見出し画像

お仕事におけるひたむきな思いと、リアル。書かずにはいられなかった人々の痛切・赤裸々な思いが滲んだ「お仕事エッセイ」を紹介【創作大賞感想】

今日は朝から11時くらいまで、創作大賞に応募している小説の「誤字・表記揺れ」などのチェックをしていました。

 「もう大丈夫」と思っていたものの、これが推敲を重ねるたびにどんどん出てきます。ひとつ感じたのは少し前より、粗や異変に気づきやすくなったことでしょうか。書くことだけではなく、校正力・推敲力も今後は身につけていきたいです。

 お仕事をしていると、夢や希望に向かって進む人もいれば、あえて「やめること」を選択する人もいます。どんな形も間違いではなく、でも「深く感じる」ことはその人にとって必要な「気づき」だと私は長く働きながら感じています。

 今回の記事では、ひたむきにお仕事に向き合ってきた人の気づきや、思いなどがあふれた作品の中で、心が動いたものを厳選して紹介します。

「意味がある」ことを追いつづけていたら、人生が貧しくなっていた/中村昌弘さん

 創作大賞の感想記事を書こうと思ってから「どの作品の感想を書こう」と思うことと、作品に触れて「何がなんでも感想を書きたい」と心が突き動かされることがあります。中村さんの作品は後者でした。

 中村さんは日本最大級のライターコミュニティを運営している、ライター界の超有名人です。私は5年くらい前にZoomでたまたまご縁がありお話しさせていただいたことや、マーブルさんのイベントでもお会いしたことがあるのですが、とても気さくな方です。バリバリに仕事しているイメージがあったので、こちらのエッセイには意表をつかれました。

 まず一行目の「引き」が強いです。

昔、ある女性と縁を切ったことがある。恋愛のもつれ、ではない。その人は元同僚で、1つ上の先輩だった。

 一行目をみたら恋愛と思うじゃないですか。二行目で「問い」を感じ、三行目で答えがでる。まさに二行で撃ってきます。導入の引きが見事です。

 フリーランスになってから、休むのが怖くなりました。私自身、『書く人生のはじめかた 文章力より大切な「書き続ける」ための心構え』という本を出し、「書き続けるための心構え」を掲げている以上、休まないためにはどうしたらいいのかと考えてしまう自分がいます。


 その一方で、「休み休みしながら書き続けることも、心構えのひとつなのではないか」と、都合のいいことを思い始めています。

 これは狡さでしょうか。いえ。意外と大事なことなんじゃないかと思います。自分を少し、許してあげるみたいな。だって、自分に許可できるのは自分しかいないのですから。

ノウハウ系の本を出したり、セミナーなど人前で話すようになると、それがその人の「看板」になります。そして、人からも求められます。つまり「活動の中で発信していること=自分の働き方」になってしまうんですよね。

 私ですら、一冊本を出しただけでこんな考え方をしているくらいなので、大手コミュニティ運営、数多くのセミナー登壇、ライター向けの書籍なども出版されている中村さんが抱えるプレッシャーは、半端ないと思います。

 そんな彼が、パソコンを閉じた日のことを綴っています。それも素直な文章で。これはもう、感想を書かずにはいられませんでした。

涙が出てきたその日は、もう仕事にならなかったので、クライアントに最低限の連絡だけしてパソコンを閉じた。

 その後、中村さんは小説をオーディブルで聴くのですが、「書く」がつらくなると「読む」もつらくなる。でも「聴く」ことはできるんですよね。

 心が疲れた時って、ノウハウよりも音楽やドラマ、旅、景色……そういう「娯楽」に目が向きます。そもそも、小説や音楽は、本来なくても生きてはいけます。でも、人によっては「必要」です。そこから心を動かされたり、救われたり。生きるために必要じゃないものの中にこそ「豊かさ」を見いだすこともあります。

 そして、その豊かさをめいっぱい味わうことで、「書く世界」にも彩りが戻ってくる。そんな気がしています。

 私は仕事以外、無駄なことばかりしています。夫の寝言をnoteに書いたり、お金にならないエッセイや小説を十万字も書いたり。自分でも、なぜそんなことをしているのか。理由はよくわかりません。そこに受賞とか仕事とか……。そういう目的がなくても、たぶん書いていると思います。でも、書いている時間が楽しいのです。その「楽しい」と思う気持ちこそ、大事なのかもしれません。

