【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第五部ー183
《あらすじ》
架空の日本国を舞台にした現代ファンタジーです。
時はもうすぐ22世紀になろうとしている、災害大国である日本。
国のトップである首相は、神を殺し続け自分が神になり替わろうとした。
それをきっかけに国は暗闇に落ち、冥界からは死神と、人間でありながら死して冥王の部下として働く、特例と呼ばれる者達が降り立ち、闇から国を救うために動き出す。
特例・死神・妖怪・鬼が生きるために、国と戦う物語です。
これは以前に書いた古い作品で、他サイトにも投稿したものです。
noteでは少し改訂させていただきました。
新聞の連載をイメージして、一話を短くしています。
現在も続編を書き続けている一作なので、ゆるりと読んでいただけたら嬉しいです。
*この物語はフィクションです。実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
「桜湯」
「綺麗に塗れてますね。三鬼は色を使うのが上手だね」
向井が褒めると嬉しそうに顔を上げた。
「アロサウルスはね~しっぽがふといんだよ」
「三鬼もイベントで欲しいものありますか?
一個だけ選んでもいいですよ」
「ほんと? ボク、パズルがほしい」
「この前、悩んでいたからね」
「うん」
「あの作家さんは今回も参加されるか分かる? 」
「大丈夫。参加リストにあるから。でもね………ちょっと待ってて」
弥生はカウンターからタブレットを持ってくると、
「今回は他にも恐竜の作家さんが参加してるの。
三鬼が好きそうなものが」
そういうと弥生が画像を見せた。
「すごい………」
三鬼は目を輝かせて弥生を見た。
「パズルだけじゃなくて、時計とかぬいぐるみ、
飛び出す絵本も。楽しみだね」
「うん」
三鬼は夢中になって画面を見ていた。
「ねえ、弥生ちゃん、このお茶ってどうやって飲むか分かる?
花びらなんだけど」
トリアがキッチンで袋を開けて中身を出した。
「花びら? ハーブ? ローズヒップかな? 」
弥生が言うと、
「違う。桜かな? 」
トリアが袋を振った。
「桜? もしかして桜湯じゃない? 」
弥生はそういうとキッチンに歩いて行った。
「やっぱり。毘沙門天様は風流ですね」
弥生は笑うと、
「せっかくだから入れましょうか」
そういって湯呑を用意した。
そこへ安達と牧野が入ってきた。
「なになに? 美味しいもん? 」
「時間がかかったみたいですね。ご苦労様でした」
向井が労いの言葉をかけた。
「今回は人数多かったから」
安達はそういうとテーブルの上の和菓子に目が輝いた。
「これ、抹茶クリームの大福だ」
「えっ? そうなの? 」
牧野も笑顔になるとソファーに飛び乗った。
「お行儀の悪い」
冥王が注意するのも関係なく、菓子皿を取ると一つ乗せた。
「俺達も頂こうか」
そういうとチビに手を洗うよう言った。
チビがおもちゃを片付けているのを見て、
「おっ、進歩してるじゃん」
妖鬼が笑った。
「クリスマスが近いから今だけかもしれないですけどね」
向井も笑うと、片付けを終えたチビと手を洗いに行った。
「可愛い~いい匂い」
安達が運ばれた桜湯にほわんと顔が緩んだ。
「チビ達はジュース。大福はゆっくり食べてね」
トリアが大福と一緒にジュースを置いた。
「なにこれ。綺麗だけど、葉っぱの味? 」
「この奥深さが分からないとは、
牧野君にはまだこのお茶は早かったですね」
「俺好き。少し塩の味がして美味しい」
安達は飲みながら大福を頬張った。
「桜湯は結納とかお祝いの席で出てくるお茶ですから、
あまり飲む機会はないですよね。
でも春の足音を感じて、桜を楽しむお茶でもあるんですよ」
向井の説明にその場にいたものが一斉に振り向いた。
「えっ? なんですか? 」
「向井君は物知りだって話よ」
トリアが言った。
「別に物知りじゃないですよ。
俺、ホテルにいたことがあるから、
結納式されるお客様が多いんです」
「ああ~そういう事か」
牧野が大福を食べながら頷いた。
「でもね。桜湯って美容にもいいんですよ。
私ハーブティーが好きで、
お教室に行ってたことがあるんですけど。
そこでね。
桜の香りにはクマリンという成分があって、
それが美肌や頭痛にも効果があるって聞きました」
弥生の説明に、
「美肌? それは飲まなくてはいけませんね」
冥王が驚いた顔で桜湯を見た。
「冥王の肌なんて、誰も気にしないって」
トリアが馬鹿らしいという顔で言うと、
膨れる冥王に笑いが広がった。
次回より第六部になります。
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