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広島駅でコーヒーを飲みながら考えたこと|遠くへ行けそうで、そうでもない午後

広島駅は、出発する人の顔をしている。

新幹線が来て、在来線が伸びて、駅前では市電が、ゆっくりと横切っていく。

どこへでも行けそうなのに、実際には、そんなに遠くへは行かない人が多い気がする。

平日の午後三時。
駅前は、少しだけ空いている。

白くて、取り立てて特徴のないホテルが、新幹線口の前に建っている。
よくあるビジネスホテルのはずなのに、なぜか、広島っぽく見える。

理由は分からない。分からないままでいい。

コンビニでボトルコーヒーを買った。
ブラック。キャップをひねると、小さな音がする。

ベンチに腰を下ろすと、遠くで市電のベルが鳴った。

広島といえば、やっぱりカープのことを少し思い出す。

今のカープのことは、正直よく知らない。
でも、衣笠。山本浩二。北別府。大野。川口。

強かった頃の名前は、今でも自然に出てくる。

赤い帽子。
土のグラウンド。
夜のナイター。

そんなこと、
今の自分には、特に意味はない。
ただ、覚えているだけだ。

博多行きの新幹線のアナウンスが流れる。
遠くへ行くのは、簡単そうだ。

でも、改札の外にいる人たちは、たぶん、今日はそこまで行かない。

市電に、少しだけ乗ってみようか。
理由はない。
ただ、乗ってみたい気がした。

コーヒーを一口飲む。苦味は、すぐに消える。

キャップを閉めて、静かにカバンにしまう。

まだ、どこへ行くかは決めていない。
でも、それで困ることもない。

広島駅は、決めない時間を、そのまま置いておいてくれる場所だった。


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