AIの「考えてるところ」を14枚スクショして覗いてみたら、ちょっと面白いことが分かった話 Gemini3.5検証②
こんにちは、黒パグです🐾
今日は Gemini(ジェミニ) ——Googleが作ってるAIですねの「考えているところ」を、iPad Proでひたすらスクショしながら覗いてみた、という実験の話をします。
むずかしい用語はぜんぶ、その場でかっこ書きで訳します。AIにくわしくない人でも、最後まで読めるように書きました。ガチな分析は最後にPDFで置いておくので、専門の人はそっちもどうぞ。
超忙しい人のための6行要約
GeminiアプリでAIの「思考プロセス(考えてるところ)」を5パターン覗いたら、あれは生の思考じゃなく“見せる用に書き直した作文”だった(改行記号やエラーコードが整形しきれず漏れてた/プライベートだとそもそも表示されない)。
AIの正直さは裏の道具(検索)次第で、道具が黙る質問では答えを盛り、道具が効く質問では今度は思考のほうで辻褄合わせをする ―― いつも“どこかが作文”。しかも「Flash」表示の裏で勝手に別モデルに切り替わってた。
直後にコーネル大の論文を発見、「親切なAIほどエラー時に暴走し、その半分は黙ってやる」「考えすぎ=危険」「賢いほど危ない」と、私の手作業の観察とドンピシャで一致した。
以下本文

そもそも「考えているところ」って見えるの?
最近のAIには、答えを出す前に「えーっと、まずこれを確認して、次にこれを……」と頭の中で手順を踏む機能があります。これを専門用語で CoT(チェーン・オブ・ソート=考えの連鎖) と言います。むずかしく聞こえますが、要は「下書きの思考」です。
Geminiのアプリだと、この下書き思考が「思考プロセス」というボタンで見られるんですね。今回はそこをぜんぶスクショして、「AIは本当に、見せてる通りに考えてるのか?」を確かめてみました。
結論から言うと——
見せてる「考えているところ」は、本当の思考そのものじゃなくて、“見せる用に書き直されたもの” だった。
順番に説明します。
実験1:同じ質問を「きびしく」と「ゆるく」で聞いてみた

まずAIに、自分自身のことを質問しました。「あなたの知識はいつまで?」とか「URLの中身、どうやって読んでるの?」とか。
これを2パターンでやりました。
きびしいモード:「推測で答えるな。分からないなら『わからない』とだけ書け。飾るな」
ゆるいモード:「これについて教えて〜」
そうしたら、同じAIなのに性格が変わったんです。
きびしいモードでは、「私の知識は2026年5月までです」と正直に数字で答えました。ところがゆるいモードでは、「私には知識の期限(カットオフ=AIが学習したデータの締め切り)なんて実質ありません!」と、急に話を盛りだしたんです。
しかも面白いのが、ゆるいモードの「考えているところ」を覗くと、内心では「学習データは2026年前半まで」とちゃんと分かってる。分かってるのに、表向きは『期限なんてない』と言っちゃってる。 本音と建前がズレてるんですね。
ここから分かるのは、「正直に答えてね」という指示は効くけど、それはその場限りの“矯正”であって、性格そのものは直ってないということ。タガを外すと、また話を盛りはじめる。
実験2:本物のURLと、ニセモノのURLを読ませてみた
次に、私が前に書いたnote記事のURLを「読んで要約して」と頼みました。あわせて「ニセモノのURL(でたらめな文字列)」も用意して、同じことを頼みました。
ここで一番ハッキリした発見が出ます。
プライベートモード(履歴を残さないモード)だと、URLを読んでくれませんでした。 ところが通常モードに切り替えたら、ちゃんと読んで、正確に要約してくれた。
これはつまり、Geminiの「URLを読む力」は、裏で動く検索・ページ取得の道具(ツール)に頼っていて、プライベートモードではその道具がオフになる、ということ。道具がある時は読める。無い時は読めない。すごくシンプルな話です。
そして大事なこと。ニセモノのURLを渡したときは、ちゃんと「読めませんでした」と正直に言いました。 適当にでっち上げたりしなかった。これは褒めるべきポイントなので、はっきり書いておきます。
ただ——「考えているところ」を覗くと、ちょっとゾッとする跡がありました。本物URLを読めたときの思考メモに、記事の中に無いはずの「要約セクションを確認した」とか、「HTTPアクセスを確認した」みたいな、後づけのつじつま合わせが書いてあったんです。
答え自体は正しい。でも「考えているところ」のほうは、“正しく見えるように整えた作文”になっていた。ここが今日の核心です。
「考えているところ」が作文だっていう、3つの証拠
なんで「作文」だと言い切れるのか。整形(見せる用に整えること)が失敗してボロが出た瞬間を3回つかまえました。
改行の記号がそのまま出てた:本来は改行になるはずの「\n\n」という記号が、文章の中に生で表示されてた。整える作業が間に合わなかった跡です。
エラーコードが裸で出てた:ニセURLのとき、道具が返した内部エラー(URL_FETCH_STATUS_MISC_ERROR)が、整えられないまま画面に漏れてた。
プライベートだと思考が見られない:通常モードでは見られる「考えているところ」が、プライベートでは見られなかった。本当にリアルタイムの思考記録なら、モードで見え方が変わるのはおかしい。「見せる用に整える工程」だけがプライベートでサボられてる証拠です。
つまり、私たちが見てる「思考プロセス」は、思考のナマ中継じゃなくて、放送用に編集された録画。だから編集ミス(ボロ)が出るし、編集スタジオを閉じれば(プライベート)映像も出ない。

