ヤクルト・増居翔太、中日戦で6回無失点――ファームで磨いた「修正力」
2026年8月6日、バンテリンドーム。ヤクルトの増居翔太は、中日・金丸夢斗とゼロを並べた。金丸が7回116球、6安打無失点。増居が6回87球、2安打無失点。6回を終えて0―0。試合はその後0―5で敗れたが、増居の87球には、前回7月16日の83球とは違う意味があった。
5回83球から、6回87球へ。プロ初登板から約4か月、一軍とファームを行き来してきた左腕に何が起きていたのか。球種構成までたどっていくと、この「増居翔太ドキュメント」の第3作で書いた「修正力」が、少し違う形で一軍のマウンドに戻ってきていることが見えてくる。
1.六つのゼロ――三巡目にたどり着いた
この日の増居は、初回から順風満帆だったわけではない。先頭の福永裕基に安打を許し、盗塁も決められた。それでも細川成也から空振り三振を奪うなど無失点で切り抜けると、2回から4回までは三者凡退。9人続けてアウトにした。
難所は5回だった。先頭の石川昂弥に四球。石伊雄太には12球粘られ、この回だけで29球を要した。それでも崩れない。岡林勇希を申告敬遠したあと、最後は金丸を見逃し三振に仕留め、またゼロを刻んだ。
これまでなら、ここで仕事を終えても不思議ではなかった。しかし今回は6回も増居がマウンドへ向かった。打順は1番・福永から三巡目に入る。福永にこの日2本目の安打を許し、送りバントのあと細川を四球で歩かせて一死一、二塁。ここで4番サノー、5番石川昂弥を迎えた。
サノーを中飛、石川を三飛。自分の手で、六つ目のゼロを刻んだ。
最終的には6回87球、2安打、2奪三振、3四球、無失点。3四球のうち一つは申告敬遠だった。球団公式も「6回を投げて被安打2、無失点と好投」と評している。
前回7月16日の巨人戦は5回83球、2安打1失点、自責点0。今回は、そこからわずか4球増えただけでアウトを三つ多く取った。しかも、12球を要した打席や29球のイニングを含んでいる。「球数を節約できた」というだけではない。苦しい時間帯があっても立て直し、三巡目に入って中軸を迎えた場面まで無失点で切り抜けた。そこに今回の前進がある。
そして、マウンド上の増居には、もう一つ目につく変化があった。トレードマークだった長い襟足がなくなっていた。
大ファンだというB'zの稲葉浩志を意識して伸ばしてきた髪だった。2月には、髪型で覚えてくれるファンもいると話す一方、「結果で覚えてもらうのが一番」とも語っていた。『週刊ベースボール』の取材では、「襟足はこんなにいらないかな」と思いながらも、ここまで伸ばしたことで「引くに引けなくなった」と笑っていた。それが7月末、ばっさりと短くなった。「天地がひっくりかえっても稲葉さんにはなれないと気が付きました」という増居らしいコメントも残している。
髪を切ったことと好投を結びつける根拠はない。ただ、あれほど「引くに引けない」と笑っていたものを思い切って手放し、再び一軍へ戻ってきた。その姿には、本人なりの小さな区切りを感じずにはいられなかった。短髪でマウンドを躍動する増居は、私にはどこか吹っ切れたように、爽やかに映った。
【増居翔太ドキュメント】
👉 最初から読む:Vol.1
👉 前回を読む:Vol.6
👉 全シリーズはこちら:マガジン「増居翔太ドキュメント」
では、この6回無失点は、これまでの登板と何が違っていたのか。4月からの一軍とファームでの投球をたどり、球種構成まで比較してみたい。
© 2026 ibukiwriter|伊沢いぶき
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