 もちろん、フリーランスは働かないと無銭なので、手を動かさなければいけない。それでも、「無」の時間も大切にしたい――中村さんのエッセイを読み、改めてそう感じました。

作家になれなかった元国語教師が商業出版するまで/茨木彩菜|作家|元国語教師・言語化コンサルさん

 作家になってから、いろんな著者仲間ができました。茨木さんは、私のメル友でもあり、創作の悩みや喜びを分かち合える作家仲間の一人です。共通の担当編集である岡本さんの紹介で、二人は出会いました。

二人はやりとりをしていくうちに「素っ裸で執筆に取り組んだら、いい文章は書けるのか?」という仮説に基づき、「全裸で文章を書いてみるのはどうでしょう?」という話になりました。(結局、気持ちだけ「脱ぐ」ということになりました)

そして、伝説は始まりました。

***

 茨木さんは『文才ゼロでも書ける人になれる国語力の磨き方』が1,100部を超え、「日替わりセール」にも選ばれた売れっ子の凄い書き手さんです。


 彼女のすごさは、それだけにとどまりません。私がいちばんすごいと思うのは、素直な心の内や、内側から湧き出るような葛藤を「きれいな言葉」として作品に落とし込める、その力です。心の内側を吐露する書き方になると、つい殴り書きのようになってしまうこともしばしば。でも、彼女は絶対にそうしません。

 元中学校の先生だから基礎がしっかりしているし、どんなテーマであっても、不思議と読み進められる「国語力」があります。小説にも詳しくて、さまざまな作品に目を通しているので、おすすめを教えてもらうこともあります。

 それ以上に、彼女は自分の「やりたい」にまっすぐで、迷いながらも前へ進む強さを持っています。

 エッセイの中で、本を書き上げるために付箋をびっしり貼り、細かなメモを積み重ねていく姿が描かれていました。努力という言葉では追いつかないほど、彼女は「言葉と真摯に向き合う人」なのだと感じました。

 茨木さんは「国語」の大切さを知っています。

相手に伝わる言葉と、自分だけが気持ちよくなる言葉は違う。それを学ぶのが、本来の「国語力」なのだと思う。

 国語だけではありません。夢が諦められなくても、何度も見ないふりをしてしまってもいいこと。それでも、その夢はまだあなたの中で生きているのだと、そっと励ませる人です。

夢なんて、きれいに諦められなくていい。
何度も蓋をして、何度も見ないふりをして、それでも本屋の隅で手が伸びてしまうなら、それはまだ、あなたの中で生きている。

そんな彼女が、これからどんな文章を綴っていくのか。今後の活躍も楽しみです。

「わたしも、スパイダーマンなんだ」――売れない作家は、自分にそう言い聞かせる。/こじえみ⌇本の著者一年生📚さん


 エッセイの中では、夢だった本を出版した「その後」の素直な気持ちが、スパイダーマンの世界になぞらえて赤裸々に綴られていました。

 こじえみさんは、サンクチュアリ出版という大手出版社から『捨てないレシピ』を出版された方です。

 「大手出版社で書籍出版」に憧れている方は多いもの。一方で、本を出すまでの苦悩や、出した後に押し寄せる静かなプレッシャーは、著者にしかわからないものです。

 エッセイを読んでみて、彼女のすごさは、目の前の現実とまっすぐ向き合う「姿勢」と「覚悟」にあると感じました。

 ツイートの中では、国宝に例えた一文もあり、とてもいいなぁと感じました。龍神さまと契約するというたとえが秀逸です。このあたりも、作家性を感じました。

 PR活動にも積極的で、「メディア掲載×100」という具体的な目標を掲げ、ひとつずつ丁寧に行動へ移していく。

 実際にお話ししたことがありますが、こじえみさんは癒やし系の美人で、声もやわらかいです。「声いいですね」と褒めたら、頬を緩めて喜んでくれました。かわいいです。佇まいはふんわりしているのに、エッセイの一文一文からは、静かな強さが滲み出ていて、読んでいるこちらまで背筋がそっと伸びるようでした。

 夢を叶えたあとも、なお歩き続ける人。その歩みを、飾らない言葉で見せてくれる人。こじえみさんの文章には、そんな凜とした強さが宿っている気がします。

 こじえみさんのエッセイを読み、本を出すことはゴールではなく、誰かの心に届くまで続いていく旅なのだと。その旅路の行方を今後も追いかけたくなるような、素敵なエッセイでした。

【完】


いいなと思ったら応援しよう!