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嫉妬が怖くて、作家仲間の小説を読めなかった【#創作大賞感想】

作家仲間である、みくまゆさんの小説(『僕に、エッセイを書かせてください』)を、私はしばらく読めなかった。

理由は単純である。
嫉妬するのが怖かったからだ。

みくまゆさんは公募についてよく調べ、求められているものを読み取り、自分の作品をそこへ当てていく力がある。エッセイも声に出して笑ってしまうほど面白いものも多い。

それだけでも悔しいのに、小説まで読んでしまったら、ジェラシーの炎によって私の矮小な心がチリッチリに燃やし尽くされるのではないかと、警戒アラートが鳴っていた。


読みたい。
でも、読みたくない。


作品が面白ければ嫉妬するだろうし、あまりにうまければ立ち直れないかもしれない。絶望。もちろん、これはすべて私の心の問題であって、みくまゆさんには何の責任もない(笑)

けれど人間とは不思議なもので、あれほどガチガチに身構えていた心も、時間が経つと少しずつほどけてくる。
自分の状況や書くことへの向き合い方が変わり、なぜかふっと「読んでみよう」と思える日がやってきた。


それでも、実際にページを開くまではどきどきした。


バンジージャンプほど大げさなものじゃない。ただ、資格試験の合格発表が書かれたハガキを開封するときのような、自分の気分を一気に左右する可能性のある情報へ手を伸ばす緊張感があった。


結論から言えば、私は嫉妬の炎に焼かれずにすんだ。

読む前まで「嫉妬で死ぬ」だの何だのとギャアギャア言っていたくせに、単純に一人の読者として楽しんでしまった。あまりに健やかな読書体験である。

保育園のお迎えや仕事で一気読みできず、パソコンを閉じてる間は続きが気になって、蒸し暑い夏空の下を自転車で駆けながら、展開を予想していた。

同時に、創作者としての読み方も止められなかった。主人公・高平くんが工場の検品作業員として描かれ、エッセイや執筆に夢中になっていく中で、

「ハッ、だからこの職業設定なのか!」
「この喫茶店の花の名前には、きっと意味があるはず」

と、本文には明記されていない設定まで勝手に深読みした。読了後、みくまゆさんへメッセージを送り、答え合わせをして、見事に当てたときには一人で喜んだ。(確認すな)

読書というより、ところどころ考察厨による推理ゲームである。



『僕に、エッセイを書かせてください』には、みくまゆさんがライターとして長く仕事をし、その世界で見てきたものが溶け込んでいた。

書き手、編集者、そして文章を受け取る読者。それぞれの立場から「書くこと」に光を当てながら、炎上や過激なコンテンツ、閲覧数、一定以上の文章を書く技術といった問題が描かれている。

同じように「書くこと」を生業にしていても、私は彼女と同じ場所を歩いてきたわけではない。だからこそ、私には見えていなかった問題や、彼女だから拾えた感情が、この物語にはあった。

小説は、頭の中だけで作られるものじゃない。書き手がこれまで何を見て、どこで傷つき、何に違和感を抱いてきたのか。その蓄積が、職業設定や人物の言葉、物語のテーマとして現れる。

私は彼女の小説を読みながら、作品の奥にある長い時間へ、少しずつ触れていった。

嫉妬について話すとき、「そもそも違う人間なのだから、比べなくていい」とよく言われる。でも、私はこれまで、その言葉があまり腑に落ちなかった。


違うことくらい分かってんだよ。


それでも同じように文章を書き、公募へ挑み、作品を発表する人を見れば、「自分よりうまいか」「先へ行くのか」と気になるものだ。「みんな違う」と言われただけで、比較する心が消えるほど人間は素直じゃない。



けれど今回、みくまゆさんの作品を最後まで読んで、私はようやく「ああ、本当に比べるものではないんだな」と思った。

彼女がライターとして見てきたものから、この小説は生まれている。私には、教員や介護職として出会った人たちや、文章の仕事をしながら考えてきたことがある。たとえ同じ「書くこと」を題材に選んでも、物語の中へ持ち込むものは同じにならない。

それは片方が優れ、もう片方が劣っているという話ではなかった。私たちは似た場所で書いているように見えて、それぞれ別の景色を材料にしている。


だからといって、嫉妬がきれいになくなったわけではない。ただ、相手を比較する以外の見方が、ようやくできるようになった。

私も今、小説を書いている。来年のnote創作大賞へ向けて、時間をかけて育てていくつもりだ。

同じコンテストへ作品を出せば、みくまゆさんとはライバルになるかもしれない。彼女だけが選ばれる可能性もあるし、他の書き手が先へ進めば、私はきっとまた焦る。

それでも、小説について今の自分と近い温度で話せる相手は、簡単には見つからない。

ほかの仕事や生活を抱えた社会人が、一銭につながるかも分からない十万文字の物語に、何十、何百時間も注ぎ込む。「賞がほしい」という気持ちだけで、そこまでできるものではない。

どうしても書かなければならない何かに、本人がいちばん振り回されている。


その焦燥や孤独は、家族や親しい友人にも共有しにくい。応援してもらえたとしても、頭の中で人物が勝手に動き続けることや、物語の辻褄が合わずに苛立つこと、まだ誰にも求められていない文章を黙々と積み上げる感覚までは、なかなか説明できない。

だから、嫉妬するほど近い場所で書いている人は、同時に、代わりのきかない仲間にもなりうるのだと思う。


同じ駅から出発するように見えても、私たちは二番線と三番線の電車に乗っている。行き先も、窓から見える景色も違う。彼女の電車が山間を抜ける頃、私の電車は海沿いを走っているかもしれない。

それでも発車を待つあいだ、同じホームのベンチに腰を下ろして、

「プロットが詰まったとき、どうしていますか」
「ラストシーンをまだ迷っていて」

と話ができる。

嫉妬は、これからもきっと消えない。

けれど私はもう、彼女の作品を怖がって遠くから見ているだけではない。自分の物語を書きながら、彼女が電車を降りたときに、どんな景色を見せてくれるのかも、待ち望んでいる。


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