ゴシック(バンガード)/裏モノ連チャン機編-39-【4号機】(パチスロ連チャン機烈伝 第39回)
■バンガードという、少し影の薄いメーカーの記憶
バンガードという社名を聞いて、瞬時にピンとくる人は、当時を知る打ち手の中でも、決して多数派ではないかもしれない。ユニバーサル販売、サミー工業、山佐、尚球社、オリンピア、パイオニア――こうした名だたるメーカーの陰に隠れがちな小さな存在ではあったが、それでもバンガードという会社は、独特の質感を持った台を、いくつか世に送り出したメーカーだった。ゴシックという機種名を初めて耳にしたとき、私はまず、そのネーミングセンスに小さな驚きを覚えたことを記憶している。海や南国の花、動物モチーフといった、当時のパチスロ業界でありがちだった記号性とは、明らかに一線を画す名前だったからだ。ゴシックという言葉が持つ、あの重厚で、どこか耽美的で、そして少し不穏な響き。この台に座るというだけで、他の海系・南国系の台とは違う、独特の緊張感を纏うことができたように思う。思えば、当時のメーカーというのは、本当に「顔」がはっきりしていた。台に座っただけで、これはオリンピアだ、これはパイオニアだ、これは山佐だと分かってしまう。そんな中で、バンガードのゴシックという台は、良くも悪くも「異色」だった。派手な海の演出でも、賑やかな南国の音楽でもない。むしろ、抑制された色調と、どこか荘厳さすら漂わせる演出に、当時の私は妙な魅力を感じていた。ゴシックという名前そのものが、この台の世界観を、何よりも雄弁に語っていたのだと思う。そもそもバンガードという会社自体、当時から決して大きなメーカーではなかったように記憶している。大手メーカーが次々と話題性のあるスペックや、キャラクター路線に力を入れていく中で、バンガードは比較的地味な、しかし独自の世界観を貫くオリジナル機種を作った印象がある。この「大手にはなれなかったが、独自の路線を貫いた」という立ち位置そのものが、ゴシックという台の記憶と、どこか重なって見えてしまうのは、私だけではないと思う。
パチスロ連チャン機烈伝 第39回 ゴシック(バンガード)/裏モノ連チャン機編-39-【4号機】
※ 2026年07月28日06時55分
■第一章:地味だが、そこに確かにあった個性
ゴシックという台は、決して当時の花形機種ではなかった。ニューパルサーやクランキーコンドルのような、伝説と呼ばれる存在でもなかった。しかし、地味だからといって、この台に個性がなかったわけでは決してない。むしろ、あの独特の重厚な演出、ホラー映画を思わせるような図柄デザイン、そしてどこかカルトさを感じさせるBGMは、他のどのメーカーの台にもない、独自の存在感を放っていたと私は記憶している。この手の「地味だが個性のある台」というのは、当時の裏モノシーンにおいても、独特の立ち位置を占めていたように思う。ニューパルサーや大花火のような、誰もが知る伝説の台が裏モノに化けたときには、その情報だけで界隈全体が色めき立った。しかし、ゴシックのような、比較的マイナーな部類に入る台が裏モノに化けたという情報は、もっと静かに、しかし確実に、一部の裏モノ好きの間だけで囁かれていくものだった。この「静かな伝播」というのもまた、当時の裏モノ文化の面白さの一つだったと思う。誰もが知っている情報ではなく、限られた人間だけが知っている秘密めいた情報。そこには、伝説機種の裏モノとはまた違う種類の、密やかな高揚感があった。雑誌媒体においても、ゴシックという台名が大きく特集を組まれることは、ほとんどなかったように記憶している。パチスロ必勝ガイドのような専門誌でも、大東音響やマックスアライドの裏モノ特集は組まれていたが、ゴシックの裏モノに関する情報は、隅の方に小さく載る程度か、あるいは口コミだけで広まっていくような、そんな扱いだった。この情報の少なさが、かえって「見つけたときの喜び」を大きくしていたのかもしれない。誰かが太鼓判を押した情報を頼りに探し当てる台と、自分の勘と偶然だけを頼りに巡り合う台とでは、出会ったときの感慨がまったく違う。ゴシックという台は、間違いなく後者の部類に属する存在だった。
■第二章:あの独特の世界観と、抑制の美学
