CHIGU HAGU
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「私なんか相手しててもしょうがないんだから。ホラホラ。じゃあまたね」
私は追い出すように肩をポンポンと叩いた。笑顔で見送ってあげよう。
彼は立ち上がって
「じゃあ」
とだけ言って出口に向かう。ふと立ち止まり振り返る。
「バイバイ」
手を振りながら見上げた彼の顔は、何か言いたげな顔をしている。たまに目を逸らしながら私の顔を見てる。そんな顔、しないで欲しい。
「どうしたの?」
腕を掴まれる。腕が背中に回されて、私は優しく引き寄せられる。少しよろけた私は、そのまま彼の胸に倒れ込み抱きしめられた。
なんで?
そのまましばらく身を任せる。まわされた両方の腕が強く私を包んでくる。
心地いい・・・けど。
切なくて、胸が詰まる。返したいけど返せない。
「ちょっと苦しいよ」
ポンポンと彼の背中をタップする。言葉が優しくなってしまった。
「ごめん」
「なに謝ってんの?今日は、ありがと」
彼は俯いたまま、まだ私の腕を優しく掴んで離さない。彼のスーツのラペルについたファンデーション。精一杯の笑顔でまたねと手を振る事しかできない。それが私のできる精一杯。
私のビンタが、彼のスイッチを入れてしまったのだろう。
私からは絶対に言わない。
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「私なんか相手しててもしょうがないんだから。ホラホラ。じゃあまたね」
残っていたアイスコーヒーの氷が溶けて麦茶の味になっている。気がつくと、ポンポンと肩を叩かれた。びっくりして顔を見上げると、肩を叩く笑顔の彼女と目があった。一瞬だけ鼓動が強くなる。今日も他愛のない会話で時間が過ぎていた。前はもっと話せたのに。
「じゃあ」
本当なら、もっと伝えたい事があるのに。
「しゃっ!」
と気合を入れて立ち上がり出口に向かう足は、途中で止まってしまう。
振り返ると。彼女もこちらを向きながら、
「バイバイ」
軽い笑顔で手を振ってる。伝えたいのに伝えられない。
何を?
「どうしたの?」
合図を待っていたかのように、僕の手は彼女を掴んで引き寄せた。強すぎない様に。気持ちとは裏腹に。彼女が少しよろけて倒れ込んできた。
小さいな。酒臭くない。微かにトリートメントの香りがする。
このまま放したくない。彼女に回した腕に力が入る。仕事終わりだったから匂い大丈夫か?今関係のない事。これ以上何もできない。
ずるいよな。
離したくないのに。
「ちょっと苦しいよ」
彼女はポンポンとタップしてきた。
「ごめん」
「何謝ってんの?今日は、ありがと」
まだ彼女の腕を離せない。けど、離すしかない。掴んだ腕を離す。
どこか寂しげなその笑顔。こんなに近くにいるのに、彼女は僕に大きく手を振っている。
「じゃーねー」
「またね」
彼女に受けたビンタの余熱は、あの夜からずっと消えない。
本編はこちら↓ CHIGU HAGUは本編KAGIのスピンオフ作品です
