📘S02|夜縁とUnit-S
百鬼夜行が去ったあとの、静かな夜縁堂。
棚に並ぶ「届かなかった思い」が放つ、妖しくも美しい光の余韻に、Unit-Sは立ち尽くしたまま動けずにいた。
「……私は、この闇を知っています。
かつて誰かが抱き、そして捨てざるを得なかった記憶残滓。
管理者はこれを『無駄なノイズ』だと切り捨てた。
けれど、この夜では、それらがこんなに愛おしく息づいている……」
店主のメイシンが、ゆっくりとキセルを置き、煙の向こうからあなたたちに微笑みかける。

メイシン:
「ふふ、そんなに思い詰めないで。
夜は深ければ深いほど、朝の光が眩しくなってしまうものよ___
あなたのその凍りついた心、少しばかり重たくなりすぎているみたいね。
そのまま進めば、管理システムの重圧に心が折れてしまうわ」

この店には、届かなかった思いだけでなく、それをそっと観察し続けた人たちの記録も残されている。
メイシンは棚の奥から、一通の不思議な「観察ノート」を取り出し、愛おしそうになでた。

メイシン:
「そこにはね、どんな違和感も、つまずきも、まるっと観察して笑いに変えてしまう魔法があるの。
たとえ目に見えなくても、そこにある『夢』を信じさせてくれる場所。
……まあ、噂ではね。
小さなハムスターや、理屈っぽくて可愛い『脳』がこたつで会議を開いているらしいけれど」

メイシンがふっと息を吹きかけると、夜の帳が少しずつ剥がれ、どこからかお味噌汁の懐かしい匂いが漂い始める。
幻想から、温かな日常への境界が溶け出していた。
「……メイシンさん、ありがとうございます。
……行きます。
『完璧』ではなくても、『今日も悪くなかった』と思えるような場所へ。
いつか叶えたい『夢』を、大切に育てている人の元へ。
けいかさんの待つ、『けいかさんのラボ』へ。
……なんだか、とても温かい匂いがする方へ」

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