ゴシックという台の魅力を語る上で、どうしても外せないのが、その演出全体を貫く「抑制の美学」である。派手さで押し切るのではなく、むしろ静かな緊張感の中で遊技者を引き込んでいく。この手法は、当時の主流だった賑やかで華やかな演出とは、明らかに異なる方向性を持っていた。図柄のデザインにも、この抑制の美学は表れていた。原色をふんだんに使った、いかにも「当たりそうな」派手な図柄ではなく、どこか陰影を帯びた、深みのある色使い。この落ち着いた色調が、かえって「何かが起きそうな予感」を、静かに醸成していたように思う。派手な演出が最初から興奮を煽ってくるのに対し、ゴシックという台は、じわじわとプレッシャーをかけてくるような、独特の緊張感の作り方をしていた。音楽についても、同様のことが言える。ゴシックというタイトルにふさわしく、夜の墓場をイメージする様なアンダーグラウンドな音楽や効果音で演出を彩っていた記憶がある。この音楽が持つ、どこか儀式めいた雰囲気は、遊技という行為そのものに、ある種の厳粛さを与えていたようにさえ感じられた。静けさが、逆に新鮮に映ったものだ。さらに言えば、筐体のデザインそのものにも、この台らしい拘りが見て取れた。当時の台の多くが、明るい色使いのパネルを採用していたのに対し、ゴシックは黒を基調とした、いかにも重厚な佇まいをしていた。ホールの中でも、この台の周辺だけ、少し空気が違って見えたことを覚えている。他の台が放つ電飾の眩しさの中で、ゴシックだけが、どこか静かに、しかし確かな存在感を放っていた。この「異物感」こそが、当時の私を惹きつけた最大の理由だったのかもしれない。
■第三章:裏モノとしての化け方――静かな豹変
さて、このゴシックという台が裏モノとして化けたとき、その豹変ぶりもまた、この台らしい独特のものだったと記憶している。ノーマル仕様の抑制された緊張感とは裏腹に、裏モノ仕様になったゴシックは、内に秘めていた激しさを、静かに、しかし確実に解き放っていくような印象があった。派手なジングルで連チャンを煽り立てる、いわゆる分かりやすい裏モノとは一線を画し、ゴシックの裏モノは、あくまでその独特の荘厳な世界観を保ったまま、連チャンという現象を演出していた。この「静かなまま豹変する」という感覚は、他の裏モノ機種にはあまり見られない、この台ならではの味わいだったと思う。もっとも、通常時が静かであるがゆえに、派手に噴き上がる台であれば、遠目からでも「これは何かある」と分かる。ゴシックの場合、その独特の重厚さゆえに、通常時の挙動そのものが、常にどこか含みを持たせたような空気を纏っていた。このメリハリが効いた挙動もまた、この台の裏モノとしての、隠れた魅力の一つだったのかもしれない。実際、私がこの台の裏モノらしき挙動に初めて出会ったときも、最初は半信半疑だった。連チャンしているように見えても、それが本当に裏の改造によるものなのか、それとも単に設定が良いだけなのか、しばらくの間、判断がつかなかったことを覚えている。他の裏モノ機種であれば、明らかに異常な当たり方をすることで、すぐに「これは裏だ」と確信できる。しかしゴシックの場合、そうした派手な兆候が乏しく、じわじわと、静かに出玉を伸ばしていくような、そんな挙動だった。この静けさに慣れるまで、少し時間がかかったことを、今でも覚えている。初当たり上乗せの様な分かりやすいシステムでは無く、確率が変動している状態モノだった肌感が確かにある。
■第四章:なぜマイナーな台にこそ、思い入れが残るのか
ここで、少し話を広げてみたい。ニューパルサーや大花火といったノーマル台が伝説になった機種の裏モノについては、当時を知る打ち手の多くが、それぞれの思い出を語ることができる。しかし、ゴシックのような、比較的マイナーな台については、語れる人間の数自体が、そもそも限られてくる。この「語れる人間の少なさ」というのが、実は私にとって、ゴシックという台を特別なものにしている理由の一つでもある。誰もが知っている名機の思い出を語ることには、共感を得やすいという安心感がある。しかし、ほとんど誰も知らないような台の思い出を語ることには、また別の種類の喜びがある。それは、自分だけが知っている秘密を、そっと誰かに打ち明けるような感覚だ。この文章を読んでくれている人の中に、もしゴシックという台の記憶を持つ人がいたなら、その人とは、きっと他の誰とも共有できないような、特別な連帯感を感じることができるのではないかと思う。パチスロという趣味において、こうしたマイナー機種への思い入れというのは、実は思っている以上に豊かな価値を持っているのではないだろうか。伝説機は、いわば「みんなの物語」だ。しかしマイナー機の記憶は、「自分だけの物語」に近い。誰にも共有されなくても、自分の中でだけは確かに鮮明に残り続けている記憶。ゴシックという台は、私にとって、まさにそういう存在なのだ。こうしたマイナー機の記憶というのは、時としてインターネット上でも見つけることが難しい。検索をかけても、まとまった情報が出てくることは稀で、断片的な書き込みや、古い雑誌のバックナンバーの中に、わずかに痕跡が残っている程度だ。この「情報の希少性」もまた、マイナー機種への思い入れを強くする一因なのだろう。誰でも簡単に検索して知ることのできる情報には、どこか味気なさがある。しかし、探しても探しても、なかなか出てこない情報というのは、それだけで価値を帯びてくる。ゴシックという台の記憶を、こうして文章として書き残しておくこと自体、この希少な情報を後世に少しでも伝えるための、ささやかな試みなのかもしれない。
