見出し画像

かなえたい夢が、すぐには見つからない場所で|市ケ谷駅


今日は、静かな市ケ谷駅に来た。
JR市ケ谷駅。都営新宿線や東京メトロの市ケ谷駅もあるけれど、今日はJRのホームにいる。

ホームの端から、釣り堀が見える。
あの釣り堀は、たしかドキュメント72時間にも出ていた気がする。
あそこで釣り糸を垂らしている人たちは、何を考えているんだろう。

私は、ホームのベンチに腰を下ろして、夢のことを考えている。
「かなえたい夢はなんですか?」と聞かれて、すぐに答えられる人はすごいと思う。
私は、しばらく考えても、はっきりした答えが出てこない。

でも、考えているということは、生きているということだ。
死んでしまったら、考えることすらできない。

黄色い総武線が入ってきた。
その横を、オレンジ色の中央線が追い越していく。
電車は、迷いなく進んでいく。

売店で温かい缶コーヒーを買った。
今日は飲まずに、カイロの代わりに両手で包む。
じんわりと、指先に熱が戻ってくる。

市ケ谷は、大手印刷会社DNPの街でもある。
いかにも印刷会社の社員らしいサラリーマンが、カレンダーを抱えて歩いている。
法政大学か、中央大学か、よく分からないけれど、しっかりした顔つきの大学生たちもいる。
イヤホンをして歩く若者。
歩くのに少し時間がかかるおじいさん。
派手な色のコートを着たおばあさん。

みんな、それぞれ必死に生きている。
この人たちは、「かなえたい夢」なんて考えているんだろうか。

ふと、釣り堀で釣りをしている人に聞いてみたくなった。
あなたの夢は何ですか、と。
でも、やっぱり聞かなくていい気がした。

夢は、無理に言葉にしなくてもいい。
今は、
お腹が空いたらご飯が食べられて、
寒ければコーヒーで手を温めて、
来月、誰かに会える予定がある。

それが続いていく状態を、できるだけ長く保てたらいい。
かなえたい夢が、すぐには見つからない状態を、かなえ続けること。

たぶん、私の夢は、もうその途中にある。

ホームの向こうで、また電車の音がした。
私は、缶コーヒーを持ったまま、しばらくベンチに座っていた。


いいなと思ったら応援しよう!