でもね、私は今後、闇を相手にするんです。 …そう、自分の意思で戦うと決めたのです。例え1人になったとしても、この肉削がれようとも、家族を救うまでは絶対に逃げないし、負けません!!も、もう屈する人生は捨てましたぁ!!」

中々の決め台詞を吐いた寺野への忖度は一切なく、アトラクションの度を大きく超え、容赦無く殴り掛かって来るBOSSゾンビ。

< バゴォォオオオオン!! >

< ヒヤッ!!> 固い決意に反し、ビビッて屈んだ事でパンチを見事かわす事に成功した、寺野。 人生には決して屈しないが、膝は簡単に屈する主義だ。手ごたえが無かったBOOSゾンビが、悔しがり寺野を探す素振りをしている。 …鼻から上が無いのに。屈んでいる寺野を見つけると、さらに殴り掛かって来た。

< グヌォォオオオオオ!!>

下を向き屈んでいる寺野は、追撃パンチに全く気付かずに、その場に屈している。 そろそろ大丈夫かな?と上を見上げると…
まさに今、BOSSゾンビの巨大な拳が振り下ろされている最中であった。 絶体絶命、直撃不可避の最悪なタイミング。 その時、寺野の目が鋭く光った。

< バチンっ!!!>

ブルドーザーの後ろタイヤを彷彿とさせる、分厚いゴムとゴムとが正面からぶつかり合う、鈍い重音が鳴り響いた。あまりの威力にて床にめり込む、BOSSゾンビの巨大な拳。 そのデカさ、地方駅のみどりの窓口の平米数の如し。めり込む拳のみしか確認出来ず、寺野の姿が見当たらない。キョロキョロと周りを見回すBOSSゾンビ。
…鼻から上が無いのに。< メキメキメキ > ゆっくりと床から拳を引き抜くと、押し花のようにペラペラになった寺野が底面にへばり付いていた。。 ピクリとも動かない。 誰がどう見ても即死コース、テーマパークがOPENしていたら、確実に大事故として報道されるレベルであろう。あの鋭く光ったように見えた寺野の眼光は、一体何だったのだろうか…? と疑問は残るものの、ミッションを成し遂げたBOSSゾンビが控室に戻ろうとすると…

< ムクッ!? > 首の後ろを押さえながら、寺野が立ち上がった。 まるで何事も無かったかのように元気な様子。 が、未だセーラー服姿は健在だ。

寺野 「 いやぁいやいやいや、驚きましたよ。 いきなりジャンケンして来るなんて、何か順番決めでもあったんですか? ははは 」

後ろ向きで仁王立ちしている寺野。いつもより気持ち野太く見える首元。首から肩に掛けて改めて見ると、富士の裾野を彷彿とさせる、幅広く雄大な景観である。またこの年齢にしてそのタフさは、条も一目置く程の超人レベルである。驚きと同時に、怒りの感情がこみ上げて来た様子のBOSSゾンビ。控室に戻るのをやめ、寺野に襲い掛かる。< グヌォォオオオオオ!!> フルスイングの剛腕パンチが寺野を捉えた。< ドゴーン!!! > 勢い良く壁に吹っ飛ばされる、寺野。 今度こそ致命傷だ… と思った瞬間、また何事も無かったかのように立ち上った。 < ムクッ >

寺野  「 もうジャンケンは飽きませんか? あまり攻撃を受けていても不公平なので、こちらも行きますから。 ……ぐぬぬぬぬぉぉぉおおおおお!! 」

ダメージは軽い様子だが、殴られて腹が立ったのか、植物型拳銃「BONSAI」のトリガーを力強く握り始める、寺野。どんどんパワーがチャージされて行く。

寺野 「 あなたには特大サイズが必要になりますね。行きますよ! 針( シン )→ 巨剣山!! 」

< ズドドドドドォ!!! >

パワーがチャージされ、極太に巨大化した針葉弾がズブズブと床に突き刺さる。 円形状に敷き詰められた巨大な針の山。 撃たれると身構えていたBOSSゾンビは、自分では無く弾が床に放たれた光景を見て、拍子抜けの表情をしている。 …鼻から上が無いが。馬鹿にされた感も付加され、勢い良く寺野に襲い掛かって来るBOSSゾンビ。

寺野 「 こう言うの、何て言うんですかね? 単細? ? 
…仕上げですよ! この単身赴任ヤロー! 苔(コケ)!! 」
< ボジュッ >

襲い来るBOSSゾンビの足元に放たれた苔弾が、床一面へと広がって行く。一瞬にして、ジメジメ・ヌメヌメした床に変貌した。激しく踏み込んだ分、その反動で派手にすっ転ぶBOSSゾンビ。< ズルッ! > 後方に一回転し背中を下に向けたまま、巨大剣山へと落下した。< グサグサグサグサ!!> 腐食製のゴム人形のため、身体全体に針が深々と突き刺さる。蜘蛛の巣に捕らわれたように、大の字状態で全く身動きが取れないBOSSゾンビ。

寺野  「 顔半分が無いので、どんな表情してるか分かりませんが、楽にしてあげますよ! ぐぬぉぉぉおお!  針( シン )!! 」< ボジュッ >

止めとばかりに放たれた巨大な1本の針葉弾が、BOSSゾンビの中心=みぞおちに突き刺さった。 < ザクッ!> グギャャャヤヤヤヤァァアアアア!!
…断末魔と共に漂う腐敗臭、 BOSSゾンビの動きがピタリと止まった。徐々に心臓付近の光が消えていく。

