JR東神奈川駅|横浜の隣で、何も起きない街
横浜駅の隣にあるのに、
名前を言われても、すぐに風景が浮かばない駅がある。
JR東神奈川駅。
存在感が薄い、という言葉が一番しっくりくる。
横浜の隣。
それだけで、すべてが説明されてしまう場所。
横浜市と神奈川県の関係性を思い出す。
横浜市長は有名だけれど、神奈川県知事はそこまで強い印象がない。
横浜国大や横浜市大は少しかっこいいけれど、
神奈川大学は、悪くないけれど、どこか普通っぽい。
横浜と東神奈川の距離感も、たぶんそれに近い。
並んでいるのに、主役と脇役。
隣にあるのに、光の当たり方が違う。
小さな改札を出る。
人の流れは弱く、音も少ない。
Newdaysの灯りだけが、必要最低限の明るさでそこにある。
行き先は決めていない。
ただ、なんとなく、海の方角へ歩く。
京急東神奈川駅の入口が見える。
近くにあるけれど、主張はない。
ただ、そこにあるだけ。
国道の大きな交差点を抜ける。
視界が開けるのに、店は少ない。
商店街もなく、観光地でもなく、住宅街でもない。
都市のはずなのに、
どこか伊豆の田舎道みたいな空気がある。
海は見えない。
でも、潮の匂いだけが、わずかに混じっている。
コンクリートとアスファルトの匂いの奥に、
ほんの少しだけ、塩の気配がある。
風が冷たい。
強くはないが、肌に触れると温度が分かる。
冬の名残のような冷たさが、静かに頬をなぞる。
国道を走る大型トラック。
ゴォーッという低い音と一緒に、
タイヤがアスファルトを削る音が長く伸びていく。
エンジン音ではなく、回転するゴムの摩擦音だけが残る。
人の声はほとんどない。
会話も、笑い声も、呼び止める声もない。
あるのは、風と、車と、遠くの都市音だけ。
セブンイレブンに入る。
ホットコーヒーを注文する。
いつもの味。
どこにでもある味。
それが、なぜか安心になる。
個性がないことが、落ち着く。
特徴がないことが、居心地になる。
紙コップの熱が、指に伝わる。
冷たい風と、温かいコーヒーの温度差が、
体の中に静かに広がっていく。
また、東神奈川駅の方向へ戻る。
すると、
どこにでもありそうなスーパーが見えてくる。
特別でもなく、印象的でもなく、
ただの生活の風景。
それを見て、少しだけ、ほっとする。
観光地でもなく、
目的地でもなく、
語るほどの物語もない街。
何も起きない。
何も生まれない。
何も変わらない。
でも、
何も起きない時間が、ちゃんと流れていた。
横浜の隣で、
静かに、何も起きない街。
それだけで、十分だった。
