高島町駅と横浜のあいだ|大企業の街で飲むホットコーヒー
高島町駅で降りる。
横浜駅の隣の駅。
距離にすれば、歩いてもそれほどかからない。
実際、この区間のために地下鉄に乗ることは、あまりない。
歩けば済むからだ。
それでも、こうして一駅だけ乗って降りてみると、
この場所の立ち位置が、少しだけ見えてくる。
横浜駅は、とにかく大きい。
人の流れも、情報の量も、すべてが過剰なくらいに集まっている。
その隣にある高島町駅は、どこか控えめだ。
もし、横浜駅の次がそのままみなとみらいだったとしても、特に不自然ではなかったのかもしれない。
それでも、この“間”に駅はある。
必要だったのかどうかは分からない。
ただ、存在している。
地上に出て歩く。
周囲には、企業の名前が並んでいる。
資生堂
村田製作所
コーエーテクモゲームス
富士フイルム
ソニー
ヤマハ
京浜急行電鉄
そして、日産自動車。
どれも、世界の最先端に関わる企業だ。
この場所で、未来が作られている。
そう言っても、大げさではない。
それでも、「高島町」という名前は、どこか昔のままだ。
少し古い響き。
整備されたビル群との間に、わずかなズレがある。
名前は変わらない。
中身だけが、更新され続けている。
横浜港は、すぐ近くにあるはずだ。
地図を見れば、その距離はよく分かる。
けれど、ここを歩いていても、海の気配はほとんど感じない。
潮の匂いも、風の湿り気もない。
ただ、都市の空気だけがある。
同じ横浜でも、場所によって、こんなにも違うのかと思う。
歩きながら、横浜駅の方向へ向かう。
電車に乗るほどでもない距離。
でも、ただの移動では終わらない距離でもある。
途中で、セブン-イレブンに入る。
ホットコーヒーを買う。
紙カップを手に持って、また歩き出す。
ひと口飲む。
特別な味ではない。
でも、きちんとおいしい。
日本のコーヒーって、美味しいなと思う。
温かさが、手に残る。
それだけで、十分だ。
少しずつ、人の流れが増えてくる。
横浜駅が近づいている。
大きな街の隣には、必ず“中途半端な場所”がある。
便利すぎるわけでもなく、
不便すぎるわけでもない。
でも、その曖昧さが、悪いわけではない。
むしろ、その距離だからこそ、見えるものがある。
コーヒーをもう一口飲む。
この時間は、電車の中では得られなかったかもしれない。
結局、歩いて戻るのがちょうどよかった。
