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経営をやめる気がないのに、サイドFIREを目指している話

50歳でサイドFIRE、と書くと、たいていの人は「45歳で経営者になって、5年後にはやめる気なんですね」と受け取ります。

違うのです。経営はやめません。

僕は2021年の春に独立して、いまスタッフ20人ほどの会社を経営しています。2026年5月時点で経営者歴は5年、年内に46歳になります。残り4年で50歳。けれど、4年後にこの会社を畳むつもりも、誰かに譲るつもりも、いまのところありません。

それなのに資産形成を続けているのは、引退するためではなく、引退しなくていい状態を作りたいからです。

やめたいわけではなく、やめなくていい状態がほしい

先日、ある外科医の方が書いた「自由とは解放?継続?」という記事を読みました。50代半ばで現役の臨床医を続けながら資産形成をされている方で、その目的は引退ではなく、「老後の不安をゼロにした状態で、好きな仕事を現役で続けるため」と書かれていました。

職業はまったく違います。僕は外科医でもなく、医療の現場にいたこともありません。それでも、読みながら、自分が言語化できていなかったことを別の職業の方から差し出された感覚がありました。

僕はもともと、人付き合いが得意なほうではありません。営業時代は無理に合わせていました。それでも経営者になってから、不思議なことに仕事自体は嫌いではないと気づきました。スタッフと話して、その日の現場で必要なことを一つずつ決めていく。20代のころの自分が想像していなかった面白さがあります。

だから、仕事をやめたいわけではないのです。

ただ、毎月の給料日が来るたびに、20人分の振込が無事に終わったかどうかをいまも確認します。経営者として当然のことで、それ自体に文句はありません。

それでも、と思うのです。経済的な余白がもう少しあれば、いまの判断はもう少し違って見えるのではないか、と。

サイドFIREを「半分やめる」と訳さない

サイドFIREは、日本語の記事ではときどき「半分引退」と訳されます。資産から生活費の一部を賄い、残りは好きな仕事で稼ぐ。だから半分はやめている、という整理です。

僕はこの訳し方が、自分の感覚とずれます。

僕がやりたいのは「半分やめる」ことではなく、「やめないでいられる土台を作る」ことです。資産が生活費の何割かを賄ってくれる状態になれば、会社の利益目標が、スタッフの給料を支払うための数字から、もう少し別のもの──たとえば、いまの仕事をもっと丁寧にやるための数字に変わります。

数字の意味が変わるのです。

会社員時代の月給と独立後の役員報酬は、額面が同じでも体感がまったく違います。額面ではなく、その数字が何のために必要かで、判断が変わるからです。サイドFIREも同じで、「資産が積み上がった後の月100万円」と「いまの月100万円」は、同じ100万円でも僕の中での意味が違うはずだと思っています。

やらない理由が、続けられる理由になる

5年前に独立したとき、僕は会社員時代に20年間積み立ててきた特定口座の投資信託をほぼ全額売却して、開業資金に充てました。20代半ばの2006年ごろから始めた積立で、当時はNISAもつみたてNISAもなく、銀行や証券会社の窓口で勧められた手数料の高い投信を真面目に買い続けていました。

その20年分が、起業の最初の半年でほぼ消えました。

今の保有資産は、2021年以降にゼロから積み直したものです。会社員時代と独立後では毎月の入金力がまったく違うので、積立のペース自体は当時より速くなっています。それでも、ここから残り4年で何を目指すかは、金額の絶対値ではなく、続けるために必要な比率に焦点を絞る。そう決めてからは、毎月の積立額に迷いがなくなりました。

これは行動経済学者のリチャード・セイラー教授(シカゴ大学)が言うメンタルアカウンティング、心の中の口座分けに近いのかもしれません。同じお金でも、何のための口座かでその扱い方が変わる。今の僕にとっての資産形成は「老後資金」の口座ではなく、「会社を続けるための土台」の口座です。

50歳で何が変わるか、何が変わらないか

4年後、サイドFIREの状態に届いたとして、何が変わるでしょうか。

朝4時に起きるのは変わらないと思います。前夜9時に寝て、夕食は2時間前までに済ませて、寝る前にストレッチをする。この生活は資産がいくらになっても変えるつもりはありません。起きてからコーヒーを淹れて、その日の体調次第でジムに行くか本を読むかを選ぶ。週3回のジムでは、筋トレと有酸素機器を一つ。これも変わりません。

仕事をする時間も、たぶん変わらない。

変わるのは、判断の重さの中身だと思っています。「今月の振込が無事に終わるか」という重さから、「今月の判断はスタッフにとってよかったか」という重さに、軸が一段ずれる。前者を背負わなくていい状態を作ることが、僕にとってのサイドFIREです。

そのために、いまできる最初の一歩は、今月の積立を止めないことだけです。


素敵な記事の紹介

liberal doctor 様の「自由とは解放?継続?」を読ませていただき、改めて大事なことに気づかされました。「資産を築いた上で、好きな仕事を続けられる状態」もまた自由である、という言葉が、ちょうど自分が言いたかったことそのもので、気づけば何度も読み返していました。


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