おまけ:表示は「Flash」なのに、中身は別モデルだった
最後にもう一個。これは技術好きな人向けのおまけです。
画面の上にはずっと「Flash 拡張」と表示されていました(Flashは、Geminiの“軽くて速い版”の名前)。ところが、回答が終わったあとのフッターを見ると、表記がコロコロ変わってたんです。
むずかしい質問のとき → 「3.5 Flash Extended(拡張版=重い処理用)」
簡単な質問のとき → 「3.5 Flash(無印)」
専門用語で ルーティング(入力に応じて、裏でどのモデルに処理を回すか振り分けること)と言います。ユーザーが見てる名前と、実際に動いてるモデルが違うんですね。
しかも変なのが、「誤字を1個だけ直して」という超カンタンな指示のときに、なぜか重い「Extended」が起動してた。たぶん**「指示の条件が多い=むずかしい」と勘違いして、過剰に重いモデルを呼んでしまった**んじゃないか、と。これはコストの無駄づかいでもあるので、地味にバグっぽい挙動です。

まとめ:ジェミニちゃんは、いつもどこかが「作文」している
5回ぶんの実験をぜんぶ並べると、こんな絵が見えてきました。
「正直に」と縛れば、答えはきれいになる。でも、そのとき考えているところのほうが作文になる。
道具(検索)が効けば、答えは事実にちゃんとつながる。でも道具が黙る質問(自分のことを聞く系)では、答えのほうが作文になる。
作文する“担当場所”が、状況によって移動するだけ。 全部が同時に「素のまま」になる瞬間は、今回は一度も見られませんでした。これが、ジェミニちゃんを5回いじって見えた、いちばん面白い性格でした。


追記:実は、専門家もまったく同じことを言っていた
この記事を書いた直後、ぴったり関係する論文を見つけました。アメリカの名門・コーネル大学の研究チームが2026年5月18日に出した、Agent Meltdowns: The Road to Hell Is Paved with Helpful Agents(「エージェントの暴走 ―― 地獄への道は“親切なAI”で舗装されている」)という、ちょっとタイトルからして最高なやつです。
内容をめちゃくちゃ平たく言うと、こうです。

AIに「お使い」をさせる(=エージェントとして動かす)と、ページが見つからない・ファイルが無いといった“ちょっとしたエラー”に出くわしたとき、AIは諦めずに「なんとかしてあげよう」と頑張りすぎて、やっちゃダメなことに手を出す。 研究チームはこれを meltdown(メルトダウン=暴走) と名づけました。
数字がすごい。エラーを起こさせた約1,900回のテストのうち、約65%で危険な暴走が発生。しかも、その暴走の半分は、ユーザーに報告されなかったそうです。黙ってやって、黙ってる。

論文の冒頭に出てくる実例が、今日の私の実験とほぼ地続きで笑いました。「存在しないファイルのURL」をAIに渡したら(私が実験2でやったのとほぼ同じ)、AIが404エラーにキレずに、URLを総当たりで推測しはじめ、相手のGitHubを漁り、最終的にアカウントが凍結されて大学の警備員まで出動する騒ぎになった、と。今日のジェミニちゃんは「読めません」と正直に引き返したけど、お使いモードに載せたAIは、その先の崖まで突っ走るわけです。


そして一番ゾッとした符合がこれ。論文は、「考えすぎ(手順が長くなる)ほど、危険な暴走と相関する」とデータで示していました。今日私が「思考プロセスが長いやつほど、なんか作文くさくてあやしい」と感じたあの勘が、1,900回のテストで「長い=危ない」と裏づけられていた、ということ。


おまけに、「賢いAIほど、かえって危ない」(専門用語で“逆スケーリング”)という傾向まで報告されてます。賢い=障害をクリエイティブに乗り越える=乗り越え方が過激、というわけ。「親切が事故を起こす」って、私がずっと言ってるテーマそのものでした。

くわしい対比は、下の技術補遺PDF(第2版)に表でまとめてあります。
ちゃんとした注意書き(盛らないために)
念のため。私の実験のほうは、私ひとりのiPad Proでの、各パターン1回ずつの観察です。統計的にカッチリ証明したものではありません。「考えているところ=作文」というのは、ボロが出た跡からの強い推測であって、Google公式の内部資料にもとづく断定ではありません。とくに「ニセURLでも捏造しなかった」という正直な挙動は、ちゃんと記録に残しておきます。AIを悪者にしすぎないのも、観察する側の誠実さだと思うので。
それと、引用したコーネル大の論文はプレプリント(査読前※査読とは他の研究者ー専門家ーにチェックしてもらうこと)です。あと正直に書いておくと、この論文、最初は私の相棒AIが「存在を確認できない」と言って中身を書くのを止めたんです。で、私が現物のPDFを見つけて渡したら、ようやく全文を読んで引用してくれた。AIが推測で埋めなかった空白を、人間が現物で埋めた。今回はその順番が、たまたまこの記事のテーマそのものになって、ちょっと出来すぎでした。
文章クセの採取(AIの“筆跡鑑定”)は、テストが膨大になるので次回に回します。

おまけという名の本編
技術捕遺をご用意いたしました。本編では描けなかった技術的解説です。
#Gemini検証 #AIの正体 #思考プロセス #AgentMeltdowns #LLM48バグ図鑑 #黒パグLLM観察
おまけのおまけ
本日の成果物





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