②話 待ち合わせは11時、ショッピングモールの前で 【これは、風俗を通して自分を赦す物語】 #お仕事小説部門#創作大賞2025
前回のおはなし
①話 向いてない仕事と、優しさで首を絞める人達
#これは風俗を通して自分を赦す物語

私にしては珍しく、朝9時に電車に乗っていた。
牛乳なんか飲むんじゃなかった。お腹が痛い。
まだ何もしてないのに、もう帰りたい。面接辞めようかな。
『 待ち合わせは11時で良いですか?あの駅で1番大きなショッピングモールで待ってます 』
昨日かけた電話で、お店の人と待ち合わせをした。私は今、ニートを脱却して働こうとしている。それも“夜職”に就こうとしている。
もうそろそろ働いてもいいかな、と思ってた頃。
たまたまみていた求人サイトに風俗のお店があった。
「わー高時給だなー」
ぼんやりししながらサイトをクリックする。
【M性感はM男が来る。受け身の男が多いから女の子は触られない】
【特にお尻特化型のM性感は男のお尻さえいじってれば大丈夫。本番強要なんて絶対されない】
本当ですか?これ。
私普通にBL読むし、おしり弄るの、イけるかも。
「なんてね」
気がついたら勢いで電話をかけていた。普通の仕事につくまでの繋だから、大丈夫だよね。待ち合わせ場所をメモする手は確かに震えていたけど、わざと気が付かないフリをした。
「私、これから風俗の面接に行くんだ」
口には出さないけど心の中で呟いた。気軽に応募したのに、だんだん嫌な気配が現実味を帯びてくる。
気分転換のために携帯をいじった。
なんとなく、お店の口コミを開く。
抜いてもらったとかいけなかったとか、可愛かったとか写真とは違ったとか、下世話なことばかり書いてある。濃縮された欲望に、少し吐き気が込み上げた。
私は電車をおりると人混みの中に紛れ、ショッピングモールへ歩いた。
かき分けてもかき分けても人、人、人。この中に埋もれて不特定多数の誰かになれば、風俗の面接に行く罪悪感が薄らぐような気がした。
白線の上を踏み、信号を渡る。渡っている途中ですぐに信号がチカチカ点滅、赤信号に変わった。その様子がまるで、【危険、危険】と警告しているように感じた。

駅から徒歩五分のところにあるショッピングモールにつく。
やっぱりお腹痛い。バカだな、さっきの駅で、トイレに行けばよかった。
モールにはキョロキョロと辺りを見渡すおじさんがいた。
「え、あの人?」
今にも話しかけてきそうで、ずっとビクビクしてしまう。
ところが、待てど暮らせど誰にも声をかけられない。
不安げに辺りを見渡して、もう何度信号が変わっただろう。辺りの喧騒が私一人を置き去りにして、日常を歩んでいくみたいだ。
私は首からかけていたスマホを握った。
プルル、プルル、コール音が数回鳴る。目の前で電話を握ったおじさんと目が合った。
「あっ、」
と小さく声が出た。
「あ、着きました?そしたら今度はそこから右手に曲がってコンビニに行って下さい」
……。
目の前のおじさんとは違う口の動きをして、電話口の人は言った。
迎えにきてくれるんじゃ無いんだ……。
途端に肩の力が抜ける。同時に少しムカッとした。
迎えに来ないなら、その事を最初に教えてくれないかな。
案内されたのは、普通の3階建ての雑居ビルの前だった。
「意外と普通なんだ」
女の子の看板も無いし料金の垂れ幕もない、何の変哲もない場所だった。
「分かりずらくてすみません、道に迷いませんでした?」
階段から降りて来たのは、少し頭の薄い、小太りのおじさんだった。ユニクロで売ってるような水色のポロシャツを着た、どこか冴えない感じの。なんというか、全然怖くない。むしろちょっとガッカリだ。私は脱力して息を漏らした。少し背中が軋んで、ずっと体を縮めながら歩いていた事に気がつく。
「すみません、あの……」
私はお腹を擦り、少し照れながら言った。
「トイレ、貸してください……」
おじさんは優しく笑う。
この人が、私の夜の入り口なんだ。
そう思うと、不思議とお祭り前のドキドキに似た何かを覚えた。

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最後までお読み頂きありがとうございます(* .ˬ.)
よかったら、感じたことや思ったこと、どんな小さなことでもコメントで聞かせてくれたら嬉しいです(*ˊ˘ˋ*)毎回創作の励みになっております(⌯'ᵕ'⌯)´-
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次回、「面接の現場」で私が見たものとは?
になります。
木曜に更新予定です✨
前回の投稿はこちら👇
このお話の前日談になります。ご興味ありましたら是非!
次の話を更新しました!
よければぜひ覗いてください😊👇🏻