【 ミッションクリア!おめでとうございます!ミッションクリア!おめでとうございます! 】 電光掲示板が賑やかに点滅する。 どうやらゲームクリアのようだ。

力無くその場にへたり込む、寺野。 自覚している何倍もの緊張感から解放され、一気に疲労が押し寄せて来た様子。今回の試運転は、本来アトラクションに不可欠な安全性を敢えて全て取っ払い、さらに土佐犬の獰猛さをゾンビ人形に注入するという、悪魔的な仕様であったが、何と寺野ひとりで乗り切ってしまった。
温厚且つネガティブ思考で、自分ひとりでは何も出来ないような初老のおっさんであったが、条と出会い、自らの目的を明確化する事で、戦闘出来るレベルまで成長したのかもしれない。 …しばしの小休止を終え、条のいる場所へと合流すべく その場を離れようとしたその刹那…  どこからともなく聞こえて来る、か細いうめき声。 唸り声というよりは、掠れ泣いているような類の、助けを求めているような声だ。

ゾンビ? 「 …たすけて う・うぅぅぅ …たすけて…ぐれ 」

<!?> 今までのゾンビ人形とは、まるで印象が違う。 地べたに這いつくばり、力無い匍匐前進にて、必死に擦り寄って来るゾンビのような人間のような生物。他のゴム人形と違う、決定的な点としては、ズバリ言語を発している点だ。 < ズズズ、ズズズ… >

寺野 「 イヤぁぁぁああああああーーーーーー!!…まさか、ほ、ホンモノのゾンビですかね? …サ、サインください! 」

確かに本物のゾンビであれば、著名人に遭遇するよりも遥かにレアな体験だが、それでもサインなんか要らない。まんざらでも無い表情で、血文字で「ゾンビ」とでも書くのだろうか? 名前では無くカテゴリー表記なので、著名人がサインで「人間」って書くようなものだ。 ますます要らない。…っというか、薄らハゲ散らかしたセーラー服姿のおっさんが、ゾンビにサインを求める構図って何? アバンギャルド過ぎて、くれぐれもそっち側の世界に行かないのが得策だ。

ゾンビ? 「 …ゲホッ ゲホゲホ 実験が失敗したんだ。。 み、水をくれ… たのむ… 」

寺野 「  !? え? …に、人間なんですか? でも見た目ゾンビですよ?み、水ですね? えぇと確かあっちに水飲み場があったかと。」

< バキューン!> 水飲み場を探そうと寺野が後ろを向いた瞬間、館内に銃声が鳴り響いた。

< ジジ ジジジ… パンっ!>

何者かに発砲された弾丸によって、寺野の身体にセーラー服を投影していた極小ドローン型投影機が破壊された。見る見るうちに元の姿へと戻っていく寺野。驚きと怒りと悲しみが混在したような、複雑な表情をして跪く。

ゾンビ? 「 チッ 外したか。 ぷっ …ぐははは やっと普通のおっさんに戻ったなぁ、この変態野郎が 」ムクっと起き上がり身体の砂ぼこりを払っている。

寺野 「  ………………………。 」

ゾンビ? 「 どうした? 本物のゾンビじゃ無くてがっかりしてんのか? …にしても臭ぇ 」 < スチャっ >ハンドガンを構えている、変装したヒットマンだ。

寺野 「 …せっかく 勝利のポーズを条に披露しようと思ったのに …何てことをしてくれるのですか。。 」

ヒットマン 「 は? 何をモゴモゴ言ってやがる。プロの殺し屋を目の前にして無防備とは、中々いい度胸してるじゃねぇか。」< バキュン! バキュン!>

一瞬の躊躇いも無く放たれた弾丸が、寺野の太ももの際をエグり抜いた。<ザシュ ザシュ!> 裂傷にて、被弾した箇所から鮮血が飛び散った。

寺野 「 …ヒーロー殺害の罪は重いぞ。 貴様は、許さん、絶対に… グヌぉぉぉおおおおおおおお 」

こめかみに大蛇のような血管が浮き出ている。

お気に入りのコスチュームを剥奪されたという、良く分からない理由で、酷くブチギレている様子の寺野。 彼の中ではヒーローになる夢を打ち砕かれたと言うか、目の前でヒーローが惨殺されたような感覚なのだろう。おもむろに特殊拳銃「BONSAI」を投げ捨てると、その眼光が再び鋭く光った

ヒットマン 「 おいおいおい 冗談だろ?? マ、マジか! < バキュン バキュン バキュン!>  …インギャぁぁあああああああ!!! 」


(  条一狼×飛山サイド  )

< ドガガガガッ! ガツッ! バシッ! > 条と飛山による、一進一退の攻防戦が続いている。 決して手は抜いていないが、到底殺し合いには見えない。

飛山 「 …あんたさ、何でそんなクソガキのお願いなんてのを聞くんだ? どう考えても生温いお願いには聞こえ無いんだけどね。 」

条 「 あ? さっきも言ったが、別にお願いを聞いてやってる訳じゃねぇよ。 個人的に興味がある、うさん臭さを感じただけだ。 」

飛山 「 ふ~ん、嘘つくのヘタだね。でも、そんな信頼を置けるパートナーが危機に陥ってるとはお気の毒に。 」

条 「 何言ってんだ? お前友達いねぇだろ? 先回りし過ぎなんだよ!ったくよ。何でも分かった顔してんじゃねぇ!! 」

飛山 「 確かにそうかもねぇ… まぁいいや。遠回りは嫌いだから言うが、そのパートナーのクソガキを助けたいんだろ? 」

条 「  ………………………。 」

飛山 「 で、そのクソガキってのは、”ケツアゴデス“のメンバーか? (多分あいつだろうな、オレと同等もしくは…。)

( つづく )


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