■第五章:耽美と裏モノの、不思議な同居
ゴシックという台名から、少し離れた話をしてみたい。ゴシックという言葉自体は、本来、中世ヨーロッパの建築様式や、それに端を発した文学・美術の一潮流を指す言葉だ。荘厳な大聖堂、尖塔、ステンドグラスの光、そしてそこに漂う、どこか陰鬱でありながら美しい空気感。この台のネーミングは、間違いなく、そうした美術史的な文脈を意識してつけられたものだったのだろう。しかし『BEAST』絵柄から漂うB級ホラー感もまたダークなコミカルさを発していた。そして、このアンバランスに壮大な世界観を纏った台が、裏モノという、いわば「非合法の興奮装置」に姿を変えるという構図には、どこか奇妙な取り合わせの面白さがある。本来、静かに、荘厳に、緊張感を保ちながら遊技者と対話するはずだった台が、裏で密かに連チャンを量産する装置へと変貌する。この二重性――表向きの西洋文化感と、裏に隠された過剰な出玉性能――こそが、ゴシックという台の、他にはない魅力を形作っていたのだと、今になって思う。考えてみれば、裏モノというジャンル全体にも、こうした二重性は常に付きまとっていた。表向きは合法的なノーマル機として設置されながら、裏では違法な改造が施されている。この「表と裏」という構造そのものが、裏モノという文化の本質的な面白さであり、同時にその危うさでもあったのだろう。ゴシックという台名が持つ、あの重厚で少し不穏な響きは、期せずして、裏モノという存在そのものが持つ二重性を、象徴的に体現していたのかもしれない。この二重性という観点から見ると、ゴシックという台は、他の多くの裏モノ以上に、名前と実態が奇妙に一致していたと言えるのかもしれない。海の台が裏モノになっても、そこに「海」というテーマと「違法改造」という実態の間に、直接的な意味の繋がりはない。しかしゴシックの場合、その名が示す「表向きの荘厳さの裏に潜む、何か禍々しいもの」という語感そのものが、まさに裏モノという存在の本質と、不思議なほど重なり合っている。これは単なる偶然だったのかもしれないが、こうして振り返ってみると、なんとも出来すぎた符合のようにも思えてくるのだ。
■静かな台にこそ、静かな記憶が宿る
ゴシックという台を振り返るとき、私の中に残るのは、派手さや爆発力ではなく、むしろその抑制された美学と、静かな緊張感の記憶だ。ニューパルサーや大花火のような、誰もが知る機種とは違い、この台の記憶を共有できる相手は、決して多くない。しかし、だからこそ、この台の思い出は、私の中で、より個人的で、より大切なものとして残り続けている。パチスロという趣味は、突き詰めれば出玉の増減という数字の勝負に見えるかもしれない。しかし、こうして何十年も経ってから振り返ると、実際に心に残り続けているのは、派手に噴いた記憶だけではなく、こうした地味で、静かで、しかし確かな個性を持っていた台の記憶だったりする。ゴシックという台は、私にとって「みんなが知らない、自分だけの記憶」を教えてくれた台であり、同時に「派手さだけがパチスロの魅力ではない」ということを、静かに気づかせてくれた台でもあったのだ。この先も、私はまだまだ裏モノについて語っていきたいと思う。皆さんの台の思い出も、ぜひ聞かせてほしい。ちょっとした酒の肴になるはずだ。思えば、こうした一台一台にまつわる記憶の積み重ねこそが、私にとっての「パチスロ史」なのだと思う。公式に記録された機種のスペック表や導入データではなく、一人の打ち手が、それぞれの台とどう出会い、どう向き合い、どう別れたかという、極めて個人的な物語の集積。ゴシックという台の名前を聞いて、思い出を語れる人間は、そう多くはないだろう。しかし、だからこそ、こうして文章に残しておく価値があるのだと、私は信じている。いつかまた誰かが、この文章を読んで、自分自身の「静かな記憶」を思い出してくれたなら、これほど嬉しいことはない。
本稿は個人の体験と記憶に基づく考察コラムです。裏モノ(違法改造台)を推奨・助長するものではありません。
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パチスロの往年の名機を機種毎に、思い出と共に語り尽くすノスタルジックなコラムを全話お楽しみ頂けます。現在は裏モノ連チャン機編を随時執筆中で…
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