時空のゆがみ、第一章「りんご右折」毎週ショートショートnote、410字
誰かが落としたりんごが、坂道を転がっていた。
道の端に、荷車の修理をしている男がいた。
りんごが跳ね、傍らに置かれていた小さなねじにぶつかった。
カチリと乾いた音がして、ねじがりんごの柔らかい果肉に突き刺さった。
りんごはそのまま転がり続けた。
男が反射的に立ち上がった時には、りんごはすでに転がっていく背中を見せていた。
男は駆け出した。りんごは右折した。右にあるのは底なし沼。男は焦った。
男は無駄と知りながら、勢いのまま沼に手を伸ばした。その瞬間、沼が男を引きずり込んだ。
目を覚ますと、そこは見知らぬ未来都市だった。
沼そのものが時空の歪みで、過去・未来がつながる時空の穴になった。実は荷車はタイムマシンで、そのねじはタイムマシンのAIのコアだったのだ。
目撃者もいて、村では手足を入れると消えてしまう神隠しの沼として知られた。領主が、「沼の水、全部抜いてみた」をしようとしたが、かかわったものが消息不明になり立ち入り禁止となった。
(410字)
ーーーーー
師匠(児童文学作家、通信教育を受けました)に言われたことがあります。お題で書く場合に、
「他のものでも話が成り立てば、それはお題を消化できたことにはならない!」
この場合は、「右折」と言う言葉です。上に書いたお話を、左折したら底なし沼があったと書いても成り立ってしまいます。
わざわざ、お題に「右折」とあるのだから、右折でなければ成り立たない話にしなければいけません。ですが、なかなか、右折に意味を持たせることはできません。そこで考えたのが、右折と左折の両方を話に出すことです。
この場合、左折ではない方という意味で右折に意味が生まれます。もちろん、左折でも話は成り立ちますが、意味を持たせることはできます。
というわけで、この続編として、第二章「ゴリラ社説」の中で右折に意味を持たせて書いてみましょう。
